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理由がわかる好きな感触

好きな感触を探ろうと思った時に無意識に「感触というのは自分の皮膚で実際に触れて感じる感覚だ」と思っていたんですが

この本の中で「皿を洗うために皿を洗う」という言葉が出てきました。

この本は瞑想入門というタイトルの通り、目的別の瞑想や、瞑想するときのコツのようなものがいろいろ書かれています。
その中で「皿を洗うために皿を洗う」という言葉は、1つ1つの日常の作業もその事だけに集中して行う事は瞑想している事と同じだ、という話の中で書かれていたものでした。

この話を読んだ時に”作業”と言われるものも五感を使って感じるものだよなぁとなんとなく思っていた時に「そういえばあの作業好きだな」と思い出した事がありました。

それは、0.38mmのインクペンでペライチの紙に文字を書く事です。
その紙が格子柄の紙なら尚更最高です。

0.38のインクペンの少しガリガリした振動が手に伝わるのが好きです。
だから別に文字じゃなくてもいいんです。試し書きのようなグルグル線でも。
そして、これはなんで好きになったかは理由があります。

建築の専門学校に通っていた時に手で図面を描く授業がありました。割と手で書くのは好きで、そのあとの卒業設計も実際に大工さんに渡したら建ててもらえるレベルの図面を描く、というゼミを選んでひたすら手書きの図面を書いていました。

もちろん、最初はシャーペンで描きます。
その後に消えないようにペン入れをするんです。
細かく複雑に図が書かれている所に対して0.5mmのペンは太すぎて図が潰れるんです。
じゃぁ細ければいいのか、という事で0.3mmのペンを使うとインクが出ないんです。
新品なのにかすれてしか書けない。
恐らく鉛筆がインクを弾いてるんでしょうね。
とにかく出が悪い。
という事で間をとって0.38です。
卒業設計の最終仕上げのペン入れの作業は今まで考えながら、計算しながらやって書いていた時とは違ってただ、その通りにあとぐるだけです。

(今気になって”あとぐる”って検索したらめちゃくちゃ方言だった。びっくり。標準語では”なぞる”でした。でも違和感がすごい)

無で自分の一度書いた図面をガリガリと振動を感じながらあとぐっていく。
たまに文字のミスとか、あやふやな線も見つけながら、それを修正しつつガリガリ書いていく。
図面に使う紙はA2の少し厚めの紙で、そういえば格子のデザインでした。

図面を書くのが好きだった事を思い出します。
難しいフェーズは終わってただ無心にあとぐればいい、肩の荷が0の状態。その記憶があるからこそ、0.38mmのインクペンで何かを書く振動が心地よく感じるんだろうな、と思います。

前回の記事で上げた好きな感触は、なぜそれが好きかと聞かれても理由はわかりません。
記憶のない幼い時の体験なのか、人間の本能的なものなのか。
でもこの「0.38mmのペンで何かを書く」は唯一、理由がわかる好きな感触です。


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