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Photo by
keitafukui
【落ち着かない部屋】 誰かに見られている
私の実家は、台所と居間を除いてほとんどの部屋が畳になっています。玄関を上がって左手は八畳の和室が二間続きになっていて、その仕切りは襖。部屋の外側には広縁が回してあり、襖と障子を開け放すとそれなりに広い空間になります。日本家屋にありがちな造りで、ちょうどトップ画像のような家です。
古い家ではなく大工をしている兄がリフォームしたのですが、少し広くなったせいなのか、改築してからは家の中がやや暗い印象になっています。そして、怖いと感じることも増えた気がします。
実家を出て一人暮らしを始めた年の夏でした。
母が寂しそうにしていたのもあり、夏休みに実家に泊まることにした私。自分が使っていた部屋ではなく、来客用の部屋に布団を敷いてくれました。先ほど書いた、玄関左手の和室です。
玄関から見て奥の、ちょうど画像のような部屋に一人で泊まったわけですが、私はほとんど眠れませんでした。
涼しいだろうと、欄間窓と障子を開けて寝たのはいいのですが、夜通し誰かに見られているような気配を感じるのです。
それは、あたかも何者かが、広縁をぐるぐるぐるぐる回っているような感じでした。うろうろしながら、中の様子をうかがっている感覚がずっとしていて、とても眠れたものではありません。
外が明るくなってきた頃に気配が消え、ようやく眠ることができました。そんなことを知らない母に朝ごはんだからと早々に起こされ、疲れただけで帰ってきた記憶があります。
以降、ほとんど実家には泊まらなくなりました。
ところで、父が亡くなってから、その部屋で寝るようになった母。そして、やはり
「怖い」
と漏らしていました。何かを見たわけではないようですが、何とも怖いのだそうです。母亡き今となっては、何がどう怖かったのか聞けないのが残念です。