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いろいろ失って受けた、思わぬ親切

訳あり物件に住んでいたときは、本当にいろいろなものを失いました。預貯金、仕事、買い集めてきた貴金属類、車、ブランド品、などなど。
現在の場所に移るときは、荷物が入らないために食器や家具、衣類も随分処分しています。でも、思い返してみるとお金に換えられない大切なものはしっかり残っています。

そして、それまで特に気にも留めなかった人の温かさにも気づけるようになりました。これも、お金では買うことができない大きな財産です。
今日は、思いがけず受けた、驚くような親切な話を紹介したいと思います。

まだあの家に住んでいる頃で、生活が落ち着いてきた頃です。
定期的に浅草に参拝に行くようになっていた私は、その日も朝から一人で浅草へ。いつものようにご飯を食べてあちこち散策し、お土産を買って帰ることにしました。

電車を降りて駅を出ると、ちょうど目の前に入ってきたのは自宅方面へ向かうバス。
(お!ラッキー)
とばかりに乗り込んだのはいいのですが、座ってから小銭がなかったことに気づきました。

一応財布を確認すると、2〜3枚の10円玉と1万円札だけ。当時、そのバスはSuicaが使えず、両替もたしか千円札のみでした。ところが、その千円札すらありません。

困った私は早めに確認しておこうと、運転手のもとへ。そして、
「あのう、1万円札は両替できませんよね?小銭がないまま乗ってしまって」
そう言いながら1万円札を一応出してみました。
すると、意外な回答が返ってきたのです。

「わかりました。希望の停留所でそのまま降りてください^^」

え??今、なんと??

きょとんとしていると、運転手はもう一度
「次に乗車したときでいいので、そのまま降りちゃってください^^」
と言うではありませんか!
「あの、連絡先とかは?」
「いや、大丈夫ですよ^^」
「はい・・・」

半信半疑のまま席に戻り、5分ほどで目的のバス停に到着。
降りるときにも確認しましたが、本当に連絡先も何も聞かれずそのまま快く降ろしてくれました。

申し訳ないのと有り難さもあり、次の日に早速バス会社まで運賃を支払いに行きました。お礼の菓子折も持って。
こういう親切は、中には悪用してそのまま払わない人もいると思います。身元もわからない客を信じるってなかなかできることではありません。
ああいう会社が伸びるのだろうなと感じた、心に浸みた親切でした。


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