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ストロベリームーンの上澄。それの反対。|ショートショート


どうにでもなれ。なんて本当に思っているわけじゃないんだけど、ただ思ったよりしっかり押し寄せてくる年齢の波とか、夏とか、バランスとか、ミスとか、やる気のなさとか、そういったものがパンパンに膨れて私の上にのしかかる。

「だからさ、もうすこし息をしなよ。」

いつものバーにいくと、カウンターの向こう側にはノンキを絵に描いたような男、ナギサが長い髪をお団子にまとめながら、にこにこと話しかけてきた。

バーに居るロン毛のイケメンの言うことなんか聞くもんかと、目だけで威嚇すると、そんなこと慣れっことばかりに、カクテルグラスに真っ赤な飲み物をついてくれた。

「6月の満月はストロベリームーンなんだよ。」

「私ビール以外飲まないけど。」

まぁそう言わずに、と勧められるままに口をつけるとフレッシュで、キリッと酸味のあるイチゴの香りが口の中に広がる。

「ストロベリー•マティーニ。甘くないイチゴだから君でもいけるでしょ?」

少しのお酒と、酸っぱいイチゴと、イケメンバーテンダー。

これでなんとか6月を生きぬける。

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稲橋 閃
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