あいトリ 問題?作品⑤「気合100連発」
あいちトリエンナーレ2019の一企画「表現の不自由展・その後」に展示された作品の一つ、「気合100連発」で発せられる言葉の中の「放射能最高!」という言葉が、日本侮辱・被災地(福島)侮辱・反日だとして批判の的になっているようです。
一体どんな作品だったのでしょうか。
作品概要
「表現の不自由展」のサイトは現在は閉じており、展示当時の作品説明を見ることができません。
あいちトリエンナーレ2019芸術監督の津田氏の説明によると、以下のような作品です。
・作品制作時期は2011年5月
・現地にボランティアとして入ったChim↑Pom(制作者)と福島県相馬市の若者たちが円陣を組みカメラに向かって「気合い」の言葉を100発叫ぶ共同制作の映像作品
・福島県相馬市は東日本大震災の被災地で、家を流され、大事な人を失った住民らは、恐怖のなか壊滅した街で約2ヶ月間を過ごしていた
・被災者でありながら、自ら救援活動や復興作業にずっと携わってきた彼らによる叫びはリアルで、すべてアドリブ、一発撮りで収録
・復旧作業も進まず、原発事故や放射性物質の拡散の影響がまだ未知数だった震災2カ月後に叫ばれた当事者自身による言葉は、原発事故の被害者たちによる「不安を断ち切るための叫び」のようだと感想を述べる人もいるほど
実際の音声
作品の一部に「放射能最高!」と叫ぶ場面がありそれだけが切り取られて批判されているようです。
しかしそれは作品の前後の文脈を無視したごくごく一部です。
作品全編の音声は、作家Chim↑Pomさんが出演したラジオの音声で公開されています。https://www.tbsradio.jp/418202
検閲になった過去
・中国では「日本最高!」という言葉が検閲にかかりNGに
・日本の国際交流基金が支援するバングラディシュの「アジア・アートビエンナーレ」では、福島と放射能がNGワードとなり公開が取りやめ
作品を見た人の作品評
「『放射能最高』という言葉を、なぜ彼らはあえて叫んだのか。津波に襲われ壊滅した街で、原発事故が起きて、警戒区域に指定されたエリアの横で、不安の中で生きないといけなかった。そんな一人の若者たちが、なぜこう叫んだのか。その想像力を持ってほしい」
「絶望の淵に立たされた彼らの口から出た、生きていこうとするための切実な言葉なんです。それを消したくなかった。すべてを尊重したかった。だから1回しか、撮影もしませんでした」
私自身動画全10分超を見ることができました。
津波のがれきが残り何をどうしたらいいのかもわからないような状況の中、極限状態を乗り越えようと自分たちを鼓舞する言葉の連続に、胸が熱くなりました。
一方でこの作品が他の芸術祭で出展が取りやめになった理由も理解できます。言葉がショッキングだと感じる方への配慮が必要になることもあるからです。
「表現の不自由展」では、映像が展示されましたが、オリジナルバージョンと、国際交流基金がNGとした部分を「ピー音」としたバージョンを並べて、どこが検閲の対象になったか分かるようになっていたようです。
他の美術館でも所蔵
東京国立近代美術館、森美術館で所蔵されているようです。
普通に考えて、他者を侮辱する目的の作品なら、他の美術館で所蔵されたりしませんよね。
それだけの評価のある作品と言っていいと思います。
まとめ
作品は誰かを侮辱したものではなく、自分たちを鼓舞するためのものであることが分かりました。
この作品に限りませんが、一部だけを切り取って評価するのではなく、全体を見て評価することが何より大事ですね。