ちょっとだけ怖い話 「深夜のバイク」
不審な音を聞くと、何の音か確認してみたいと思う人は多いのではないでしょうか。これは、前の記事を書いていて思い出した話です。会社にいたときの同僚Tさんが当時話してくれた体験です。
Tさんは、まだ社会人になったばかりの頃、友だち5〜6人で仲間の家によく集まっていました。みんなでお酒やおつまみを持ち寄り、たわいもないおしゃべりをしながらテレビを見たりゲームをしたりして遅くまで騒ぐ・・・。それが当時の息抜きで楽しい時間だったそうです。
集まるのは週末。ほぼ毎週のお決まりになっていて、集まる場所も同じ友達の家。その友達の家は郊外の通り沿いに建っていて、隣家とも離れています。騒いでも近所迷惑にならないのが理由でした。
毎回通過する一台のバイク
友達の家の前の道路は、夕方以降は車すら通りません。遅い時間に毎回バイクが一台、家の前を通過する程度。いつもほぼ同じ時間帯なので、恐らく仕事帰りの人なのでしょう。
バイクの音は、決まった時刻になると次第に近づいてきて、友達の家の前を通過し、スピードを緩めることなく遠のいていきます。
はじめは気にも止めなかったバイクの音ですが、あるとき、仲間の一人が妙なことを言い出しました。
「この先の道路、工事中で行き止まりだよな?あのバイク、どこ通って帰るんだ?」
道路は、友達の家の少し先まで拡張工事が進んでいましたが、その先はまだ未開発。ガードレールで塞がれていて、たしかに車両は通れません。ただ、二輪車なら通れそうな隙間は空いています。
「バイクだからガードレールの隙間から通れるんじゃね?」
「それでも、減速しないで通れるかな?あれ」
「そういえば、あのバイク全然減速しないで行ってるね」
「どうやって通ってるんだろうな」
興味が湧いたTさん達は、バイクがどうやって通るのか翌週確かめてみることに。
いつものメンバーが集まり、バイクが通過する時間帯になると部屋の電気を消し、気づかれないようカーテンの隙間から全員で外の様子をうかがっていました。
意外なバイクの正体
やがて、バイクのエンジン音とともにヘッドライトの光が近づいてきました。
「きたきた!」
バイクはいつも通り走ってきます。少しづつ近づいてくるエンジン音とヘッドライトの光。やがて、友達の家の前へ。全員の目の前を通過し、減速することなく走り去って行きました。
「えっ??」
「見たか?」
「うん」
そのとき、全員が同じものを目撃しました。
バイクも人も存在せず、ただ光だけが音とともに走って行ったそうです。