1. LTspice XVIIとは
LTspiceは回路シミュレータSPICEの一種で、その最新バージョンXVII(2017)です。SPICE (Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)とは、アナログ電子回路をシミュレーションするソフトウェアで、カリフォルニア大学バークレイ校で1973年に開発されました。元々のSPICEは回路図をテキストで書く必要があったのですが、SPICEを拡張し、回路図エディタや波形ビューアなどを追加したものに、OrCAD PSpiceやLTspiceなどがあります。その中でもLTspiceは一つの回路内で扱える部品数が無限個であること、無期限で無料のバージョンが制限なしで使用できることなどから、最近よく用いられています。また、動作環境としても、WindowsとmacOS両方のOS上で動作します。
LTspiceは電子回路シミュレーションソフトウェアなので、各種の電子部品がモデルとして含まれています。LTspiceはシミュレータであり、実際の部品を用いるわけではないので、LTspice上で用いる部品を部品のモデルと呼びます。一般にLTspiceやPSpiceなどで用いる部品のモデルをSPICEモデルと呼びます。このSPICEモデルは、半導体部品を製造しているメーカーから無償で配布されている場合もあります。特に、LTspice自体が半導体メーカーであるアナログ・デバイセズ(Analog Devices)社(旧Linear Technology社)から提供されているため、同社がリリースしている多くの半導体部品のSPICEモデルがソフトウェアに最初から組込まれています。しかし、国産の半導体部品や真空管などのモデルはほとんど含まれていないという欠点があります。
そこで、本章では、実測したデータから部品のSPICEモデルを作成したり、メーカーなどから提供されているSPICEモデルを持って来て実際にLTspiceに追加し、電子回路の動作をシミュレーションします。