【怖い話】 原因不明の病気
事態が悪化したとき、原因がわからないのは厄介ですよね。
そもそも、原因がわからなければ解決の目処が立ちません。病気であれば、治療法すら確立できないわけですから。
私がまだ一人暮らしだった頃、急な歯の痛みに襲われたのがきっかけで通院するようになった歯医者さんがあります。
引っ越したばかりで近所に何があるのかよくわかっていない頃で、すぐ診てもらえて助かりました。以降、些細なメンテナンスから治療まで何年か通っていました。
ただ、ある時期からどうも様子がおかしいのです。
当初いた受付と数人の歯科助手や歯科衛生士が急にいなくなり、受付は奥さん、助手は一人だけ。そして、ついに奥さんが受付と助手を兼ねるようになっていて、夫婦だけで経営するようになりました。
院内は次第に閑散としていき、待合室には自分以外いないということも。もともと個人経営の小さな歯医者さんですが、それなりに患者さんはいました。
(何かトラブルでもあって患者が離れたのかな?)
とも考えましたが、そういった話も聞いたことがありません。
そのうち暫く行かない時期がありましたが、以前治療してもらった箇所に不具合が出たので診てもらうことに。予約のために電話をすると、何度も呼び出してからようやく出たのは先生本人でした。
(え?まさか?)
これまでの流れで嫌な予感がしましたが、見事に的中。行ってみると、院内には先生しかいませんでした。
それより、私が驚いたのは先生の姿です。
奥から現れた先生は、まるで骸骨のように痩せ細っていたのですから!
骨に皮だけという感じの腕の細さで、歩くのもやっと。手すりや壁に捕まりながら、ようやく診察室に入ってきました。
先生は、恰幅の良い体型ではありませんが、かといっても痩せてもいませんでした。中肉中背で、動きも普通でした。
それが、まるで別人なんです。
流石に驚いて
「大丈夫ですか!?随分お痩せになりましたが、ご病気なんですか?」
と声をかけました。
ところが、病気ではないと言うのです。病院で診てもらってはいるものの、
「原因不明だそうです」
と言っていました。痩せて衰えていく原因はまったくわからないのだと。
理由は聞けませんでしたが、家族もすでにいないようでした。
(あれではもう、治療はできないだろう)
もう無理だと感じた私は、別の歯医者さんを探し、メンテナンスに行くようになったのです。
それから一年くらい経ち、気になってGoogle mapを見ると、名前と経営者が変わっていました。
どうなったのかはわかりません。ただ、あの衰弱ぶりでは亡くなっていてもおかしくはないでしょうね。
あの急な衰退ぶりと人の離れ方、何より怖いのが原因不明の病気。治療の術もなく弱るだけ。
推測ですが、自分の経験からすると誰かに強く恨まれてしまったのだろうと思います。でも、相談されたわけでもないのに普通の人にオカルトな話をするわけにもいかず、助けることはできませんでした。