豪華客船鍼灸師として働く上で欠かせないスキル
私も豪華客船鍼灸師になりたいです。
最近、様々な方からそのような声をかけていただく機会が増えてきました。
noteのメンバーシップ(CRUISE COMPASS)に参加してくださっている方の中にも、同じように考えて情報収集されている方がいらっしゃると思います。
今回は、そんな鍼灸師の皆さまへ向けて、実際に船上で働いた経験から感じた、豪華客船鍼灸師として欠かせないスキルについてまとめてみたいと思います。この情報が、皆さまのキャリアプランニングの一助となれば幸いです。
英語力:会話能力だけでは全く不十分
豪華客船鍼灸師になるうえで、最も基本的かつ重要なスキルが英語力です。しかしながら、単に英会話ができるだけでは全く足りません。なぜなら、クルーズ客船で働くクルーのほとんどがしっかりと英語を話せるからです。
重要なのは、英語で「何を」話せるかです。これは日本で働く場合でも同じことが言えます。鍼灸師として、何を話せるかが極めて重要なのです。
東洋医学のプロフェッショナルとして、患者に対して専門的な説明ができることが求められます。さらに、相手に信頼されるような振る舞いや会話ができることも重要です。これらのスキルは、単なる英会話能力だけでは身につきません。
私は現在、Therapist Englishという、セラピストに特化した英会話レッスンの講師として、鍼灸師の方々向けに英語のレッスンを行っています。生徒さんたちと話をしていて強く感じるのは、英語で話せる内容は、本人が日本語で知っている知識の範囲内に限られるということです。つまり、そもそもの知識がなければ、英語でも表現できないのです。
これは当たり前のことかもしれませんが、豪華客船鍼灸師を目指す鍼灸学生や若手鍼灸師の方々に往々にして欠けている部分だと感じています。
もし鍼灸に関する自分の知識や技術に不安がある場合は、英語の勉強に時間を費やす前に、まずは鍼灸の勉強をしっかりと行うことをおすすめします。もちろん、同時進行で学習を進めることも可能ですが、比率としては、まずは一人前の鍼灸師となれるように鍼灸の勉強時間を増やすことが望ましいでしょう。
英語と鍼灸の専門知識、この両方をバランスよく習得することが、豪華客船鍼灸師として成功する鍵となります。
痛み疾患への対応能力:クルーズ客船で最も多い症状
乗船する船によって多少の違いはありますが、クルーズ客船のスパで働いていて最も頻繁に治療する症状は、腰痛、膝痛、肩痛、首痛といった痛み症状です。
基本的には慢性症状の痛みが多いのですが、観光目的で乗船しているゲストの中には、普段あまり歩き慣れていない方が長時間歩いたことでどこかを痛めてしまう、というケースもあります。つまり、急性期や亜急性期の痛み症状を診ることもあるのです。
このような状況に対応するためには、痛み症状の鑑別をしっかりと行える能力が不可欠です。例えば、足首が痛いと訴えて鍼治療を受けに来たゲストに対し、その痛みが筋肉の問題なのか、腱の問題なのか、靭帯の問題なのか、骨の問題なのか、はたまた内臓に関連した痛みや経絡に関連した痛みなのかを鑑別できる必要があります。
運動器症状をあまり治療したことがない鍼灸師の方は、乗船前にしっかりと痛み症状の鑑別と治療ができるようになっておく必要があります。これは非常に重要なポイントです。
特にクルーズ客船スパのビジネスモデルを考えると、いかに頻回に治療を受けに来てもらえるかが売上を上げる鍵となります。そうなると、毎日通う人はどういう人なのかを考える必要があります。
痛みがない人と痛みがある人、どちらが毎日鍼治療に通おうと考えるでしょうか?答えは明白です。だからこそ、痛み疾患をしっかりと鑑別でき、ゲストに納得して毎日通ってもらえるような医療面談ができるようになることが重要なのです。
もし痛み症状への治療や鑑別に自信があまりない場合は、乗船前にしっかりと勉強をしておくことをおすすめします。これは、豪華客船鍼灸師として成功するための重要な準備の一つと言えるでしょう。
私自身は、鍼灸師免許を取得して1年半で乗船しましたが、学生時代からアメフトチームで学生トレーナーとして活動したり、乗船前はアシスタントヘッドトレーナーとしてチームで働いたり、社会人ハンドボールチームの全日本選手権に帯同したりと、痛みの治療に関する経験はすでに豊富でした。そのため、鍼灸師としてのキャリアが短かったにもかかわらず、乗船後も良好な結果を出すことができたのだと思います。
治療時間のマネジメント:ビジネスとしての視点
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