あいちトリエンナーレ 有識者見解③憲法学者92名
憲法学者92名が、あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」の展示中止を受け、抗議声明を出しています。
憲法学者が揃って声明を出すなど、普通ではない事態ですね。何が起こっているのでしょう。
声明の内容
...8月2日に現地を視察した河村名古屋市長は「日本国民の心を踏みにじるもの」などと発言して企画展の中止を求めました。8月2日、菅官房長官もあいちトリエンナーレが文化庁の助成事業であることに言及したうえで、「補助金交付の決定にあたっては事実関係を確認、精査したうえで適切に対応していく」などと発言しました。
わたしたちは、河村市長と菅官房長官の言動は民主主義国家における「表現の自由」の重要性について全く理解を欠いたものであると考えます。 (中略)このようなことが許されれば誰も権力者を批判することができなくなり、その結果、わたしたちは権力者を批判する表現を受け取ることが不可能になるでしょう。これはとても息苦しい社会です。
憲法21条で保障された表現の自由は、様々な考えの人の存在を前提としている民主主義社会にとって不可欠なものです。自分が気に入らないという以外に特別な理由なく展示の撤回を求めた河村市長と菅官房長官の言動は、憲法21条に反するものであり、強く批判されるべきだと考えます。わたしたちは、河村市長と菅官房長官の言動に対して、断固抗議し、撤回を求めます。
展示に対して「日本国民の心を踏みにじるもの」として中止を求めた河村市長、文化庁の補助金不交付をにおわせた菅官房長官に対して、憲法第21条に反するという抗議ですね。
「憲法21条で保障された表現の自由は、様々な考えの人の存在を前提としている民主主義社会にとって不可欠なものです。」として、この件を民主主義の危機だととらえています。
声明を出している憲法学者
愛敬浩二(名古屋大学)
青井未帆(学習院大学)
浅野宜之(関西大学)
足立英郎(大阪電気通信大学名誉教授)
飯島滋明(名古屋学院大学)
井口秀作(愛媛大学)
石川多加子(金沢大学)
石川裕一郎(聖学院大学)
石塚 迅(山梨大学)
石村 修(専修大学名誉教授)
井田洋子(長崎大学)
市川正人(立命館大学)
伊藤雅康(札幌学院大学)
稲 正樹(元国際基督教大学教員)
井端正幸(沖縄国際大学)
岩本一郎(北星学園大学)
植野妙実子(中央大学名誉教授)
植松健一(立命館大学)
植村勝慶(國學院大學)
浦田一郎(一橋大学名誉教授)
浦田賢治(早稲田大学名誉教授)
榎澤幸広(名古屋学院大学)
江原勝行(早稲田大学)
大内憲昭(関東学院大学)
大久保史郎(立命館大学名誉教授)
大野友也(鹿児島大学)
岡田健一郎(高知大学)
岡田信弘(北海学園大学教授・北海道大学名誉教授)
奥野恒久(龍谷大学)
小栗 実(鹿児島大学名誉教授)
小沢隆一(東京慈恵会医科大学)
押久保倫夫(東海大学)
上脇博之(神戸学院大学)
彼谷 環(富山国際大学)
河上暁弘(広島市立大学広島平和研究所)
菊地 洋(岩手大学)
北川善英(横浜国立大学名誉教授)
木下智史(関西大学)
清末愛砂(室蘭工業大学)
清田雄治(愛知教育大学特別教授)
倉田原志(立命館大学)
倉持孝司(南山大学)
小林 武(沖縄大学客員教授)
小林直樹(姫路獨協大学)
小松 浩(立命館大学)
斉藤小百合(恵泉女学園大学)
笹沼弘志(静岡大学)
佐藤信行(中央大学)
志田陽子(武蔵野美術大学)
清水雅彦(日本体育大学)
鈴木眞澄(龍谷大学名誉教授)
芹沢 斉(青山学院大学名誉教授)
髙佐智美(青山学院大学)
高橋利安(広島修道大学)
高橋 洋(愛知学院大学)
竹内俊子(広島修道大学名誉教授)
竹森正孝(岐阜大学名誉教授)
田島泰彦(元上智大学教員)
多田一路(立命館大学)
建石真公子(法政大学)
千國亮介(岩手県立大学)
塚田哲之(神戸学院大学)
土屋仁美(金沢星陵大学)
長岡 徹(関西学院大学)
中川 律(埼玉大学)
中里見 博(大阪電気通信大学)
中島茂樹(立命館大学名誉教授)
中村安菜(日本女子体育大学)
永山茂樹(東海大学)
成澤孝人(信州大学)
成嶋 隆(新潟大学名誉教授)
丹羽 徹(龍谷大学)
根森 健(東亜大学大学院特任教授)
畑尻 剛(中央大学)
福嶋敏明(神戸学院大学)
藤井正希(群馬大学)
藤野美都子(福島県立医科大学)
古川 純(専修大学名誉教授)
前原清隆(元日本福祉大学教員)
松原幸恵(山口大学)
宮井清暢(富山大学)
三宅裕一郎(日本福祉大学)
三輪 隆(元埼玉大学教員)
村田尚紀(関西大学)
本 秀紀(名古屋大学)
森 英樹(名古屋大学名誉教授)
山内敏弘(一橋大学名誉教授)
横尾日出雄(中京大学)
吉田栄司(関西大学)
若尾典子(元佛教大学教員)
脇田吉隆(神戸学院大学)
和田 進(神戸大学名誉教授)
報道はどうだったか
日刊ゲンダイ、朝日新聞で当時のことが取り上げられています。
河村市長の反応は
憲法学者、弁護士会などからの指摘に、怒りで反応しているようです。。
展示作品についての意見は様々あろうかと思いますが、たとえ不快であったり誰かが気に入らない作品であったとしても、法に触れない限りは、公権力が、この作品はいい、この作品はダメ、をしてはならない、というのが、法の考えです。憲法学者の声明も、この原則に沿っています。
この原則を守ったのが知事であり、この原則を破っているのが市長です。
作品内容を理由に展示の中止や補助金の不払いを行うことは、公権力による作品への介入になるということですね。
市長は、日本を前時代に戻そうとしているのでしょうか。市長の立場ならば、憲法学者などから指摘があれば、自身の行動に非があるのか一旦は振り返ってみてほしいものです。。。
(参考)憲法第21条
第二十一条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。