去年(こぞ)の春
一昨年の今頃の出来事。2021年3月のタウン誌「深川」に連載エッセイとして掲載しました。
去年(こぞ)の春
去年、ちょうど河津桜が満開の頃、私は木場公園の近くであなたたちに会いました。びっくりしたでしょうが、私から声をかけ撮らせていただきました。
あの時はまだみなさんは中学生。近所の幼馴染どうし。もうすぐ別々の高校に進学するとのことでしたね。桜の明るく鮮やかな色にも負けない笑顔が印象的でした。 孫のような歳のみなさんにカメラを向けるのはなかなか難しいものですが、傍らでお母さんがプロカメラマンさながら撮っていましたから、私に対抗意識が出てきたのかもしれません。多分、この写真よりお母さんが撮った写真の方がもっともっと生き生きと写っているでしょう。そこにはよき季節と成長することへの喜びがしっかり共有されているからだと思います。
さて、あれから1年。私は約束通りこの写真をここに掲載させていただきました。みなさんは高校2年生になろうとしています。私も一つ歳をとりました。時の経つのは意外に早いですね。しかし、この間、私たちの世界は「新型コロナウイルス」に覆い尽されてしまいました。長い時間、私たちは困難を強いられています。これからもまだ少し続くでしょう。青春の真っ只中にいるみなさんは「こんなことがなければ」などと思っていないですか? その気持ちもわかりますが、みなさんの溌剌とした若さは全く変わらないものであること。そして十分に未来は広がっているということ。みなさんが本来持っている個々の可能性は「コロナ」などに束縛されないものです。そのためには健康に留意し、前を向いて着実に歩いて欲しいと思います。この笑顔に出会った写真家の小さな願いです。
今年もみなさんはここに集うのではないでしょうか。 写真とともに万葉集にある歌を贈ります。
去年の春逢へりし君に恋ひにてし桜の花は迎へけらしも