瀬戸正洋句集『似非老人と珈琲―薄志弱行―』一句鑑賞と十句選
あまりよいにんげんではない暖冬
自虐の句に見える。
しかし、「わたしは正しい、あんたは間違っている(なぜなら、わたしはよいにんげんで、あんたはわるいにんげんだから)」と、意見の異なる他者を攻撃する人より、はるかに謙虚で誠実な態度だと思う。
思えば、人は皆、「あまりよいにんげんではない」のかもしれない。
「薄志弱行」でも、時に自虐的でも、己自身や「暖冬」の現実をそのまま受け入れて生きてゆく。
そもそも「にんげん」って何だ、という哲学的な問いがこの句には潜んでいるかもしれない。
……いや、そんなこと無いか。
瀬戸正洋 『似非老人と珈琲―薄志弱行―』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)