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僕の鞄の中から一枚の紙切れが出てきた。 それは映画のチケットの半券だった。 それを見て、僕は朋美の事を思い出す。
「ねえ、あなたはどんな女の子が好みなの? 私は女友達がいっぱいいるから、どんな女の子でもあなたにおすすめできるけど」 と彼女は僕に言った。
「あなたに知っておいて欲しいことはねえ、世の中はギブ&ギブっていうことなのよ。自分がしてもらいたいからって人にそうしてあげても必ずそうしてもらえるわけじゃあないっていうこと。だからこんなことしてもらっても嬉しくないし、私はあなたにそうしてあげるかなんて期待しないで欲しいのよ」 と彼女は言った。 「僕はそんなつもりじゃないよ」 と僕は答えた。
「私の時代が来たのよ」 と彼女は言った。 「私の時代?」
「イチローくんってさあ、長男でしょ?」 と伊知子は僕に訊ねた。 「そうだけど」 と僕は答えた 「あったりー」 と伊知子は叫んだ。
「私ね、結婚なんてしないのよ。子供も作らない。私は一生独身で、キャリアウーマンとして生きるの」 僕の会社の同期の美紀は、バリバリと仕事をして、恰好がいい。 僕はそんな男っぽい彼女が好きで、良く一緒に飲みに行っていた。
「ひとりぼっちのあいつ」は、ザ・ビートルズの「ラバーソウル」というアルバムに収められている。このアルバムには、村上春樹の小説のタイトルとなった「ノルウェーの森」も収められているが、同じジョンの歌う、同じような曲でも、僕は「ひとりぼっちのあいつ」が好きだ。 ノスタルジックで感傷的なこの歌は、僕の心を投影している。 これはジョンであり僕だ。
「君は神を信じる?」 と僕は彼女に訊ねた。 「信じない。だってそんなものいないから」 と彼女は答えた。
「どうしてあなたは私にやさしくしてくれるのですか?」 と彼女は僕に訊ねた。
彼女は食後のデザートを食べている。 僕はそれを見ている。 「何よ。そんなに見ないでよ。そんなに見るんだったら、あなたもデザートを頼めばよかったのに」 彼女は恥ずかしそうにそう言った。
「私の人間力を見てほしいのよ」 彼女は僕にそう言った。 「人間力?」
「私、ベリーダンスを始めたのよ」 と彼女は言った。 「ベリーダンスって何?」 「え? ベリーダンス知らないの? 「セクシー田中さん」見てないの?」
僕は彼女に渡すものがあって、彼女のアパートを訪れた。 僕がベルを鳴らすと、彼女が玄関に現れた。 僕は彼女に荷物を手渡した。