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「もう別れてもいいですか」 妻の本音が読める小説

 作家 垣谷美雨さんの作品は、初めて。カバー挿絵で拝見すると、こういった家族の問題を題材にした小説が多いみたい。家族なら話のネタは尽きないもの。
 本書は、結婚、離婚が限り有る人生の時間の中で必要?幸せなことなの?を、還暦間近の主婦目線で紡がれる物語です。題名は奥様方皆様の本音であり、もう実も蓋もなく本当にノンフィクションではないかと思うほど著者が、いや奥様たちが言いたいことを散りばめた小説です。定年間近の夫とパートで働く妻。あまりにも態度が悪いに夫と家庭に見限り、業を煮やした頃、同級生グループの女子会での話にも共通する流れとなり「離婚」に踏み切るのです。
 夫婦間は難しいです。身をもって感じてます。本書を読む夫方は、「妻に対して、今までのままではいかん!」と反省するのではないかなと思いました。

 本書読んでみて、既婚者は読むのに力(パワー)が要ること請け合いです。見に覚えのあることが多くて。。。設定の世代が近く、まさしくという内容でしたので、我が身に置き換えながら読みました。いやあ、赤裸々でいいですね。
 調停離婚までの経緯や家族へのフォロー、世間体も絡め現実味があり、これからしようとする人にとって参考書にもなる(笑)小説です。

 妻の視点で見ると、夫はそんなものなのかもしれません。現実的には平成後期になってからの夫婦は、育児、介護など大変問題が騒がれてた頃なので夫婦間の協力は幾分良くなってるのではないかなぁと思いますが、題材に上がってる現アラフィフ世代の夫婦は、こんな感じかなあと思います。「亭主関白」から大きくはみ出ると、妻に対しては"害"にしかなってないんだろう。

 そういうことを考えると、ウチの両親は定年後に二人で自動車に乗って定年祝の旅行に出かけたことは、とても素晴らしい夫婦と感心してしまいました。

 戻って、本書には夫婦間について随所に作者の叫び(と思うところ)が盛り込まれてます。以下抜き出してみました。(・印のところです。⇛印は私の所感です。)

・自分だけを大切にする人間は、最初から家庭を持つ資格なんてなかったんやないの?
 ⇛それが分からないから、あとになって後悔するんですよ。「結婚」の2文字が出ると周りが見えなくなる。

・子供はほしいが夫は要らない。
 ⇛じゃあ、どうやって子供を作るのか?それじゃあ結婚要らないし、男性の認知、養育費も要らない?最初から割り切るべきか。

・離婚に踏み出すには、····嫌悪感が必要です。
 ⇛まさしく、そう!というか、夫婦間で嫌悪感が出たら、萎むことないなあ。家庭を無くしたくないなら嫌悪感をコントロールしないといけない。

・我慢を重ねた上で結婚生活を何十年も続けることになんの意味があるのだろうか。
 ⇛子どもたちが巣立つまでは、要るかと。子供が独立したら、もう意味はないのかもしれない。親、夫婦のエゴだけが残る。結婚ということ自体、不要かも。

・本当は、嫁はんが言わなくても男は分かっとる。·····面倒なことは全部嫁はんに押し付けとることも。見てみぬふりしてるだけ。
 ⇛そう。お互いに押し付け合う言葉が出ると喧嘩になるので嫌な気持ちを抑えたくて見てみぬふりなんだよ。本当に心から信頼・尊敬の念がある夫婦でないと、こうなるのかなあ。

 本書内では、以下のことが取り上げられていて離婚の流れになるのですが、その都度考えさせられます。

五十歳
結婚
別居
離婚

「五十歳」についてのつぶやきは、
  「面白く、そして切ない」
  「今までわからなかった様々なことが明確になってくる」
  「頭の中でパッと答えが思い浮かぶ」
と述べられており、まさしくそうだなあと感じる今日です。迷わなくなるんですよ。おそらく人生を達観する、または割り切る時期だからだと思うんてすが、よくわかる表現だと感心してしまいました。

 次に"結婚"についても持論が述べられており、
  「添い遂げなくてはならないこと」
だけど
  「我慢の上になんの意味がある中」
と。昆虫や動物だと割り切りが早いのに、人間だからなんでしょう複雑だあと、ちょっと悲しくもなります。

 家庭内別居については、愚か者のすること?と、疑問が投げかけられており、「口もきかず目も合わさない状態なのに、困ってないと言い切る感覚が、既に人としておかしくなってる」と、本書内て主人公の友人が言っている。まさしく感覚麻痺だ。でもアラーム挙げづらいんですよね。これが世間体を気にするということなのでしょう。

 「離婚」では、怖いのは夫婦が対面すると一方向の関係になることとあり、そう思います。作中の「夫(妻)が相手だと心が拒絶してしまう」がまさしく。対等じゃなくなるんですよね。反応ができなくなるのは、夫婦だったこれまでの延長からの行動・心理描写でしょう。

 弁護士の成功報酬が2割や、調停では1年半くらいかかるということ。2割。。多いと見るか少ないと見るか。お金は重要なファクター。離婚に際しては「情」は弊害でしかないことも、なるほどと納得してしまった。

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