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一般的な小説公募の選考過程についてしみじみ思うこと
長年いろいろなところに小説を投稿(応募)してきていて、候補に残ったこともあれば、片足ひっかっかったこともあり、はたまた予選にすら残れないことも数えきれないほどあり。
その経験からして言うのだけど。
一般的に今やっている形式の小説公募(新人賞)は、"運"の要素が大きすぎると思う。
いや、そうじゃない、残る人は残るんだ、と主張する人もいるけど、いや、そうじゃない、やはり運がかなり大きい。断言する。
特に一次選考とかレベルの選考。
たとえば最終選考なら数名の選考委員が喧々諤々やって選考するわけだけど、最初の方の選考では、ひとり(あるいはきわめて少人数)が独断で振り落す。
わかる人はすぐわかると思うけど、ここにもう問題がある。
最終選考でも選考委員のあいだで意見が分かれるのに、ここのレベルでは「ひとり(あるいはきわめて少人数)」で振り落してしまうということ。
期間から言っても、最初の方の選考はどうしても荒い。軽い。熟読なんてする時間はない。
なお、一次とか下読みとかこの段階では、通常、「小説にもなっていないような作品を落とす」とかよく言われていて、まともに書けていれば通るはず、なんて言う人も多いけど、それ、嘘だからね、実際。
「小説にもなっていないような作品」はもちろん落とされるけど、「まともな作品」も当然のごとくガンガン落とされる。
で、考えてほしいのだけど、ここで強大な力をふるう「ひとり(あるいはきわめて少人数)」の“見る目”というのはどのくらいのものだろう?
いや、別に見る目がないと言いたいわけではない。そんな馬鹿にしたようなことは思っていないし、言ってもいない。
しかし、さっきも書いたように、「最終選考でも意見が分かれる」のですよ? 小説の評価というものはもともとそれくらい難しいものだと思う。個人の嗜好と完全に切り離して選考するのも難しい。
たとえば、最終選考に残ったある作品に難色を示す選考委員がいたが、喧々諤々の結果、多勢に押されてその作品が受賞したとする。しかし、もし仮に、その難色を示した選考委員が下読みをしていてその作品を読んでいたら一次選考にすら残らなかったかもしれない。
最初に書いた「運の要素が大きすぎる」というのは、そういうこと。
また、もうひとつ言うと、「これまでなかったような斬新な作品」「既成の小説をこわすような作品」を公募で求められることが多いのだけど、実際には、すさまじく斬新な作品はまず下読み選考で落とされてしまうだろうという、理想と現実の乖離のようなものもありますね。
最終選考で求めている作品は、もしかしたら、そこに届く以前に落とされてしまっているのかもしれない。
しかし、ぼくがここで書いている程度の問題点くらいは主催者側もおそらく認識していて、だからといってどうすればいいのだ? ということだと思うのだけれど。
理想を言えば、最終選考で喧々諤々やるレベルの選考を最初からやればいいのだが、現実的にそんなことは困難で、だからどうしてもこういう体制による選考にならざるをえないのだろう、と。まあそれくらいの推測はできる。
にしても、下読み、一次選考から、選考にあたる人の人数はできるだけ増やして層を厚くするべきではありますよね。同じ作品に対して最低三名かな、と思っているのですが。
ところで、こうしてぐだぐだと書いてきた公募の関門をすんなり通過した人の中には「残る人は残るはず」とか「実力さえあれば公募なんて簡単」などと言う人もちらほらいるのだけど、そりゃそうでしょうとも。
宝くじを一発で当てた人が「宝くじを当てるのは簡単」と言ったとして確かにそこだけを見れば嘘はないけれども、だからと言って、みんなが、あるいは常に宝くじを当てるのは簡単ということではない、ということです。
あ、あと、これはついでですが、ある賞で落選した作品をほかの賞の応募にまわしたらいけないという話があって、選考委員は複数の賞をかけもちしていることが多いので真っ先に落とされる、ということなのだけど、いや、これはおかしいでしょう。
応募者にかけもちをいけないと言うのなら、選考委員もかけもちするなよ、と(笑)。
あるいは、かけもちしていても、前のことは完全に忘れて、この賞に対する応募作として、別の観点でもってきちんと選考するべきでしょう。だって別の賞なのだから。勝手にかけもちしておいて「前」をひきずるほうが公正さに欠ける。そしてそれができないのなら、選考者のほうこそかけもちするべきではない。
最後に、こんな形式の公募があれば面白いかも、と思っているものを、ふたつ。
全選考過程を完全公開
下読み段階から、いわばレースのような具合に。徐々にふるい落とされていく過程を完全可視化。どの作品がいつどんな理由で落とされたのか? 作品自体も公開すれば、その理由が正当なものかどうかも第三者が確認できていいかも(応募者のダメージは大きくなるかもしれないが)。
複数の版元による争奪戦
共同公募、といいましょうか。公募で集めた作品を、各社がそれぞれ別々に選考。受賞は同じ作品が重ならないように「早いもの取り」。
「別々に選考」することによって、各応募作は必ず複数回読まれることとなる。また、一度の応募で複数同時に応募したのと同じ状態になり、主催者側も共同で開催するので、応募者にとっても主催側にとっても負担が軽減される。
これ、すごくいいアイデアじゃないですか?
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