逆タイムカプセル：18歳の私へ

この間、久しぶりに高校時代の夢を見ました。

受験勉強をしていた時期の、がむしゃらに頑張っているけれど、辛くて前が見えない日々。

夢の中では、若い私がまだ苦しんでいました。

15年近く経った今の私なら、当時の私にどんな言葉をかけるだろう。

ふとこんなことを思い立ち、「18歳の自分への手紙」という形で書いてみることにしました。

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18歳の私へ。

あなたは今、受験シーズン真っ只中。E判定しか出ていない無謀な目標に向かって、毎日訳がわからなくなるほど勉強していると思います。

残念ですが、今年はあなたの努力が報われません。

でも大丈夫。

あなたは諦めず勉強を続け、次の年にギリギリ0.7点差で滑り込みます。

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あなたは今、周囲に言われるがままに、良い大学に入ることが自分の人生にとって大切だと思っています。

それはウソです。

というより、良い大学に入っても入らなくても、人生はその後次第で変わります。

「こうした方が良い」と好き勝手なことを言うあなたの周囲の人は、誰もあなたの人生の責任を取れません。

実際、あなたは興味があるかどうかも分からないまま法学部に進学したあげく、周囲との能力差に絶望し、毎日のようにサークル活動に明け暮れます。

その結果、すさまじく悪い成績を叩き出します。

社会人になってからは、学歴なんか関係なく自分の人生をしっかり生きている人に何度も出会い、あなたは自分の考えの浅はかさに気付かされます。

今受験で視野が狭まっているあなたは、本当は他にどんな選択肢があるのか、何が自分に合っているのか考えることもしないでしょう。

数年後、あなたは自分に合わない道を選んだことを悔やみ、「なんのために受験勉強に耐えて頑張ってきたのか」と思います。

でも大丈夫。

あなたはそんな大学生活をきっかけに、かけがえのない友人を数人得ることができます。彼らはあなたと全く違う発想を持っていて、あなたの狭い世界観を広げてくれます。

そして10年以上経った後でも、彼らはあなたのくだらない話に耳を傾け、困った時は手を差し伸べてくれます。

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あなたは今、「私は文系だから」と、数学や科学をアレルギーでもあるかのように毛嫌いしていますね。

たしかにあなたは数学が得意ではありませんが、後からあなたはITや心理学が好きなことに気付きます。

今は学校や受験のために、強制的に勉強させられているのが苦痛で仕方がないと思っていますよね。

でも大丈夫。

あなたが苦手なことにヒーヒー言いながら取り組むことで覚えた「頑張り方」は、社会に出てからびっくりするほど役に立ちます。

そして大人になると、学びたいことを自分で選べるようになって、学ぶことがとても楽しくなりますよ。

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あなたは英語が好きだけど、難しい英語の問題を解こうとする度に苦戦して嫌になっていますね。

「私も帰国子女だったらなー」なんて、英語が堪能な友人に嫉妬していますよね。

どんなに国際経験豊富な他人を羨んでも、あなたが純日本人の田舎育ちであることには変わりありません。

でも大丈夫。

あなたのゼロからの頑張りは、意外な形で報われます。

冒険好きなあなたは、大学に入ってから何度も海外に行き、今まで見たことがない世界を目の当たりにします。

新卒でいきなり海外に飛び出し、社会人になって数年後には世界一周に出かけ、13年後にはアメリカで働き始め、日々英語を使って仕事をするようになります。

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あなたは今、受験のストレスに苛立ち、母さんに八つ当たりをしていますね。

今すぐやめて、「いつもありがとう」と言ってください。

優しい母さんがこっそり傷つき、こっそり友達にあなたのことを相談していることに、あなたはしばらく気付きません。

無謀な目標に向かって頑張るのが辛くても、その目標を決めたのはあなたです。あなたが今頑張れているのは、母さんの献身的なサポートがあってこそだということに、どうか気付いてください。

あなたが自分のやったことを反省し、ちゃんと感謝を伝え始めるのは、母さんに白髪としわがもっと増えた後のことです。

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あなたは今、父さんのことを「怒ると怖い頑固者」だと思っていて、苦手意識を持っていますね。

実を言うと、あなたと父さんは、外見も性格もそっくり。ですが、頑固者のあなたは認めようとしません。

あなたと父さんは、これからも数え切れないほど衝突します。

あなたは大学卒業後、日本で就職せずに海外に出て、さらに発展途上国のスタートアップでいきなり新規事業立ち上げに挑戦しようとします。

父さんは無謀にしか見えない道に勢いよく飛び出そうとするあなたを引き止めようと、勘当にまで話が進みます。

でも大丈夫。

そのスタートアップは幸運なことに生き残り、あなたの凝り固まった「常識」や「当たり前」を色々覆してくれます。

そして、時間はかかりますが。

父さんはあなたのキャリアを誰よりも応援する、強力なサポーターになってくれます。

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あなたは今、「25歳くらいまでには結婚できたらいいなー」なんて思っていますね。

残念なお知らせですが、あなたは32歳になっても、結婚する気配がありません。

もっと未来のあなたは良いパートナーに出会って結婚しているかもしれませんが、とにかくあなたが思い描いた理想の人生は起こりません。

自分に自信がないあなたは、無意識ながら恋愛に妙な刺激を求め、我が強い人に何度も惹かれます。相手に合わせすぎて消耗し、失敗を繰り返し、失敗する度に大きく傷つきます。

20代後半からは、結婚・出産と周囲のライフステージの変化を何度も見て、さらに焦るようになります。父方のばあちゃんは、あなたの結婚を事あるごとに急かすようになります。

でも大丈夫。

あなたは恋愛の失敗を通して、人を大切にすること、苦しくなるまで周囲に合わせすぎないこと、そして、辛いことや大変なことがあってもいつかは乗り越えられることを学びます。

少しずつどんな人が自分に合うのか分かるようになってきますし、人の関係性や人生のカタチに正解が実はないことを学びます。

そして、今のあなたにとっては意外かもしれませんが。

ばあちゃんがあなたに心無いプレッシャーをかける時、あなたの味方をしてくれるのは父さんです。

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あなたは今、目の前のことに一杯一杯で、じいちゃんばあちゃん４人のことを忘れていますね。

あなたが想像する以上に、彼らはあなたのことを想ってくれています。

頑張るあなたを、心から応援してくれています。

面倒だと思わず、お家に行ったら携帯をしまってください。

彼らの話に耳を傾け、笑顔を見せてください。

あなたが大好きな父方のじいちゃんは、５年経つと会えなくなります。

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とても敏感なあなたは今、些細なことに傷つき、ストレスを溜め、頻繁に体調を崩し、「こんな自分が大人になって大丈夫なのか」と不安になっていますね。

あなたの不安は的中します。

あなたは大学でも、社会人になってからも、基本はストレスに弱いまま。

ちょっとした心無い言葉に傷付き、嫌だった瞬間を何度も思い出しては自己嫌悪に陥り、何度も体調を崩します。

でも大丈夫。

あなたは社会人になってから、読書が好きになります。

本があなたに、数え切れないほどの学びと気付きを与えてくれ、少しずつあなたは自分に合った生活の仕方や、ストレスの対処法を学んでいきます。

自分の敏感さや体調への影響の出やすさを理由にして、「なんで自分だけ」と可哀想な自分に浸るのはやめましょう。

あなたはたくさんの時間を無駄にしたうえで、ようやく自分を哀れむことに意味がないことを学びます。

そして、あなたは「おばさん」だと思うかもしれませんが、30代になってから、あなたの人生はぐっと楽しく生きやすくなります。

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あなたは今、自分の死に対して、漠然とした恐怖と不安を感じていますね。

それはずっと変わりません。

32歳のあなたは幸運なことに生きていますが、その後どうなるかは誰にもわかりません。

ですが「起こっていないことを心配しても意味がない」ということを、あなたは少しずつ学びます。

１日１日、後悔のないように生きてください。

目の前にいる友達を、家族を大切にして、目の前にある小さな幸せを見逃さないでください。

あなたはまだ知りませんが、今通っている高校の同級生からも２人、10年以上の長い付き合いになる貴重な友人を得ます。仕事でも関わりが生まれ、大変な時はお互い励まし合いながら一緒に頑張れる、そんな良い友人関係に恵まれます。

楽しみにしていてくださいね。

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最後に。

あなたは今、大人になったら人間的にも成長して、色々なことが劇的に変わると思っています。

あなたの中身は、基本的に全然変わりません。

たとえば、あなたが小さい頃から大好きだったRPG。30歳を過ぎたあなたもプレイしています。

消耗しやすいのに好奇心旺盛なあなたは、おかまいなしに夢を見て、周囲が無謀だと言うことに何度も挑戦しようとします。

あなたが今思い浮かべる「理想の人生プラン」のほとんどは、起こりません。

起こるのは予想外のことばかり。

あなたの人生は、世間で良いとされがちなレールからよくはずれます。

でもね。なんとかなります。

あなたの長所は、挑戦を続けるところ。

そしてあなたの最大の長所は、失敗から学べるところ。

あなたは数え切れない数の失敗を繰り返し、中にはとても大きなものがあります。

ただ、そういった失敗こそが、未来のあなたをより良い人間にしていく糧になるんです。

頑張っているけど敏感で、傷つきやすい18歳の私へ。

大丈夫。どうかそのまま無謀な挑戦を続けてください。

そしてどうか、失敗を恐れないでください。

32歳の私より愛をこめて