それでも少しの間なら、六月の冷たい風がほしくなる|エッセイ
もう6月に入るというのに、お風呂上がりの火照った体をしずめようと窓を開けると、すすうと冷えた風がわたしの周りを取り囲んだ。
いつもなら夏の匂いが鼻をくすぐる季節なのに、とにかく今年は寒い。
寒いのと暑いのなら暑い方を選ぶ人間なのに、こうして一年の半分以上を冬の国に戻ってきてしまった。
ゆらゆら揺れるほんものの蜃気楼や、ふきでる汗を抑えるハンカチを忘れて外へ出た時の後悔など、北国では経験できない東京の暑さを思い出しながら、カタカタと窓を閉じて、温もりを閉じ込める。
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