引き際を考えるとき
「自分はいったいどこまでできるんだろう。」
どんな職種でもシニアになって仕上がってきた人になってくると誰もが考えることではないでしょうか。
組織で求められる個人、チームへの要求レベルが高くなり、立場も上がってくるに従い頭をよぎる気持ち。
わたしも常に次の立場の仕事を意識して、スキルや知識、実践を磨いて昇進を重ねてそれなりの立場になっています。でもこれはいったいいつまで続くのかと感じることがあります。
人は組織で昇進し続けると無能になるという「ピーターの法則」は、理屈的に理解ができて、自分の能力の限界までくると、立場に求められる仕事に能力が追いつかなくなる。
結果的に自分の能力ではちょっと足りないポジションに人は落ち着き、無能と評価されてしまうわけです。
また、戦略に関連して、「マンシュタインのマトリックス」という概念があります。
縦軸に能力(利口↔︎愚鈍)、横軸にやる気(勤勉↔︎怠惰)を取り、4象限にわけたマトリクスです。
つまり
① 利口で勤勉な人→参謀
② 利口で怠惰な人→指揮官
③ 愚鈍で勤勉な人→解任
④愚鈍で怠惰な人→頭数
に分類し、そのタイプごとにどのように人事配置すべきかを示唆したものです。
このタイプごとの差配について少し意外だったのは利口で怠惰な人の方が利口で勤勉な人より指揮官に向いているとみなされていることです。
怠惰はネガティブな印象がありますが、無駄な仕事を省き、本質的な事にフォーカスできる資質の裏返しでもあります。
そして愚鈍で勤勉な人の方が愚鈍で怠惰な人よりも評価が低く、非常に警戒しなければいけないと言われているところも意外でした。間違ったことを一生懸命進める人はかえって組織に災いをもたらすという考え方で、組織から排除すべきだとさえ言われています。愚鈍で怠惰な人は、言われたことは言われた通りやるので、まだ頭数として役に立つ余地があるという点で愚鈍で勤勉な人より価値があるということらしいです。
このマンシュタインマトリクスとピーターの法則を合わせて考えた時に自分はやべえなと思いました。少なくとも私は勤勉です。常に学ぶ姿勢を変えません。自分が行動する理由も自分で考えます。しかし、ピーターの法則で能力の限界に近づき無能になった私は愚鈍な勤勉者になってしまうのです。怠惰な人間になり言われたことを言われた通りにやるような人間にはなれません。
組織が成長し、自分が愚鈍と思えるオペレーションが組成され、組織で営まれるとき、もはや組織に災いをもたらす者になってしまうのです。
組織が成長すると多くの人にとって利口で勤勉だった人も愚鈍で勤勉なタイプになるリスクが上がり、そして実際そうなるのだと思います。
そう考えると、その時が今いる場所からの引き際なのかもしれません。