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「IT苦手」は経営者失格(5)内製化で実現する自律的デジタル経営
こんにちは、「笑顔工学」の専門家、木村光範です。
笑顔工学って何??という方は、ぜひ自己紹介をご覧ください!
7回シリーズで「IT苦手」は経営者失格 という記事を書いています。
第3回の記事で、デジタル部門における日本企業の「内製化」率が、諸外国に比べて著しく低いことが日本の経済停滞を招いている、という話をしました。
今回は、内製化が何故大切なのか、どうやって実現するのか、について、「内製化で実現する自律的デジタル経営」と題してお届けします。内製化にはリソースやスキルの不足、初期費用の問題など課題も多いのが現状です。内製化を成功させるための具体策と、千年経営の視点での「自律的デジタル経営」の実現について考えていきます。
なぜ「内製化」が重要なのか?
外部ベンダーに依存したデジタル化は、短期的な導入スピードの面では効果的かもしれませんが、長期的には以下のようなリスクが潜んでいます。
1. コストの肥大化
プロジェクトが進むたびに追加開発や変更費用が発生
外部ベンダーに依頼すると、最初に何をどのように作るか決める段階で、網羅できなかった機能が必要になる場合や「やはり使いにくいからこう変えたい」といった仕様変更が発生するたびに追加費用が発生するケースが多々あります。
契約更新のたびに費用が上昇
初期契約では低価格を提示されていたとしても、契約更新時には価格が見直され、サポートや保守費用が増額される傾向があります。そのシステムを使わないと業務が止まってしまう、という状況で価格交渉力を失い、企業が不利な条件を受け入れざるを得なくなることもあります。
コスト管理が複雑化
複数のベンダーを活用している場合、各ベンダーの契約内容や請求条件が異なるため、コスト管理が煩雑になります。結果として、無駄な費用が発生しても気づかないことがあります。
2. 柔軟性の欠如
現場のニーズに即応できない
現場にいつも居るわけではない外部ベンダーでは、現場のニーズに迅速に対応することが困難です。特に、業務フローの変更や新規機能の追加が必要な場合、要件定義から開発・テストまで時間がかかり、機会損失が生じることがあります。
新技術の採用が遅れる
特定のベンダーに依存していると、最新技術を取り入れる際の柔軟性が損なわれます。たとえば、AIやクラウド技術の導入がベンダーの能力に左右されることで、競合他社に遅れを取る可能性があります。
カスタマイズが困難
外部ベンダーが提供するシステムは汎用性が高い反面、業務特化型のカスタマイズが難しい場合があります。標準機能では現場の要望を満たせず、運用面での無理が生じることも少なくありません。
3. 技術力の蓄積が難しい
ノウハウが外部に流出
外部ベンダーがすべてを担当する場合、システムの設計思想や構造に関するノウハウが社内に蓄積されません。これにより、問題が発生した際に自社で対応できず、常に外部の助けを求める状態に陥ります。
社内スキルの停滞
自社で技術力を持たないと、従業員が最新のデジタルスキルを習得する機会が減り、組織全体の技術力が停滞します。結果として、デジタル化が進む市場環境で競争力を維持することが難しくなります。
新規プロジェクトの推進が制約される
外部依存により、プロジェクトの立ち上げスピードが遅れ、企業の成長機会を逃すことがあります。特に、新規事業や革新的なサービスを迅速に市場投入するためには、社内に一定の技術力が必要です。
サポート終了のリスク
特定の外部ベンダーに依存している場合、そのベンダーがサービス提供を終了する、または事業を縮小するリスクがあります。このような場合、企業は急遽新しいベンダーを探さなければならず、移行コストが高額になることもあります。
内製化がもたらす解決策
上記のリスクに対して、内製化を進めることで次のようなメリットが得られます:
コスト管理の透明化
不要な追加費用を抑え、予算内でのプロジェクト進行が可能になります。
柔軟性の向上
現場のニーズに即応し、変化に強い組織体制を築くことができます。
持続可能な技術力の育成
社内での技術力蓄積により、長期的な競争力を確保できます。
プロジェクトリスクの軽減
社内に知識があれば、外部要因によるリスクを最小限に抑えることができます。
これらの観点から、内製化は単なるコスト削減手段ではなく、自律的経営の基盤を構築する重要な戦略です。特に現代において、デジタル化は企業の根幹を成す要素であり、その主導権を外部に委ねることは、企業にとって極めて大きなリスクを伴うことを認識する必要があります。
内製化をどうやって実現するのか
このように、内製化は企業の自律的なデジタル経営を支える重要な取り組みなのですが、特に中小企業では以下のような課題が立ちはだかり、すぐには難しいケースも多々あります。
ITスキルを持った人材がいない
社内に専門知識を持つ人材がいないため、どこから手を付けてよいか分からない。業務が忙しく時間が割けない
日々の業務が手一杯で、内製化に取り組む余裕がない。
こうした課題を乗り越えるために、中小企業でも実現可能なアプローチを以下に提案します。
1. リスキリングプログラムの活用
内製化の第一歩は、社内の人材がデジタルスキルを身につけることです。既存社員を育成することで、スキルを外部に依存しない体制を整えることができます。
リスキリング助成金を活用する
国や自治体が提供する助成金を活用し、従業員の教育訓練を行いましょう。たとえば、DXリスキリング助成金などが該当します。eラーニングやハイブリッド教育
業務時間外に学習できるオンライン教育プログラムや、Zoomを活用したフォローアップを提供するプラットフォームを活用しましょう。
2. 専門家派遣や公的機関の利用
専門家派遣や公的機関は、中小企業にとって心強い支援です。専門家によるアドバイスが無料もしくは安価に受けられ、具体的な内製化の手法やプロジェクト管理を支援してくれます。
全国各地の商工会議所や自治体などで、ITやデジタル化に特化した専門家派遣プログラムを提供しています。
東京都の企業であれば、私がアドバイザーをさせていただいている東京都中小企業振興公社のデジタル化推進ポータルで、支援メニューを確認してみてください。人気サービスで、すぐに年度の支援枠がいっぱいになってしまうので、年度が変わるタイミングでご検討いただくと良いかと思います。
3. レンタルCTOや副業人材の活用
社内にITを推進できる人材がいない場合、一時的に専門家を雇用したり、副業人材を活用することで課題を解決する方法があります。
レンタルCTOの導入
CTO(最高技術責任者)として、経験がある外部の専門家を一定期間雇用、もしくは業務委託し、デジタル化プロジェクトを指揮してもらいます。これにより、短期間で効果的な戦略立案とプロジェクト推進が可能です。将来的な内製化に向けて、伴走していただき、一定期間の後もアドバイザーとして関わってもらえるような関係が理想です。副業人材の活用
大企業で活躍するプロフェッショナル人材を副業として採用することで、専門的なスキルとノウハウを得られます。
ただし、そのまま活用するとミスマッチも多いようです。私が代表をしている一般社団法人IT人財育成フォーラムでは、こうした副業人材の企業のプロジェクトへの参画、スキル移転、組織変革などをサポートしています。
4. 小規模プロジェクトからのスモールスタート
内製化は、一気に全ての業務に適用するのではなく、小さなプロジェクトから段階的に進めることが成功の鍵です。
限定的な業務から開始
例えば、Excelで行っているデータ管理をGoogle Sheetsなどに移行して、全員が随時活用できるようにすることや、生成AIの活用を推進する、など、比較的簡単な作業から着手します。一部の部署で試験導入
会社全体ではなく、まずは特定の部署でパイロットプロジェクトを実施し、得られた成果や課題を全社展開に活用します。
5. 外部リソースの適切な活用
内製化を進める際でも、すべてを自社で行うのは現実的ではありません。以下の領域については外部リソースを活用するのが効果的です:
高度なセキュリティが要求される社外向けサービス
例:顧客データを扱うシステムや決済プラットフォーム。専門性の高い技術領域
例:AIモデルの開発、ブロックチェーンの実装など。ハードウェア製造を伴うプロジェクト
例:IoTデバイスの設計や製造。大規模なインフラ構築
例:データセンターの設計や構築。短期的に大量のリソースが必要なプロジェクト
例:急遽必要になった法改正対応。
外部リソースを活用する場合でも、プロジェクトの主導権を社内で握ることが重要です。具体的には下記の点に注意すると良いでしょう。
プロジェクトマネージャーを社内から選出。
要件定義や設計段階で積極的に関与。
外部アドバイザーを活用し、客観的視点でプロジェクトを管理。
内製化の成功例:日本経済新聞社(日経)
日経は「日経電子版」の開発を外部委託から内製化へ転換しました。その結果、以下の成果を達成しました。
アジャイル開発の導入
フィードバックを迅速に反映し、短期間でのリリースを実現。
プロダクト改善のスピードが格段に向上。
表示速度の大幅改善
「爆速電子版プロジェクト」を実施し、コンテンツの表示速度を業界最速レベルにまで引き上げました。
持続可能なエンジニア組織の構築
社内にノウハウを蓄積し、次世代のサービス開発にも迅速に対応可能な基盤を整えました。
成功の秘訣
日経の内製化が成功した背景には、経営層がプロジェクトの重要性を明確にし、エンジニア採用・育成に真剣に取り組んだ点があります。また、現場との連携を重視し、実際の業務ニーズに即したシステム設計を進めたことも成功の要因です。
自律的デジタル経営を推進しよう
自律的デジタル経営とは、変化の激しい時代において、自社のビジョンを軸に意思決定を行い、外部に依存せず柔軟かつ持続的な成長を可能にする経営スタイルです。この実現には、内製化を進めること、外部リソースを適切に活用すること、そして理念を全社員で共有し、組織全体で一体となって取り組むことが必要不可欠です。
デジタル化は単なる業務効率化の手段ではなく、企業が未来を切り開き、自らの強みを最大化するための経営基盤そのものです。内製化を通じて、自律性を高め、自社の価値観に基づいた競争力を構築しましょう。
企業の未来は、外部環境に左右されるものではなく、私たち自身の選択と行動によって形作られます。自律的なデジタル経営を軸に、企業とそこで働く人々が共に成長し、持続可能な社会の実現に寄与する第一歩を踏み出していきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、「生成AI時代の経営者が今すぐ始めるべき3つのこと」をテーマにお届けします。生成AI(Generative AI)は、近年急速に普及し、ビジネスの在り方を根底から変えつつあります。この新たな技術をどう活用するかは、経営者の手腕にかかっています。次回は、生成AIの基本から活用方法までを具体的に解説し、すぐに実践可能な3つのアクションプランをお伝えします。
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