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《小説》ひなねこ 共同戦線をはじめました《序曲》4

 その日、佐々木陽菜は会社の帰りにある物を買って帰った。

 それは・・・。

 あの日、家の中にいた猫。
 そして急に姿が消えた猫。
 自分の認識が間違っていたのかと悩んだ毎日。
 この1週間、モヤモヤして過ごしたそれらを解消するためのものだ。
「よっし!やるど~!!」
 と気合を入れて陽菜は両手の荷物をしっかりと握りしめた。

「ただいまー。」
 誰もいない部屋とはわかっているが、つい言ってしまう。
 1DKのいつもの部屋。
 今日も変わりはない・・・と思っていたが、会社の同僚が気が付いた足跡をそっとチェックする。
「やっぱり・・・。」
 何もないと思う部屋には猫の足跡が残っていた。

 フフフフフ・・・・・・。

 幽霊が足跡を残すとは思えない。
 では、なぜあの猫は姿が消えたのか。
 そして、あの猫はまだこの部屋に生息しているのか。
 この何とも言えない気持ち悪さを解消するためにも、陽菜は早速作戦を開始することにした。
 

 買ってきた「ある物」を隠れて見えにくいところや、部屋の四隅にセットすると、何もなかったようなふりをしてみる。
 まず、いつものように夕ご飯の準備を始めた。
 今日のメニューは親子丼。
 時間がかからずに簡単に作れるし、陽菜の好物だからだ。
 鶏肉は、カロリーを考えて胸肉を使う。
 千切りにした玉ねぎを炒め、鶏肉を入れるとだし醤油を入れて煮込む。
 卵は2回に分けて入れ、フワトロになるように火を入れた。
 レンジでチンしたパックご飯の上に、それをのせると
「いい感じ。」
 その出来栄えに満足そうに呟いた。

 夕ご飯を済ませると、いつものようにテレビをつけながらスマホを見る。
 友達のSNSや流れて来る動画を見ながら、いつもの日常を過ごしているように見せているのだが、本当は気になって仕方がない。
 だらだらしているように見せながらも、さり気に目線は部屋を探っていた。
 今は我慢どき・・・・。
 そう言い聞かせながら3時間近くが過ぎた頃。
 

 その時は突然来た。

 ソファーから少し離れたところに置いた「ある物」が動いた。

 そして、ずるずると引きずるような動きを見せる。
 だが、動いているだけで姿はない。

 やっぱり幽霊!?

 声を上げそうになるのを必死に抑えて、息を詰める。
 そしてタイミングを計る。

 陽菜は近くにあったソファーのシーツを手繰り寄せると、ゆっくりと覆いかぶせるように飛びついた。
「捕まえた!」
 そこには確かに何かの塊があった。
 シーツの中で激しく動くそれを、逃がさないように押さえつける。
「観念して姿を現しなさい、幽霊!」
 そう叫んでもまだ動き回るそれを、シーツでぐるぐる巻きにして動けないようにする。

 格闘する事十数分。

 疲れたのか、あきらめたのか、シーツの中のものが動かなくなった。
 でも、確かに陽菜の手には何かの形を感じている。
 それは確かだ。

 陽菜はしっかりとそれを捕まえながら、シーツをゆっくりとめくってみる。

 そこには何もなかった・・・。
 えっ、なんで?

 と思ったとき、突然そこに猫の姿が現れた。

 それはあの時見た猫だ。

 足元に陽菜のしかけた、超強力粘着力を売りとした「ゴキブリホイホイ」をつけた猫が。

 吸い込まれるようなブルーの瞳をした猫は情けない顔をして陽菜を見つめていた。

 お読みいただきありがとうございました!
 
 まだ、少し続けていく予定なので次回もまた読んで頂けたら嬉しく思います。 

 

 

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