ワークフローシステムの導入メリット
BTI部のマスダです。
今回、初投稿となりますので、私が投稿する内容の特徴について先に紹介しておきます。
まず、私自身のキャリアスタートはシステムエンジニアではなく、お客様と直に接する営業部門です。営業事務をやっていた頃、日々さまざまなことが起こり退屈しない毎日でしたが、基本的にやっていることはルーティンワークでした。そうなると、若い遊び盛りということもあり、人生目標(大袈裟)が「いかに早く帰るか」になり、お客様からはあまり見えない部分の間接業務を徹底的に部分最適化していったことが今の自分のシステム観の原点になっているかな、と思っています。ちなみに部分最適化の結果、平均20時台退社が18時退社になったので、週5で飲みに行っていたのも私生活上の原点となりましたが。
おっさん一歩手前(当社基準)の段階で情報システム部に転属して後、予算と効果、全体最適、運用定着、情報資産の継承問題など色々と考えることが増えました。しかし、現在でも業務システムについては「現場主導の改善」がだいたい正義であるという軸は変わらず、システム導入の価値基準には「自分が使いたいと思えるかどうか」「運用改善余地がユーザーサイドに残されているかどうか(自由度が高いか)」があったりします。
そんな感じで、私の投稿記事は「ゴリゴリの現場利用者」という素材に「情シスのおっさん」エッセンスを加えた価値基準をもとにした内容になります。最新の技術紹介やQiita的なものを期待している方のご期待には沿えないかと思いますがご容赦ください。
さて、今回はコロナ禍で注目も多いワークフローシステムについて書かせていただこうと思います。
そもそもワークフローシステムとはなんぞや?
ウィキペディア先生によると
となっています。
過不足ない素晴らしい定義ですが、実務上、ソフトウェアを分類していくといろいろなワークフローシステムや機能があり、かなり広義にとらえた定義になっているので、本稿文脈ではいわゆる「汎用申請系=会社独自の文化に合わせたワークフローをノーコードでシステム化するツール」をイメージして読んでもらえればと思います。
コロナ禍で増加するワークフローシステムニーズ、収束したら不要?
コロナ禍でニーズが増加しているワークフローシステムニーズ。
ワークフロー総研が実施した「テレワークとワークフローの導入実態調査」によりますと、東京都/調査対象企業におけるテレワーク導入企業でのワークフローシステム導入率は73.2%。時系列の内訳としては、新型コロナウイルス感染拡大前の導入は44.4%、拡大後の導入は39.8%で倍近く増えているようです。
第1回目の緊急事態宣言以降、弊社ではテレワークを推奨しています。10年程前に汎用ワークフローシステムを導入し、社内書類については決裁を電子化しているので、テレワーク中のいわゆる「ハンコ出社」の頻度は比較的低く、個人的には大変助かっています。(一方、社外向けの書類についての電子化は未だ課題として残っていますので、今後、電子契約化をはじめとした社外向けの課題に取り組む必要を感じています。)
「テレワークのために導入する」という目的で考えると、テレワーク不能の最大の要因が「そもそも業務形態に合わない」であるため、その効果は限定的と言えますがワークフローシステムの導入目的の大半は「回議・承認の効率化」なので本質的な価値は別のところにあると思います。
以下、「回議・承認の効率化」に資する要素・利点について弊社での導入時の実情等を交えて書かせていただきます。これからワークフローシステムの導入を検討されている方の一助となれば幸いです。
ワークフロー導入による期待できる効果
1つ目の利点は物理的な送付問題が解消できることです。
弊社には複数の事業所があり、ワークフローシステム導入前は紙で作成した各種申請書を決裁機関(本社)に物理的に送るという運用をしていました。送付コスト削減のため他の書類や荷物と合わせて送る、たまたま事業所に来ていた本社の部長・役員クラスを頻繁にパシるという経験は懐かしい思い出です。(弊社にはメールマンとなることに文句を言う人もあまりいなかったので成立していたシステムですね笑)
また、上席が不定となる複数の事業所を管轄する中間承認者がいるケースの場合、「事業所に立ち寄るまで待機」「決裁者のスケジュールを確認して立ち寄ると思われる事業所に送付」等のタイムロスが発生するためリードタイムが非常に長くなっていました。承認関与者が一番多い稟議書の場合、決裁タームが2週間~1ヵ月かかるのも当たり前でした。
複数の事業所がある場合、上記のような調整作業やタイムラグを解消するだけで必要性として十分になることも多いと思います。
2つ目の利点は申請ルートの事前定義による提出先の認知・把握が必要なくなることです。
大体の社内書類は「総務部長殿」など最終提出先が記載されていますが、中間承認者が書類上で明確であったりなかったりします。組織が複雑になると申請者が必要な承認先を飛ばしてしまい差し戻されるというタイムロスも発生していました。書類上で中間承認者を明確にしようとすると、押印欄の見出しを組織変更の都度修正する(フォーム上で役職名を修正する)という面倒な作業が発生します。申請ルートの事前合意結果がシステムに反映されていれば申請者や中間承認者は日常的な申請であまり意識する必要がなく、内容自体に問題がないかぎり申請はスムーズに処理されていきます。
3つ目の利点は処理状態の確認が容易であることです。
紙申請の場合、承認ステップが多いほど、「承認いただけましたでしょうか」という確認先が不明瞭で、また、どういうタイミングでどこまで承認が進んでいるかがわからないので、「さっき承認依頼が届いたばかりなのにさっそく催促ですか、そうですか」という承認者の機嫌を損ねる事態も発生したりします。
ワークフローシステムを導入すると、現在誰がボールを持っているのか、どこで止まっているのか、滞留・検討期間がどこでどのくらいあったのかなどの状態が共有されるため、確認のための心理的負担は低くなり、「書類の山に埋もれた結果、放置されて止まっていた」という事象も発生しづらくなります。
4つ目の利点は書類の整理/格納が自動化されることです。
紙で申請された書類の場合、最終的に決裁機関が決裁完了連絡を入れた後、書類ごとにファイリングする必要があります。
ワークフローシステムを導入した場合、書類ごとにデータが分類・蓄積されていくためフォルダリングの必要もなく、また、副次的な効果として検索性が向上します。
類似案件や関連案件の稟議の際などに、過去に提出した書類をすぐに参照できるため作成自体を効率化できます。
5つ目の利点は(個人差※があると思いますが)印影問題の解消です。
社内申請系のワークフローにおいては、申請承認状態が可視化されているためテレワークのために導入する印影が不要です。
弊社の場合、10年程前のワークフローシステム導入時、紙申請書からの初のシステム化ということで、承認者視点で考えたときに、承認ルートの確認を別画面で開かせるよりも書類の中に印影があると状態把握がスムーズなので、申請フォーム上に簡易な印影イメージを織り込んでいます。
会社によっては「上長にお辞儀しているように見せるため印影を左斜めに傾ける」という文化があったりします。シャチハタさんの提供する電子印鑑ソリューションにも「斜め押印機能」が実装されているあたり根強いニーズがあるようです。
ちなみに当該文化がもともと弊社になかった(はず)なので、電子申請フォームの印影はまっすぐですが、個人的には「粋」とか「雅さ」を感じたりします。
※私の場合「押印×」という特殊スキルを持っていたので、押している最中に「グリっ」とひねりが入ったり、濃淡がすごかったり、朱肉の液だれでややホラーな感じになったり。結果、「印影が不明瞭」とのことで書類差し戻しになった経験は数知れず。実際は大半の書類はシャチハタでも問題なく受理されていたのですが、高校の卒業記念でもらった朱肉を使うタイプの三文判を初回に使用したため、「一貫性を保たねばならぬ」という謎の義務感により発生した悲劇でした。。。
おわりに
1ライセンス=1コイン程度で導入できるクラウドサービスもだいぶ増えてきて、小規模での導入障壁も昔と比べてだいぶ下がっています。
記載させていただいた導入メリットに琴線に触れる部分がありましたら試験導入をお勧めします。
今回、導入前実態を余談多めで具体的に書きましたが、次回は、ワークフローシステムの類型、情報システム管理者視点での弊社なりの導入ポイントなどを紹介できればと思います。
●次回の記事