シェア
「これ、食べる?」 と彼女はバツが悪そうに僕にチョコレートの包を差し出した。
紺野民子はコンタミというあだ名で呼ばれている。 身なりが汚くて見苦しいし、髪はボサボサだし、臭いし、無愛想なものだから、汚染という英語であるコンタミネーションの略でコンタミと呼ばれているのだ。
僕の鞄の中から一枚の紙切れが出てきた。 それは映画のチケットの半券だった。 それを見て、僕は朋美の事を思い出す。
「栞が必要なんだよ」、という僕の言葉に彼女は顔を赤らめた。 彼女の名前が栞であるということを、僕はすっかり忘れていた。
「この小説、本当に君が書いたの?」 と担当編集者は彼女に言った。 「どうしてそう思うんですか?」 と井上奈々は答える。
「落書きされちゃってさあ、消すの手伝ってよ」 と僕は友人に頼まれた。 僕は案内された場所で、その落書きを見た。 あれ、これって。 「バンクシーじゃない?」
この記事はメンバーシップに加入すると読めます