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みんなで広げる同級生の輪


私が卒業した高校の、今年の同窓会の幹事は私たちの学年だ。ここでいう同窓会とは、学校全体の大きな会のことで、“同窓会総会”の進行という大きな役目を担っている。
今年の春に、私たちの学年(中学校時代)だけの同窓会があって、その時にこの“同窓会総会”を運営する仲間(実行委員)を募集していると、アナウンスがあった。仕事は総会の進行だけでなく、9月の文化祭でバザーをしたり、総会の後にちょっとした出し物のようなことをするのが通例らしい。実行委員は定員があるわけじゃなく、多いのはいくらでも多くて良いので、皆さんの参加をお待ちしています、と実行委員の子が呼びかけた。

その後同級生のLINEグループが荒れた。

思うようにスタッフが集まらないことにイライラを募らせた実行委員の子が、

「他人事だと思わないでください」
「私たちの学年の真価が問われてるんです」

などと大袈裟な書き込みをするもんで、あまのじゃくな私なんかはちょっと引いてしまった。そんなの、やりたい人がやれば良いじゃん、時間的に無理な人もいるし、私みたいにただ出ていくのが億劫な人もいるし、やりたくても家の事情で難しい人もいるだろうし‥‥同級生だから手伝うのは当たり前、みたいに言われるのはなんだか嫌だった。


バザー当日だけのお手伝いもOK、準備も出来る時だけでOK、とりあえず実行委員の名簿を作成するにあたって何かしらの参加を表明した人たちが、それでも20人くらいは集まったようだ。私の家から車で30分くらいのところに住んでる子も実行委員に名を連ねていて、他の子から「みとんちゃんは遠いから無理だよね」と問われ、「うちだってそんなに変わらないよ、同んなじ、同んなじ」などと言ったと聞き、“車で30分”を軽く扱われた気がして心外だった。例えば学校に10時に集合だと、私は8時半に家を出なくちゃいけない。9時や9時半で間に合う人もいる中、私はそういう距離に住んでいるのだ。そこを慮って欲しかった。


‥なんてもっともらしく言ってるが、結局私はやりたくなかっただけだ。
いや、別にやっても良かった。最初はやろうかな、とも思った。でも、そこまでのなんだかんだを傍観していたらめんどくさくなった。女同士ってめんどくさい。もちろん私もめんどくさい。


そんなわけで、私は同窓会総会の話からは離れたところで静観を決め込んだ。そんな時総会の後に2次会をやるという案内が来た。もちろん私は行く気はない。実はその日は、町内会の役員の仕事が入っている。私は私で、私の仕事をしているのだ。誰にも文句は言わせないし、都合の良い言いわけを手に入れた私は余裕さえあった。


ごめん、その日は用事があって‥

嘘ではないから堂々と断れる。
ところがその2次会とやらは、午後から夜9時頃までやってると言う。私が町内会の仕事を終えてからでも充分間に合ってしまう。案の定、「2次会から来れば?」と誘われた。

う‥行けなくはないけど‥
嘘をつきたくないから、ついそんな返事をしてしまった。「みとんちゃんが来るなら、9時まででも待ってるよ」


なんでそんなこと言うの?嬉しいけど、ごめん、私、多分行かないよ。心の中ではそう言いながら、

うーん、ちょっと考えてみる、なんて返事してしまった。



私は皆で大勢でワイワイより、少人数でワチャワチャが好き。
でも嬉しい。実際に総会や2次会に何人くらいが参加するのかは知らないけれど、少なくともその中の数名は私の参加を望んでくれているという事実が嬉しい。

そんなこんなで、今までは中学校の同級生だけで作っていたグループLINEに高校の同級生(私は中高一貫校の出身だ)が参加し始めた。同窓会総会の準備の進行具合や、2次会へのお誘い、グループLINEで次から次へと情報が発信され始めたので、連絡先がわかる同級生がいたらどんどんグループに招待しようという流れが生まれた。そこから毎日のように

誰々さんが誰々さんを招待しました

という通知、からの

お久しぶりです。〇〇です。
よろしくお願いします。

という投稿が続く。名前を聞いて分かる人もいれば、全く分からない人もいる。何しろ私たちの学年は7クラス、350人もいたので同じクラスになったことがない人のことは知らなくても不思議ではない。同じクラスになっていても親しくしてなければ忘れてしまっているという場合もある。


この流れに私は完全に乗り遅れた。実行委員になっている友達が早い段階で招待してくれていたけど、私は何の投稿もしなかった。こんなふうに招待されて、よろしくお願いします、なんて書き込む必要があると思っていなかったから。私はただ、そこにいた。新しい人が増えるたびに何人かは“イイネ!”代わりの顔文字をスタンプしている。実にマメだ。感心する。


驚いたのは、同級生同士が結構つながっているということ。友達の友達は皆友達、とはよく言ったもんで、同級生のLINEの輪はどんどん広がっている。現在メンバーは90名を越えた。


私たちが学生の頃はまだ携帯電話なんてなくて、連絡をとる方法は家の電話か手紙くらいで、就職したり結婚したりでそれもだんだんとなくなって、しまいには連絡先がわからなくなってしまったということが私の場合には少なくない。だから同級生たちが今もまだ友達付き合いをしていて、連絡先も明らかで、LINEにバンバン招待しているという事実に感心する。私が連絡先を知っている同級生は何人いるだろうか。それを考えるとますます感心してしまう。


何年も“連絡先不明”になっていた人が今回誰かと繋がっていて連絡が取れるようになった。そんな話を聞くと、同窓会の幹事というきっかけがあったことを素直に喜べる。卒業して何十年も経って尚、友達の絆、同級生という関係性は健在だ。スマホが普及して良かったよ、ホント、マジで。



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