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会社に入り込んできた虚言癖のある男性

ここ数週間、嘘について考えさせられています。人に心配させないための優しい些細な嘘もあれば、犯罪や賠償問題に発展する悪質な嘘までありますよね。
たった一つの事実をもとに、いくつかの嘘を織り交ぜて膨らましていくというケースも。
ということで、私がいた会社に入り込んできた、虚言癖のある男性Hさんの話を書いていこうと思います。

華やかな経歴と実績

Hさんは当時40代後半でした。常識的に考えれば、そろそろ転職が難しい年代です。転職できたとしても、前職より好条件を提示されるのは難しいでしょう。ところが、Hさんは1000万円近い年俸で契約したようです(本人談)。

なぜ、彼がその年俸で契約できたのか?それは、Hさんの経歴と実績でした。学歴は知りませんが、音響機器メーカーを中心に大手企業をいくつか経験し、その業界では興味を引くような実績をいくつも持っていたためです。

建築、音響、デザインなど幅広い分野に精通し、磁気カードにデザインを施す発案や海外の有名スポーツブランドのロゴデザインにも携わったといいます。
私が在籍していた会社は、音楽配信がメイン業務。飲食店や娯楽施設なども運営しています。自社で経営するだけではなく、顧客への販売も経営ノウハウ込みで行っていました。

つまり、Hさんの実績は十分うちの会社で役立つというわけです。しかも、彼は音響機器メーカーに在籍しているとき、うちの会社の音響システムの開発に携わった人物。当時の専務がHさんの経歴に興味を持ち、会社に入ってもらったというわけです。

バレていく実態

ところで、私はその会社では当時企画室にいました。直営店や顧客の店舗の内装プランニングや販促品の企画、手配、ロゴデザインなども携わっていて、Hさんともすぐ仕事をするようになりました。

しかし、次第に妙なことが起こり始めたのです。そして、社員の何名かが振り回され、困惑しました。それは、Hさんのこのような行動でした。

  • 「新しいプロジェクト」と称して複数の部署からメンバーを召集したが、彼の妄想だった

  • 新事業を立ち上げることが決まり、事務所を契約したが、その事実はなかった

  • 「俺が日本で最初に始めた」と吹聴していた事業に実際に関わっていた人が入社してきた。

初めは面白い人物でした。建物に合わせたユニークな音響機器を試作して実際に設置し、好評を得てもいます。ただ、何の話をしていても
「あれ、俺が作ったんだよ」
と、何にでも食いついてくる姿勢に胡散臭さは感じていましたが・・・。

そして、あるとき、突然Hさんから数名の社員が召集されました。技術部や営業部などの社員数名、そして私。なんでも、新しい娯楽施設を開発するのだそうです。自社ではなく、顧客から受けた仕事という説明でしたが、土地の面積など規模の大きさに驚きました。
(え?上層部の人間なしでできるの?)
というのが正直な感想でした。

Hさん主導のプロジェクトは何度か召集がかかり会議が開かれましたが、驚くことが発覚。会社がその事実を把握していなかったのです。どの部署だったか、部下が知らない会議に出ていることに気づき、そこで騒ぎになりました。実際、誰も顧客に会っていないし現地にも行っていないので、その仕事が本当だったかもわかりません。土地の図面しか見せられていないのですから。
事実だったとしても、会社を通さずに社名を使って請けるなど大問題です。立派な詐欺行為になります。

あるときは
「新しい事業部を作ることになった。それで、ビルのワンフロア借りたんだよ。内装も頼んである」
というHさん。ところが、いつまで経っても動き出す気配はありません。当時、私の部署も入っていたビルで、オーナーに聞いてみたところ契約の事実はなく、Hさんの虚言であることがわかりました。

社内では
「Hさんは怪しい人である」
という空気に変わっていきました。そして、あるとき転職してきた男性社員を些細なことで激怒させてしまいます。それは、Hさんが日本で最初に始めたというあるサービスの話題でした。

こともあろうに、転職してきた男性はそのサービスに関わっていた人物だったのです。Hさんの話に、すかさず反論する男性。
「何を言ってるんですか?あれを日本で始めたのは〇〇さんですよ!」

このときのHさんの反応は今でも記憶しています。てっきり言い合いになるかバツ悪そうにするのかと思っていましが、
「は〜〜〜〜?そういうことになってるんだあ。へ〜〜」
と、言い放っただけ。怒りでもない不思議そうな表情で、わかっているのかわかっていないのか、妙な対応でした。

私も、なんだったか一つだけ事実を示して指摘したことがありますが、やはりポカンとしていて、反応が奇妙だったのを覚えています。バレた、とかそういう感じではなく、とにかく気持ち悪い反応でした。

会社を去ったものの・・・

Hさんは、設計や音響の知識があったのは確かで、それらの経験を持っていたのも事実でしょう。ただ、接しているうち妄想や虚言が多いことに誰もが気づきました。私が実際に接して感じた限りでいえば、

「誰かが作って世界に発表したものでも、自分も同じことを考えていたら、それは自分が作ったものである」

と、Hさんの脳内では変換されていることでした。

ともかく、実際にHさんは開発者ではないわけで、これを他者に
「俺が作った」
と言えば単なる虚言でしかありません。
恐らく2〜3年の契約で来ていたのでしょうが、1年ほどで去っていきました。ただ、その後Hさんに会ったところ、会社から酷い仕打ちを受けて追い出されたということになっていました。実害がなかったために契約終了だけで片付きましたが、経歴詐称で訴えられてもおかしくない話です。

暫くは個人事務所を立ち上げて仕事をしていたHさん。最後に会った辺りの頃は浄水器の販売などもやっていて、なんともこじんまりとした暮らし向きになっていました。その暮らしになったのも、会社のせいにして。
そして、離婚。他の人に聞いた話では奥様は大学教授か何かで、生活を支えていたのはずっと奥様だったそうです。

離婚後は、10歳以上年下の名家の女性と知り合い(私も会っています)、その女性と結婚して婿養子として暮らしています。


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