高岡クラフト巡礼。世にも美しいモノづくりのお話。~高岡銅器・前編~
漆器くにもと 4 代目國本耕太郎さんがご案内のもと参加させていただいた、高岡クラフト見学ツアー。
武蔵川工房さん(高岡漆器「青貝塗」のお話はこちら→高岡漆器・前編/後編」)を後にして、次に向かった先は、モメンタムファクトリーoriiさん。oriiブルーという独自の色が美しい、銅器着色を手掛ける工房です。
そのすてきな製品は以前から存じ上げておりましたが、しかし移動の車中、螺鈿の見学が楽しすぎた私は、だんだん不安になってきました。
『どうしよう…銅器の着色なんて興味わくだろうか?さっきまで興味津々で見学してたのに、急にリアクションが鈍くなったら、國本社長に申し訳なさすぎる…』
曇天のもと、車は寂し気な工場が立ち並ぶ工業地区へどんどん入っていきます。
つのる不安ですっかりブルーになったころ。突如目の前に、周囲から明らかに浮いている、お洒落な建物が出現!
おおー!これがoriiブルーかぁ、綺麗!
写真を撮って中に入ると・・
かわいい子たちがお出迎え!こちら、大寺幸八郎商店オリジナルの「福いのしし」です。なんとも癒されるフォルムの干支飾りですね~♪
金属着色というのは、金属に塗料を塗るのではなくて、このような金属加工品(主に銅器)の表面に化学変化を起こすことで、色や模様を作り出す技術だそうです。
銅器=黒、茶色、緑色、のものと思っていましたが、あれは着色した状態。銅本来の色はピカピカの10円玉と同じ、赤みがかった金色なんですよね。
茶器や花器、お寺の鐘や仏像のほか、公共スペースに飾られるモニュメント(最近ではアニメキャラクターの銅像も人気ですね)など。なんと日本全国の9割以上の銅器が、高岡市で作られているということです。
こういった偉人の像は全国の観光名所で目にするので、生産地がいくつもあるものと思っていました。これからは旅先でしばしば故郷を想うことになりそうです。
高岡銅器も、高岡漆器と同じく高度な分業制になっており、原型、鋳造、仕上げ、着色、彫金、といったさまざまな加工技術をもつ工房があります。この体制が長年技術力の向上を支えてきました。しかし、銅像や香炉といった美術品の生産は1990年頃をピークに減少していきます。
全国の観光町おこしブームが終わり、昭和の応接室を飾った重厚な灰皿や花瓶も、モダンで明るいインテリアに似合わなくなったのですね・・・
金属美術品に欠かせなかった着色の仕事も、この時期から一気に減ってしまいました。
そこで折井社長は金属着色技術を活かした新しい製品として「インテリア建材」に着目し、薄い金属パネルにさまざまな色と模様を現す技術を開発されたそうです。
味わい深い美しさがあり、かつ耐久性に優れた高岡銅器の建築資材は、同社の看板商品として話題を集めています。
社長の流れるようなお話をフムフムと聞いておりますと・・・「それじゃあ、話ばかりじゃつまらないんで、実際にやってみましょうか」と、小さな銅板を渡されました。やったー!製作できるとは!
写真右下がピカピカの銅板、甕からは怪しい匂いがしてきます・・・
この赤く光る銅板が、青や緑や黒になるのですから、不思議です。
高岡市では平成18年から「ものづくり・デザイン科」という独自の必修教科を、市立小中学校で実施しています。折井社長も長年講師として授業を担当していらっしゃるそうで、本当にお話しが上手でわかりやすかったです!
『興味なかったらどうしよう…』なんて全く無用な心配でした(笑)
次回、めくるめく着色体験記につづきます。
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