真のDXには程遠い日本の現実
こんにちは、「笑顔工学」の専門家、木村光範です。
笑顔工学って何??という方は、ぜひ自己紹介をご覧ください!
私が東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX推進委員会」の委員・ワーキンググループメンバーとして調査に携わった「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」 の集計結果が公表されました。
この調査結果では「積極的なデジタル活用が着実に進む」などと書かれています。それは間違いではありませんが、しかし、「真のDX」には程遠い現実も突きつけられていることが読み取れます。
今回の記事では、そのあたりを解説していき、本当の変革を実現するためには何を為すべきなのかについても紐解いて参ります。
中小企業のデジタルシフト・DX実態調査の結果
調査概要
調査目的: 中小企業の持続的成長を支えるため、デジタルシフトによる省力化や新事業創出の状況と課題を把握し、支援策を検討する
期間: 2024年10月15日~11月15日
回答数: 1,218社(回答率12.2%)
対象: 主に東京23区内の中小企業10,000社
方法: 郵送・メールによる調査票送付、郵送・Webフォームにて回答
この調査では、「IT導入の度合い」と「ビジネスモデル変革につながるDX推進状況」を分けて分析しています。
調査結果のポイント
8割がIT導入、5割が活用 しかし「DX」には届いていない
ITを導入している企業は 82.3%
ITを活用している企業(例えば差別化や競争力強化まで踏み込むレベル3・4)は 52.7%
ここだけ見ると、「半数以上がそこそこ活用している」印象ですが、実際の効果や変革度合いをチェックすると、多くの企業は業務効率化やコスト削減に留まり、ビジネスモデルそのものの変革には至っていないケースが多いのが特徴です。
レベル4(より高度な競争力強化)に進む企業が2.2ポイント増加
前回(2023年7月)の調査から比べると、デジタル活用が進んだ企業(レベル4)が2.2ポイント増加しました。これはポジティブな傾向ですが、全体でみるとまだまだ少数派です。
同時に、調査結果には「補助金を使ってシステムは導入したけれど、うまく使いこなせない」といった企業の声が多く寄せられています。
デジタルシフトが進む企業と、止まる企業
「進んでいる」企業の特徴
従業員数が多い
利益が増加傾向
社歴が浅い
従業員の平均年齢が若い
経営者の年齢が若い
これらの企業では、IT導入に前向きで、デジタル技術を核とした新規事業や競争力強化を進めようとする意欲が高い様子が伺えます。
「進んでいない」企業・・・ 小売・FAX依存・電話依存の現場
小売業では「電話・FAX」中心の受発注が 2割以上
顧客管理も「紙台帳」や「Excelのみ」という企業が 約4割
こうした事例を見ると、ITツールがあっても現場のオペレーションが変わっていないことが多いですね。結果的に「導入した割には生産性が思ったほど上がらない」という悩みがあるようです。
デジタルシフトの成果と課題
成果を感じる企業は77.9%・・・しかし・・・
この調査では、「デジタルシフトで十分 or 一部成果が出た」という企業が 77.9% にも及びました。
最も多いのは「業務効率化(コスト削減、時間短縮、ミス防止など)」で、約2割が「人手不足解消」にもつながったと回答しています。人手不足が深刻化する中で、IT活用の効果は一定の評価を受けていると言えます。
しかし、この「業務効率化」で終わってしまう、満足してしまうことこそが、真のDXに到達しない大きな壁でもあります。
コスト・人材・ツール選択への不安がトップ3課題
「コスト負担」(31.9%)
「旗振り役がいない」「IT使いこなし不足」(31.0%、26.4%)
「ツール選択・導入効果測定」(22.4%、22.1%)
前回調査(2023年7月)ではコストは3位だったのが、今回1位に浮上しました。これは為替レートの影響や人件費上昇も大きいと思われますが、ITツールの導入・運用コストを懸念する中小企業が増えています。
補助金で導入しても、結局の運用・維持コストをどう確保するかは別問題 という声が多数寄せられました。
そもそも、多額のコストをかけて行うデジタル化しか知らない、情報を持っていない、ということが浮き彫りになっていると感じます。
真のDXにはどう踏み込む?
調査では、「DX(ビジネスモデル変革、新価値創造)」と呼べる段階に達している企業はごく一部でした。多くの企業が 「既存業務をITで効率化しただけ」 で止まっている印象です。
「DX」の本来の意味
経済産業省のデジタルガバナンス・コードでは、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
紙やFAXを電子化して少し作業時間を減らしただけでは、「トランスフォーメーション(変革)」というには遠いといえます。
補助金頼りの設備導入だけでは変革が起きない
ハード・ソフトを導入するだけで満足してしまい、その先の「新規ビジネス」「サービス設計」「働き方改革」などに手を付けない
補助金終了後のランニングコストやシステム改良・追加開発を考えていない
外部ベンダーに丸投げで、社内にノウハウが蓄積されず、現場が使いこなせない
こうした状況が浮き彫りになっています。多くの企業から「ITはあるけど運用が追いつかない」「現場スタッフが嫌がる」といった声が聞こえてきます。
「内製化」でこそ本当のDXが動き出す
調査から見えた人材不足
デジタル人材について、「十分確保できている」は7.2%、「ある程度確保」は30.1%。約6割の企業が「デジタル人材が足りない」と回答。
外部リソースも約4割が活用していないという結果が出ており、社内に強いIT人材がおらず、かつ外部専門家にも頼っていない企業が多い現状が見え隠れしています。
内製化が生む「自走力」
DXには、社内が自主的にシステムやデータ活用を回せる状態(内製化) が重要だと再確認できます。「ちょっとした業務改善は自社でスクリプトを書き足せる」「データ分析を外注に頼らずできる」など、小回りの利く内製力こそが差別化の源泉になります。
このあたりは以下の記事に書いていますので良かったらご参照ください。
「伴走型支援」で変革を成功させる
「自社で変革を回したいけれど、どこから始めたらいいかわからない」・・・ そんな企業が多数を占めるのも事実です。そこで、短期的なコンサルに依存するのではなく、専門家・コンサルタントが現場と並走する「伴走型支援」を受けると効果的です。
調査でも「導入後のフォローが欲しい」「他社事例とノウハウをシェアしてほしい」という要望が多く見られたのは、この背景があるからでしょう。
結果的に専門家に相談するほうが安価で高い効果が得られることが多いですので、ご検討いただくと良いでしょう。
もし、いきなりコストをかけるのは・・・と考えられるようでしたら、商工会議所・商工会の専門家派遣制度なども使えるかもしれませんし、東京都では、東京都中小企業振興公社などでも支援を行っています。(私も専門家として派遣されていくこともあります。)
補助金よりも大事な「経営者のコミットメント」と「文化改革」
調査結果からも、多くの企業が「補助金・助成金」を求めている事実が浮かんでいます(59.3%が「利用したい」と回答)。
一方、DXは経営者自らがコミットし、組織変革を進めないと成功しにくいのも現実なのです。
コスト・人材不足などの課題は確かに大きいものの、ビジネスモデルの変革や新しい価値創造に本腰を入れられるかどうか、その意志決定が中小企業にとってのDX成功可否を大きく左右する、と改めて感じます。
そういう意味でも、信頼できる専門家に経営者が相談できる環境は大切でしょう。
DXは「変革」である
東京商工会議所のこの調査結果を見ると、中小企業がデジタルシフトを進める中で 8割以上がITを導入し、半数以上が一定の効果 を得ているものの、実態としては「業務効率化」や「コスト削減」に終止している例が非常に多いことがわかりました。
しかし、デジタルガバナンス・コードで示されるDXの本質は、「ビジネスモデルや企業文化を根本的に変える大きな変革」です。単に補助金を使ってシステムを買うだけでは到底たどり着けません。
真のDXには、経営者のコミットと内製化が必要です。
コストや人材面の課題を乗り越えるには、現場任せではなく、経営全体で「どう変わるか」を考え続ける姿勢が鍵となります。
そして、それを実現するために、伴走型支援を受けることも助けになります。
あなたも、ただの業務効率化をしただけで、DXをしたつもりになっていませんか?補助金や助成金はありがたい場合もありますが、その先にある「真の変革」こそが、未来を切り拓く原動力になるはずです!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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