ひな子の恨み。|彦星誘拐 #毎週ショートショートnote
闇サイトを見て集まった女たちの熱気で、川べりの倉庫の窓はじっとりと曇っていた。
ここまで多くの女が集まると思っていなかったひな子は、この人たちをまとめることができるのだろうかと不安になっていた。
しかしもうやるしかない。
何度も何度も法改正を訴えた。
しかしなにも変わらなかった。
この法律に踊らされるのはもう沢山だと思っていたのはひな子だけではなかったのだ。
2024年7月7日に施行された通称“七夕法案”は、付き合って3ヶ月目のカップルの逢瀬を半年間禁止するものだった。
どこだかの学者が発表した実験結果が世の中を変えた。
その実験は、付き合って3ヶ月の熱々カップルを引き離し、離れ離れになってもまだお互いを好きでい続けられるか、試すものだった。
そのまま別れる者が多い中、離れていてもお互いを好きでいられた者たちは生涯の伴侶となった。
最初はテレビのリアリティーショーで面白半分に実験されていたが、生涯の伴侶を見つける効果的な方法として、瞬く間に世の中の常識となっていった。
しかし、1番盛り上がっているカップルが離れ離れになるのは難しく、様々なトラブルがおきた。
そこで2024年7月7日、細かい規定とともに“七夕法案”が可決され、付き合って3ヶ月のカップルは、逢うことはもちろん、電話やメールなども禁止されたのだ。
この法案によって愛を壊された女たちの恨みをひとつにまとめてぶつけてやろうと、ひな子が思い立つくらいには充分時間がたった。
「いくぞー!!!」
逢瀬を禁じられ、3ヶ月カップル男子寮に詰め込まれた男たちの救出へと、女達は怒号をあげた。
後にこのことは通称“彦星誘拐”事件として、大きく世の中を賑わせた。
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