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縁がなかった家

何年か前、ここに移住してまだそれほど経っていなかった頃、
「よかったら、借りませんか?」
と、一軒家を紹介してくださった人がいました。内覧はしていませんが、庭もそれなりにあって、外から見る限りは築浅で綺麗な家です。
恐らく、ここに来るタイミングで出た話なら、そちらに決めていたでしょう。

ただ、他県に住んでいる家主さんとの都合が合わなかったり、うちが引っ越せるタイミングではなかったりと、どうにも都合が合いません。そうこうしているうち、その話は立ち消えになりました。

ところで、その話をくださったのは、当時その家を借りていた人です。退出したいとのことで、次の住人を探してあげたいと考えたようなのですが、後で気になる話を耳にしました。

そこは、こちらに用事があって来た際の拠点として使っていたようですが、実は、やや気味が悪いのだそうです。具体的なことは聞いていません。ただ、そこに泊まるときは毎回眠れないといいます。
結局、その家は不動産会社を介して新しい住人が決まりましたが、退去が決まったとき、その人はホッとしていました。

本人に悪気はないのでしょうが、そういった家を紹介されていたとは「縁がなかった」意味がわかった瞬間でした。


と、一旦これで終わりにしましたが、もう一軒思い出したので書いておきます。
それはまだ一人暮らしだった頃。起業したばかりで、住居兼事務所にできる広い場所を探していたときに内覧した物件です。

そこは、ファミリータイプのマンションで、間取りはたしか2LDKか3LDKだったと思います。私はリビングも個室も広く取ってある家が好きで、そういう物件を探していると大概はファミリー向けでした。

さて、事前に約束した通り不動産会社の担当者と現地で落ち合った私は、軽く名刺交換をして物件の中へ。玄関を開けると中は広々としています。
が、いざ中へ入ると何か違和感があるんですね。天井が妙に低く感じるというか、圧迫感があるんです。そして、暗い。

いえ、実際の高さは2m30〜50cmほどはあります。多少内装の仕事をかじっていたので立った感じでわかるのですが、天井までの一般的な高さです。なのに、妙な圧迫感があるという不思議な部屋。
不動産会社の方が窓を開けてくださっていて外も晴れていたというのに、どういうわけか明るさを感じない室内。

1階の部屋で、リビング側には庭もあります。そこを見せてもらいながら、ふと視線を感じて外を見た私は驚きました。
そこには、マンション住人か近所の人と思われる数人の女性がかたまってこちらの様子をうかがっていたのです。興味津々な様子で、何かこそこそと話しながら。

(え?何?どうして見られてるの?)

ここは、直接自分で感じた違和感から契約はやめました。恐らく、あの物件は何かあったのではないかと思います。そこを訪れたのはその一回きりで、今はどこをどう行ったのかも覚えていません。



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