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「発注いただきました!」短編小説としても面白い

 朝井リョウ氏が、各社より発注された仕様にもとづいて執筆された渾身の作品がまとめられた作品集です。作品数、21作品。数ページのものもあれば原稿用紙用紙90枚程度のものまで、また発注元も出版会社からビール会社と多彩で、作家という職業の方は、色んな仕事をなされるんだなあと感嘆しました。本作品どれも、面白かった。
 本書の変わっているのは、依頼主からの依頼内容が書かれており、他にない目新しいやり方がされている所です。
 各作品は、少し泣けるものから、報われず何ともやり切れない物語まで、浅井氏の物語の引き出しに感服してしまうこと請け合いで、「こち亀」とのコラボレーション作品ではチア男子が主軸にありながらも、両さんの活躍もあり私が世代的にマッチしていた内容だったので漫画を見ているように面白かった。
 どれか一点というなら、たばこを取り扱った「胸元の魔法」は、とてもしっくり来る内容で、終わりも良くて気に入りました。夫婦の新婚旅行だが、それまでに至る夫の不安な心情が綴られている。園な不安なことを一人悶々と考えるため、理由を隠すかのように言い訳として"たばこ"が用いられているのがさりげなくて、よかった。物語も汲み取れて面白い作品です。

 それにしても、読んでて気づいたのは、作品の内容が意外とお客様からの仕様からはみ出していてるんじゃないのかなと。いや、私が気付いていないだけなんだろうと、思うのですが、やはり作家の想像力は、必ず仕様以上に膨らむものなんでしょう。

 どの小説?も読み応えありますので、短編変則的な小説をお求めなら、本書も読んでみては、いかがでしょうか。


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