”デザイナーたち”から学ぶメーカーのこれからについて
[ Vol.010 ](9992文字)
最近、”デザイナーたち”がメーカーになってきている
最近、ここ10年くらいで”デザイナーたち”がメーカーになってきていることが多いとぼくは感じています。
正直それはまだ今までのメーカーを脅かすほどの生産量は備えていないことが多いのでローカルでのんびりメーカーをしていたりスーパー相手の商売をしているとこの状況に気が付きにくいのだろうけどこの流れは実は深刻だと思っていて、古いやり方を続けているメーカーには状況によっては将来的に存続の危機になることもあるのではないかと感じています。
デザインが大切だという認識はなんとなくみんな持っている。
メーカーへの転身だけでなく、現在世界を賑わすいろいろなウェブサービスの創業者が元デザイナーだというサービスは挙げれば枚挙に暇がないです。
Airbnb、Pinterest、Slack、Tumblr、YouTube、、、驚くことに全て創業者がデザイナー出身。その他の有名サービスにおいてもデザインをないがしろにしてる会社はないし、そういうサービスはすぐに廃れてしまいます。
ものすごく速いスピードで進んでいるWebサービス業界はある意味でリアルな消費社会の縮図のようなものであり、ぼくらのような製造業やローカルのゆっくりとした世界においてもそういう流れになっていくのだということは意識しないといけないです。そして最近のそういう流れからどんなメーカーでもなんとなくデザインの大切さという認識は持ってきているのではないかとは思います。
メーカーとデザイナーの関係
ただ、メーカーがBtoB(業務用)からBtoC(個人向け)へバランスを変えていく流れの中で、なんとなくデザインが大事なんじゃないかというくらいの認識でパッケージをデザイナーに頼んでも上手くいかないケースは正直言って多いです。
たとえ良いデザインの商品になったとしてもメーカーがそのデザイナーが考える意識改革についていけてないと「作らされている感」が消費者の方に伝わってしまって売れないだろうし、全国のスーパーやコンビニなどでの既存販路を持っていない限り認知されて話題になって売れるまでにはある程度時間がかかるので、結果が出る前にメーカーが諦めてしまっているパターンもあります。
あとは補助金が出るからやってみよう(つまり補助金が出ないならやらない)というところは、最初から連続的にデザインに資金を投入するつもりはないという場合も多いみたいですね。
そうなった場合メーカーは負の遺産(?)を抱えてしまう一方、大多数のデザイナーの人たちはそういう一度きりの仕事をしっかりとカッコ良くこなして自分のホームページに制作事例として紹介して終わり、はい次。となります。
ひとつのパッケージデザインを作るにあたってその業界の市場や歴史のことを調べ尽くして真剣に取り組んだデザイナーの人たちであればおそらく、「予算があったらもっとこうしてあげたいんだけど、こっちも慈善事業じゃないからなぁ。」と心残りに思っているのではないでしょうか?
そのように、メーカーとデザイナーの関係性の問題点としてはどちらかというとメーカー側の方が意識が低いことが多いようです。それは当然といえば当然、これまでずっと「作ること」だけが仕事だったんだから。
そういうメーカーの意識改革からデザインしていくのが本当の優秀なデザイナーだと個人的には思いますが、低予算ではなかなかそういうデザイナーには巡り会えないのが実情です。
”デザイナーたち” の定義について
話の途中ですが今回の記事でいう”デザイナーたち”の定義について。
デザイナーって、大昔は「絵が得意な人」がなっていたんだろうけど、DTP環境・分業環境が整ってきた最近では「配置や整理整頓が得意な人」「プロデュース能力がある人」「俯瞰して見れる人」「Macを使っている人(笑)」がなっていると感じています。
今回の記事でいう”デザイナーたち”とはデザイナーという職種の人だけを指すのではなく、そいういう性質を持っている人たちのことを指し、象徴としてデザイナーと書いているだけなので実際にメーカーに転身する人たちの職業は、建築家やプログラマー、作家、バイヤー、ライターなど様々であることも多いです。
話を戻します。
”デザイナーたち”がしびれを切らしてきた。
そういう”デザイナーたち”からすると、零細メーカーの商品や売り方について「もっとこうすればいいのに」と思うことがたくさんあるようで、最近しびれを切らしたその人たちがメーカーにデザインを提供するのではなくて自らモノを作ってメーカーに転身したり、副業としてモノを作り始めるケースが多いようです。
実際の話、最近素敵な商品を作っているメーカーの紹介文を読むと、肩書きには”元デザイナー””元建築士”であったり、”デザイン事務所を兼務しながら、、、、”などとよく書かれています。また、展示会などで素敵な商品を出展されている人と話してみると、
「僕、元々デザイン事務所に勤めていたんですけど、、、」
みたいな話を本当によく聞きくし、そのたびに「またか。」と思ってしまいます。
あの人たちは俯瞰してものを見るのが得意な人たちなので、ゼロからモノを作り始めると市場にぴったりとマッチした商品づくりを行い、SNSなどでうまく消費者の心を掴み、あっという間に認知され、評価されます。
そして本来はデザイナーが新規でメーカーになろうとすると「作ること」がネックになるはずなんだけど、情報化が発達した今「作ること」に関してもいわゆる「秘伝」というのはあまり存在しないし、小ロットの原料調達も可能になり、生産設備技術もかなり発達してきているので資金さえあれば今まで全国各地のメーカーが作ってこれたようなレベルのものは作れてしまいます。そしてその資金集めとかもきっとクラウドファウンディングとかでカッコ良く集めちゃうんです。
悔しいけど、真っ当でスマートな、文句の言いようがない商売をしています。
これらの流れは今のインターネット時代ならではの変化であって、これからさらに加速するのではないかと想像しています。
デザイナーはメーカーの味方だとは限らない
メーカーの皆さん、なんか悔しくないですか?
こっちは何年も前から、それこそ何代も前から地道に頑張ってきたのに、後から始めたデザイナー出身の人たちがメーカーになってあっという間に売上やブランド力で追い越されてしまう。。。
そう、デザイナーはメーカーの味方だとは限らないのです。
だけど、逆に考えてみると”デザイナーたち”がメーカーになってやっていることをしっかり分析してみると今の状況を打破できるきっかけになるかもしれないと思いませんか?
ぼくらのやり方と何が違うのでしょうか?
ぼくはそういう部分が以前から気になっていて、意識的にそういうメーカーやサービスの会社を見てきたり分析をしてきたので、これまでに感じたことを自分なりに少しまとめてみようと思います。
ということで、次からはデザイナーたちがどうやってうまくメーカーに転身していっているのかを分析してみたいと思います。
まずはあの人たちの特徴を検証してみよう
あの人たちの特徴を大きくまとめると、基本的には自身の感度の高い消費者目線で自分が欲しいものを作っているということと、業界の常識にとらわれずに俯瞰して必要な事をシンプルに行なっているということがあります。
もう少し具体的に掘り下げてみると、
1.業界の歴史、市場、同業者などの分析が出来ている。
2.平気で製造委託する。
3.トータルデザインが良い。
4.魅せ方・共感のさせ方がうまい。(SNSなど)
5.素敵な仲間たちと一緒に作っている。
ということが挙げられます。
それぞれについてぼくなりの考察を、一部個人的に面識のある会社の例を交えてしてみたいと思います。
1.業界の歴史、市場、同業者などの分析が出来ている。
デザイナーの人たちはパッケージデザインを依頼されると、先ずはその商品の背景や歴史を徹底的に調べます。ぼくらメーカーは案外知らなかったようなことまで深く。そして市場や同業者の分析までしてからようやくデザインに取り掛かります。その分析はとても客観的で、その商品業界の人からすると非常識に思えることもしばしば。
時間の配分でいうと、多分デザインしている時間と調べ物をしてる時間は同じくらいか、後者の方が多いくらいです。
筆を持つ前にもう勝負は決まっているといった感じです。
当然何も調べずに雰囲気だけのやっつけ仕事をするデザイナーもたくさんいるんだけどここでは論外。そういう人はメーカーに転身しようなんて思いつきもしないので。
つまり、”デザイナーたち”の日々の仕事のほとんどが「観察」であって、これまで関わってきた仕事のたびに毎回高いレベルで観察をしてきているので視野が広く物事を俯瞰してみることに慣れています。
一方、ぼくらメーカーは数少ない商品を作り続けているので、当然誰よりも深く掘り下げるんだけどそれは「観察」ではなくてメーカー目線の「研究」になってしまっています。
研究にのめり込んで何のための研究なのか分からなくなっている状況に陥りがちです。
2.平気で製造委託する。
”デザイナーたち”は「つくること」よりも「良いものが出来ること」に重点を置いています。ここでいう「良いもの」というのはメーカーが考える「良い中身」のことではなくて、味やデザイン、ストーリー性などトータルで良いもの。そのために自分たちが現時点で出来ないことであれば平気で製造委託をします。
誤解を招くいいかたかもしれないけど、そもそも消費者からすると「良いもの」が欲しいのであって、誰が作ったかというのはメーカー側が期待しているほど大事なことではなかったりします。
そして最初は製造委託をしながらだけど、需要が高まり資金が貯まったら工場を作って自分たちで最初から最後まで作るという青写真を描いています。その時にはどこの従来メーカーよりも良い商品ができるように考え抜かれた効率的なものを。
Cace.1 | Ohmine 大嶺酒造
同郷山口県に銘酒「Ohmine」を作っている大嶺酒造という酒蔵があります。代表の秋山君は20代をニューヨークのデザイン事務所で働きながら過ごし、2009年に山口県に戻って2010年にそれまで50年以上閉鎖されていた酒蔵を復活させました。
廃業していた酒蔵を復活させるということは、当然ながら一番最初は工場も商品がなく自社製造ができなかったので、当初は地元の他の酒蔵からオリジナルオーダーでの桶買い(委託製造)をしながら海外への販路を開拓し、2018年に立派な新しい酒蔵を建てました。
おそらく、8年前に起業していた時に思い描いていたであろうストーリーを淡々と実現させていったのでしょう。
迷いがない。
ぼくの彼に対する印象です。(実際は迷いまくっているのかもしれないけど笑)
同じ県内にこんなアグレッシブでクリエイティブなメーカーがあるということに影響を受けてるし嬉しいですね。
当初、デザイン先行の彼のやり方に対して白い目で見ていた同業者の人たちがいたのを知ってるけど、たった8年であんなに本格的な工場を建ててブランド力はもちろん、リアルなメーカーとしての生産量も追い越されてしまって何も言えなくなってしまった会社もあるんじゃないのかな?
もちろん、大嶺酒造はまだまだこれから飛躍するはずです。
3.トータルデザインが良い。
トータルデザインが良いのは彼らの本業なので当然といえば当然ですが、なぜそれが簡単にできるのかというとゼロから構築しているから。
昔からのメーカーは今までの商品があるので、トータルデザインを良くするのはデザイナーにとっても恐らく至難の技です。もちろん、今までの商品があるからこそ今があるのであって、今までの商品が悪いわけではないし、ファンがいる以上軽視すべきではないとは思いますが、メーカーにはこれまでのブランドイメージというのがあるのでゼロから商品構築が出来ないという不自由さは明らかにあります。
では新ブランドを立ち上げて今までの商品とで2ブランド化をすればいいと思いがちですが、そのために敢えてブランドを意識した商品(例えば反対の性質の商品)を作らないといけなかったり、そもそも1つのブランドでうまくいかなかったのに2つのブランドを管理するのは容易ではないでしょう。
その点、”デザイナーたち”は市場をよく観察した上で、今までのメーカーの問題点や異業種の成功事例などをトータルで考えてゼロから構築してきます。
Cace.2 | 東京茶寮
東京茶寮さんはデザイン会社「LUCY ALTER DESIGN(ルーシーオルターデザイン)」さんが経営する日本茶専門店です。
当然ながらトータルデザインが考え抜かれていて、パッケージデザインはもとより店舗デザイン、茶器などの道具、ウェブサイト、パンフレット、イベントの世界観、全てにおいて統一感があって隙がないです。
デザイン技術力はもちろんだけど、ゼロから作ったからこそできたことなのだと思います。
ディレクターの谷本さん、デザイン会社だけどIT業界出身だけあってとにかくスピード感がすごいし、当然のように先ほども挙げた「観察力」も素晴らしい。話をしてみるとシングルオリジンの日本茶に対してのこだわりや可能性、海外への展開など、何年この業界にいたんだと思わせるような深い考察ばかり。なのにまだ東京茶寮さんは2年目だとか。これからどうなっちゃうんだろう?笑
「いまはどんどん中間業者が排除されて製造コストが下がり、ものづくりやメーカーのハードルが下がっています。弊社は受託を受けるのではなく、需要を逆算して企画デザイン・製造・流通・マーケティング・販売までを行うのが強み。2人だけの会社なので、意思決定も早いですね」(谷本さん)。
まさしく!
強くてニューゲーム
ぼくはゲームをしないので詳しくはないけど、一部のロールプレイングゲームでは一度クリアしてからそのクリアした時の強いままの状態でもう一度最初からゲームができるという強くてニューゲームっていう言葉があるそうです。
このシステムを用いると、プレイヤーキャラクターは序盤から無敵といえるだけの強さを持った状態で始まるため、戦闘が非常に簡単になり、初回のプレイでは「ボスが強い」などの理由でクリアできなかったイベントが容易にクリアできるなど、ゲームバランスを損ねる恐れはあるものの、ゲーム全体の難易度を引き下げ、より容易にシナリオを味わうことができる。
Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/強くてニューゲーム
”デザイナーたち”がメーカーに転身してブランド力を構築していく様子はまさしく強くてニューゲーム状態。
ブランディングやトータルデザインについては完全にやるべきことが見えていて、道筋も見えている上に技術もある。その上これまでのしがらみがなくゼロからのスタートをしている。
そりゃ勝てないよなぁ。
4.魅せ方・共感のさせ方がうまい。(SNSなど)
これもメーカーには難しい仕事です。既存メーカーはほとんどが跡継ぎだと思います。自分で起業してメーカーになったという人は少ないでしょう。
つまり、ほとばしる熱い想いのもとで作り始めたのではなく、「親がやっていたから継いだ。」という状況が多いと思います。もちろんぼくもそうです。
残念ながらそういう人には人を共感させるようなストーリーは正直いってあまりありません。
Cace.3 | HAPPY NUTS DAYS
千葉県でピーナッツバターを販売しているHAPPY NUTS DAYSという会社があります。
ちょと前の記事ですが、ぼくはこの記事を読んでこの会社がすごく気になって、まさに共感してぜひ中野君に会ってみたいなと思っていました。
その後、機会があって何度かお会いして話を聞いてみたんだけど、なるほど魅力的な人だし勉強熱心。自分で始めたビジネスだから情熱があるし、何よりも未来への解像度が高くて絵空事ではないのがよく分かります。
インスタも素敵だし、当然ホームページもデザイン性が優れてます。
楽しいことをしたいだけだった千葉のスケボー仲間が成長して使命感を持ち地域貢献をしたい、文化を良くしたいといったストーリーが心を打ち応援したくなるんですよねー。
彼は確か広告代理店出身だったと思うけど、記事によると多摩美術大学出身。
やはりね。
5.素敵な仲間たちと一緒に作っている。
メーカーは一人では出来ないのでどうしても多くの人と一緒に作り上げていかないといけないんだけど、彼らは共感のさせ方がうまいので、自然と仲間(同志)が多くなっている気がします。
例で出した大嶺酒造さんも東京茶寮さんもHAPPYNUTSDAYSさんもみんな素敵な仲間と同じ方向を向いて一緒に作っているのがよく分かるし、良質な意見の飛び交うクリエイティブな職場環境が想像できます。
素直にデザイナーたちのやり方を参考にしよう。
デザイナーがメーカーに・・・と聞けば、ぼくら昔ながらのメーカー目線でいえば
「あいつらはデザインばっかりカッコつけて何にも分かっちゃいない。どうせすぐ飽きちゃうんだろう?」
と言って終わりたいところなんだけど、あの人たちめちゃくちゃ分かってるし、数十年スパンで考えてるし、熱いし、みんな憎めないいい人ばかり。
こうなったら文句を言わず彼らの方法を素直に認めてやり方を取り入れるべきではないでしょうか?その上でぼくら従来のメーカーがやれることは何なんだろう?
そもそもの本来のメーカーの勝ち方とは?
下町ロケットの佃製作所のような誰にも負けない圧倒的な技術力があれば問題ないしそれが本来のメーカーの勝ち方なのですが、それがしっかり出来ていれば苦労はしていないです。
佃製作所だって、それが出来ているからこそ下町と言いながら年商100億、経常利益10億もあるらしいし、いわゆる零細企業ではないんです。(ドラマの話だけどw)
昔と違って今のSNS拡散時代、どれだけ隠そうとしても「飛び抜けた本当にいいもの」を作っていれば自然と必ず評価されてしまいます。山奥でひっそり作っていようとも、離島で作っていようとも。
良いものを作っているのに売れないのではなく、良いものじゃないから売れないんです。厳しい言い方だけどある程度時間をかけても売れていない時点で「本当にいいもの」ではないのだとメーカーとしては認めないといけません。
つまり、メーカーとして最終的に目指すべきはやはり環境に左右されない圧倒的なモノづくりだと思うのです。
「モノ言わぬモノに モノ言わす モノづくり」
これは茅乃舎などで知られる久原本家さんの企業理念です。素晴らしすぎてぐうの音も出ない。メーカーの最終目標がここに書かれています。ものづくりに携わる方はぜひ見てもらいたい。
ただ、それは長い道のりであって、でも日々は進むのであって。。。
なので、ぼくらメーカーがやっていくべきことは、「今ある商品をデザインの力で少しでも良くする」ことと「メーカーとしての底力を上げていく」ことをしながら日々を乗り越え、最終目標である「圧倒的なモノづくり」を目指していくことなのでしょう。
今ある商品をデザインの力で少しでもよくする
デザイナーたちの特徴として、「平気で委託製造する」と挙げましたが、逆にメーカーはデザインを委託することが必要です。
ここで断わっておきたいのが、デザイナーたちが「平気で製造委託する」というのはどこのメーカーでもいいから簡単に作ってもらっているわけじゃないということ。
製造委託するにあたって、自分たちの将来の会社像やこだわりを伝えた上で、気が合うか、志が高いか、生産量や予算が合うかなど徹底的に調べ尽くしてメーカーを選び、(他人から見ると)「平気で製造委託」しているのです。
なので、メーカー側も「平気でデザイン委託する」ことが必要とはいえ、彼らがやるのと同じくらいデザイナーを調べ尽くした上でデザイン委託しないといけません。それにも関わらず大抵の場合、よく分からないからといった理由で近場のデザイナーや小さな印刷会社のデザイン部門に丸投げにしてしまうんです。
その結果、一番最初にお話ししたような失敗が多く発生しているのではないでしょうか?
まずは経営者の意識改革が必要です。どれだけこだわった中身でも、まず手に取ってもらわないことには知ってもらうことが出来ません。数ある商品の中から選んでもらうためにも経営者がデザインに対しての認識力を深めてそこに対しての継続的な資金投入をすることが必要であり、方向性を示して会社全体で取り組むことで結果が出てくると思うのです。
最終的にはインハウスデザインを目指したい。
もう一つ大事なのは、デザイナーたちは最初はメーカーに製造委託しているんだけど、長期計画では自分たちで製造していくことを考えているということ。
そして彼らがそれに向けて虎視眈々とメーカーになるための勉強をしているように、メーカーも最初はデザイナーにデザイン委託をお願いしてもただ丸投げにするのではなくて、その仕事内容をよく観察しながら長期的に自分たちでデザインの勉強をして、将来的にはインハウスデザインを目指すべきだと思います。たとえ予算や技術的な問題でそれが無理でもその意気込みは必要です。
”強くてニューゲーム”でメーカーの底力を上げる。
ただ、デザインの力を借りても中身は変わりませんよね。やはりメーカーとしては「作ること」の底力を上げていくことが何よりも必要です。でも何年もメーカーとして頑張ってきたのに急に中身を良くするなんてできるのでしょうか?
そのためにはやはり目線を変える必要があります。
シンプルに商売を「作ること」と「売ること」に分けた場合、デザイナーたちは「売ること」について”強くてニューゲーム”をしていました。
では、メーカーとしてやるべきことのひとつは、「作ること」に対して”強くてニューゲーム”を適用するということだと思うのです。
先述したように、メーカーは跡継ぎが多くて実のところほとんどの人がニューゲームを経験していません。ニューゲーム、つまりこれまでメーカーとして何年も頑張ってきた技術力を生かして何か応用できる新分野の商品に挑戦してみてはどうでしょうか?
今までに誰も作っていないオリジナルな商品を目指して。
ニューゲームをしていくということは、量産ブランドが高品質ブランドを立ち上げるといった同一カテゴリ内の2ブランド化とは全く違います。
完全にゼロからなので自分の意思がないとスタートすら出来ないし、今まで与えられて途中から色々やってきた跡継ぎとしては新鮮なことだらけで、辛いことも楽しいこともたくさん出てくるはず。つまりストーリーも自然と生まれ共感も呼ぶのです。
そしてその新しい体験はメーカーとして有益なものとなり、従来商品に対しても新しい発見が生まれ、きっとものづくりの底力を上げてくれるはずです。
疲れたのでまとめます。
長い!もう1万字近くになってます。ここまで読んでいただきありがとうございます。読み返してみるとなんだか上から目線的な書き方になってますが、これは半分は自分に対しての忘備録的なところもありますのでご容赦ください。
今回、”デザイナーたち”がメーカーを目指して進出してきている成功方法をもとにメーカーが現状を打破するための方法論を検証してみました。
改めて考えてみてもメーカーの最終目標はやはり圧倒的なモノづくりであり、すべての物事はそこに向かっていくべきなのは間違いないです。
「ものを作って売る」というのは商売の根本であって、あの”デザイナーたち”も最終的にはその圧倒的なモノづくりをしてみたくなったからメーカーを目指しているのでしょう。
俯瞰していろんな業界をよく観察し長期に渡ってデザインにコストをかけることと、自分たちのこれまでの技術力を生かせるニューゲームを探して行動していくことが大切です。そうやって経営的にも技術的にも日々少しづつ成長しながら最終的には世の中や文化を変えるような圧倒的なモノづくりができるメーカーを目指していきましょう。
現在、メーカーとして次の一歩が踏み出せないような状況であれば、このようなデザイナーたちのやり方を参考にして新しい道を模索してみてはいかがでしょうか?
おわり
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