小泉今日子に会えてよかった

2021.11.2.

制作会社で打ち合わせのあと池袋へ。

あんまり来ない街だが、立派な劇場が新しく出来ているのに驚く。

大学が江古田だったから、西武池袋線の乗り換えに必ず降りる街。ほぼ毎日のように文芸坐に通っていた。その文芸坐も今は違う場所にある。

さて「昇太さんとブルースカイさん。SP」2018年は明治座だった。今回はピカピカの東京建物Brillia HALL。

SPとあるのはSpecial Guestという意味で、小泉今日子さんが加わる。

幕が開き、お馴染みのビッグバンドジャズのスタンダードナンバー。

小泉今日子が登場。劇場内の温度が2℃ほど上がったような気がした。

うううぉぉぉ〜とキーの低い歓声。

バンドリーダー、ドラムスのスインギー奥田さんは数多くのテレビ番組、とりわけ歌番組の演奏をこなして来た。ブルースカイオーケストラにはドリフの「全員集合」の番組収録生演奏を担当していたメンバーもいると言う。

そのスインギーさんと小泉今日子さんと春風亭昇太師のトークタイム。

昇太師が、静岡の田舎の少年にとっては、アイドル小泉今日子は「実在の人物ではなかった」と。テレビの中だけに生息する生き物だった。功なり名を遂げてから会うことで実在の人物として確認出来たと。

一方、スインギーさんはバックバンドとして往時の小泉今日子の凄まじい売れっ子ぶりを間近で見ていたと言う。

私にとって、小泉今日子が実在の人物だと知ったのは割と早かった。

1984年のある日。江古田の学生は自分の作る自主映画の為に千駄ヶ谷のビクタースタジオでアン・ルイスさんに出演交渉をしていた。

出演をOKしてもらい、帰ろうとするとエレベーターから小泉今日子さんが降りて来たのだ。当時17、8歳の筈だ。アンさんと二言三言挨拶をかわすキョンキョン。顔がこの世の者とは思えないくらい小さかったのを記憶している。単なる目撃者の私だが、確かにそこに小泉今日子がいた。

「昇太さんとブルースカイさん。SP」休憩を挟んで後半は昭和のテレビ番組の主題曲メドレー。「笑点」はお約束。「コンバット」「11PM」「全員集合」‥‥。

日本テレビ系とTBS系の番組が多い。あれフジテレビは?「3時のあなた」とか今も続く「ミュージックフェア」とか。

一緒に行った、隣の席に座っている「小泉今日子と永瀬正敏の結婚会見の司会をした」人に「フジテレビないね」と訊くと「フジが陽の目を浴びたのは80年代以降だからね」と。なるほど「ひょうきん族」が「全員集合」の視聴率を抜いたのは昭和60年代か。

ラスト、小泉今日子の「あなたに会えてよかった」で締め括り。

過度な懐古趣味は謹んでいるつもりだが、年輪を重ねた淑やかな歌声は胸に沁みた。

帰路、昇太師にLINEでフジテレビの件を訊いてみる。するとすぐに、

「それは静岡では(自分の)子供の頃フジテレビの番組が映らなかったからですよ」とお返事が。

開局は1968年か。

映画もそうだが、テレビ番組も観た人の人生に深く刻まれる。それが若ければ若いほど。5年前に観た映画を忘れているのに、10代の頃観た映画はありありと思い出せる。そんなもん。



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