千年企業は必ず○○を大切にしている!
皆様、こんにちは。「笑顔工学」の専門家、木村光範と申します。
「笑顔工学」って何? という方は、ぜひ自己紹介をご覧ください!
さて、永く続く企業 (私のnoteでは「千年企業」と呼ぶことにします。) には、どのような秘密があるのでしょうか?
この問いを解き明かすため、27年で会社を閉じることになった私は、自己反省をしながら研究を続けてきました。今回の記事では「千年企業が必ず大切にしている○○」について、日本の長寿企業の具体的な事例を交えて探っていきます。
そもそも、なぜ「千年企業」と呼ぶの?
なぜ100年や200年ではなく「千年企業」なのかと疑問に思われるかもしれません。100年までは、創業者のカリスマ性や初期のビジョンが色濃く影響し続けることが可能です。しかし、1000年を目指すとなると、それを超えて組織として生き延びるための仕組みと、その仕組みを支える文化が必要です。そのような仕組みを手に入れることで、企業は変化する環境の中で永続的に存続し続けることができるのです。この本では、その仕組みや文化をどのように築き、どのように深化させていくのかについて、私の経験と様々な企業の事例を交えて紹介していきます。
また、「千」の漢字は元々「集まった人々」を表していたとされ、そこから「非常に多い」という意味で使われるようになりました。一攫千金、などと使われますよね!というわけで、私の文章では永続企業のことを「千年企業」と称しています。
デジタル社会における経営環境は、これまで以上に複雑で、変化が激しいものとなっています。AI、IoT、ビッグデータ、クラウドなどの技術はビジネスの在り方を根本から変えています。このような状況でも、そして未来に起こるであろう、今では想像もつかないような状況であっても、永く続く企業には、永く続く仕組みと、仕組みを大切にする文化がありました。
その仕組みとは何なのでしょうか?
「公利公益」の精神
長寿企業が長年にわたって存続しているのは、単に経営の上手さや製品の良さだけではありません。それよりも根本にあるのが、単なる経済的利益を超えた「公利公益」の精神、すなわち社会との共生です。この視点がなければ、短期的な利益追求に偏り、持続可能性を失ってしまうことがあります。
金剛組
例えば、大阪に本社を置く「金剛組」は創業西暦578年、1400年以上の歴史を持つ世界最古の企業です。この企業が長年大切にしてきたのは、地域社会との強い結びつきと従業員を家族のように大切にする姿勢です。これが、金剛組の長寿を支えてきた大きな柱でした。しかし、2005年に経営危機に陥った際、同じ大阪の髙松建設が金剛組を支援し、グループ会社として再建することになりました。
当時の髙松建設の社長は「金剛組を潰したら大阪の恥や」と述べ、単なる経営戦略ではなく、歴史ある企業を存続させ、宮大工の技を後世に残したいという思いが強かったとされています。髙松建設グループの傘下に入った後も、金剛組は本業の宮大工に立ち戻り、100人以上の宮大工を抱え、伝統技術の継承に努めています。
鈴廣かまぼこ
次に、創業約160年の老舗企業、鈴廣かまぼこの事例をご紹介します。西暦1865年(慶応元年)に神奈川県小田原市で創業した鈴廣かまぼこは、質の高い食品提供と地域社会への貢献を特徴とする企業です。
私も大好きな「蒲鉾」をはじめとする高品質な製品作りはもちろん、地域社会との共生にも力を入れており、小田原城の木造復元プロジェクトの立ち上げに参加したり、水源地の森林保全活動に取り組んだりしています。また、地域の農家と連携し、魚のアラと地ビールの搾りかすから作った肥料を提供するなど、地域循環型の取り組みも行っています。
環境への取り組みも積極的で、太陽光発電システム、太陽熱利用給湯システム、地中熱換気システムの導入など、環境に配慮した設備を積極的に取り入れています。
伝統と革新
永続企業がまた必ず持っていること、それは「伝統と革新」です。変えてはいけない軸をしっかり持ちつつ、時代に応じて変えるべきところは柔軟に変えていくことを大切にしています。
金剛組
先ほども出た金剛組を例にとってみます。
宮大工、という、変革が難しそうな業種ですが、新しいビジネスモデルの導入や経営の近代化を進めています。例えば、クラウドファンディングを活用した新たな資金調達手法の導入や、社寺運営のサポート強化など、伝統と革新のバランスを取りながら事業を展開しています。これらの取り組みは、金剛組が長年培ってきた地域社会との結びつきや従業員を大切にする姿勢を基盤としつつ、現代のビジネス環境に適応していく努力の表れと言えるでしょう。長寿企業の知恵と現代経営のノウハウを融合させることで、さらなる発展を目指しているのです
Bally
国外の事例も紹介しましょう。
1851年にスイスで創業したBallyは、革製品、特に靴でその名を馳せ、170年以上の歴史を誇ります。その成功の秘訣は、卓越した品質と職人技、そして革新を求める精神にあります。Ballyの経営理念は、伝統的な職人技と現代的なイノベーションの融合を核心に据えています。「Swiss Made」の誇りを胸に、最高品質の製品を通じて顧客に喜びと価値を提供することを目指しています。同社は「品質」「機能性」「デザイン」の3つの要素のバランスを重視し、これらを通じて持続可能な価値創造を実現しようとしています。創業者カール・フランツ・バリーの「人々は常に心地よさを求めるものである」という信念を今日まで大切にし、顧客のニーズと快適さを最優先に考えた製品開発を行っています。
この理念の下、Ballyは240以上の工程を経て製造される靴の品質に徹底的にこだわり、熟練の職人が技術を世代を超えて受け継いでいます。品質への情熱が、顧客からの長年にわたる信頼を支えているのです。
一方で、Ballyは伝統にとどまらず革新を続けています。NASAの依頼を受けて宇宙靴をデザインしたり、デジタルマーケティングを駆使した現代的なアプローチを採用したりと、若い世代の顧客に対しても積極的に訴求してきました。また、PEAK OUTLOOKプロジェクトを通じた環境保護活動や製品ラインの多様化など、社会的な課題にも対応しながら企業の持続可能性を高めています。
このように、Ballyは伝統的な職人技と品質のこだわりを守りつつ、現代のニーズに適応する革新を続けているのです。環境への配慮や社会的責任も重視し、伝統的な価値観と現代的な要請のバランスを取りながら、グローバルな視点で事業を展開しています。この伝統と革新のバランスを取り続けることが、Ballyが170年以上の長期的な成功を収めている理由であり、現代の企業にとっても学ぶべき事例と言えるでしょう。
千年企業における共通点
これらの事例から、千年企業における共通点が見えてきます。
伝統の継承と革新
地域社会との強い結びつき
従業員を大切にする姿勢
環境への配慮
時代に合わせた新しい取り組み
これらの要素は、私が提唱する「笑顔工学」の考え方にも取り入れられています。従業員や顧客、地域社会の幸福(笑顔)を重視することが、結果として企業の持続可能性を高める、ということです。
次回は、デジタル社会における企業経営の課題と、永続企業がいかにその課題に対応しているかを探ります。
ぜひ次回もお楽しみにしていただければ幸いです。
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