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盆栽は「生きるアート」【盆栽家・佐藤俊文】

2022年8月5日から香川県三豊市の三豊鶴で実施される「酒蔵Art Restaurant」
150年前に作られた歴史ある酒蔵の中に、現代アーティスト24名による作品が展示・販売されるほか、シェフ8名が週ごとにコース料理を振る舞います。

今回は、8月5日(金)・7日(日)と、それ以降毎週金曜日に在廊する盆栽家、佐藤俊文(さとうとしふみ)さんをご紹介します!

プロフィール

1989年埼玉県さいたま市生まれ
香川県高松市在住

福祉系の大学を卒業後、社会福祉士として6年半福祉施設で相談員として従事する。2018年に兼ねてより魅力を感じていた盆栽への情熱が抑えられず、仕事を辞め、一念発起して盆栽業界に進み、現在は高松市在住の世界的盆栽家、平松浩二の元で修行中。
園芸や日本の文化という認識が一般的な盆栽だが、唯一無二の造形美はまさにアートであり、その樹の持つ生命力やポテンシャルを如何に引き出すかということが、盆栽家として大事にしていることの一つ。今回の制作では特に「アートとしての盆栽」を感じてもらいたい。

社会福祉士から盆栽家への転身

ー大学卒業後、社会福祉士という、アートとは全く異なる分野で働いていた佐藤さん。なぜ盆栽家の道を選んだのですか?

出身が埼玉県の大宮市なんですが、盆栽がすごく盛んな町でして、小さい時から盆栽が身近にありました。ただ、当時はそこまで興味がなく、「有名なんだな〜」というくらい(笑)

大学生くらいの時に、テレビで盆栽を見て、樹の歴史や迫力に圧倒されて、まずは趣味でちょっとやってみようと思って始めてみました。その後、特に何か特別なきっかけがあったわけではないのですが、30歳手前くらいで盆栽熱が出てきて、「このまま盆栽をやらない人生は多分後悔するだろう」と感じたんです。思い切って社会福祉士の仕事を辞めて、この世界に入りました。

盆栽の世界では、「一生勉強」と言われます。趣味の範囲でやっていた時も、「この樹を良くするためにはどうしたらいいんだろう」とずっと考えていて、どっぷりハマったんだと思います。

ー国家資格である社会福祉士の仕事は安定してるかと思いますが、この盆栽の世界に飛び込むことに、恐怖や、ためらいはなかったんですか?

多少は恐怖感はありましたし、周囲の人には笑われました。ですが、やはり「後悔したくない」という思いが強く、「やりたいことを素直に受け入れよう」という感じでこの世界に飛び込みましたね。
最初は埼玉の盆栽園に入り、修行を始めました。

ー埼玉県出身の佐藤さんですが、なぜ香川県に移住されたのですか?

香川県には2019年の瀬戸内国際芸術祭で初めて来ました。その時に、高松市が盆栽で有名なのは知っていたので、高松市の鬼無国分寺エリアの盆栽園を色々回ったところ、周囲の環境や雰囲気が好きだな、と感じたことが一つの理由です。また、尊敬する平松師匠が高松にいらっしゃることもあって、高松で勉強したいと思い、移住を決断しました。

元々自然が好きなので、香川の環境が自分に合っていて、すごく好きだなと感じます。

※香川県高松市の鬼無地区から国分寺地区にかけて、松の盆栽で全国約8割のシェアを占める、盆栽の一大産地として知られている。

ー盆栽は「一生勉強」と言われているそうですが、やはり一人前になるにはかなりの時間が必要なんですか?

盆栽は自然の生き物なので、「完成がない」と言われています。如何に樹のポテンシャルを引き出すか、という観点では、ちょっと趣味で齧ったくらいではなかなかうまくいかないんです。奥が深い世界です。

「未完のアート」 とも言われる盆栽

ー盆栽は園芸や日本の文化、というイメージが強いですが、盆栽ってズバリ、アートなんでしょうか?

盆栽界にいる人でも、盆栽を「アート」と捉える人と、そうでない人がいます。自分はどちらかというと「アート」だと思っていて、「唯一無二である」というのが一番しっくりきています。同じものはこの世に一つもないですから。
また、「未完のアート」という観点で言うと、完成形がないので、現時点からの伸びしろの部分にロマンを感じるんです。それが侘び寂びですかね。「未完だからこそ美しい」というところにアートを感じます。

現時点でいいところを表現するのはもちろんなんですが、翌年になったら新しい目が出てきますし、それを剪定したり、針金かけたりしないといけないし、樹がある限りは完成しないんです。

経験豊かな人は、この樹が10年後どうなるか、というのを考えながら手を入れています。急に想像しないところに芽が出て来たり、予測できないところもありますが、大まかな全体像は見えていて、それに沿って作業している感じです。

ー今後どんな盆栽家になりたいかビジョンはありますか?

師匠は日本を代表して世界各地で仕事をしています。いずれ自分もそうなりたいと思っています。

展示コンセプト

ー今回三豊鶴で展示する作品について教えてください。

今回は、「酒蔵苔」という作品を展示します。
酒蔵では、お酒の熟成度合いを図るために杉玉を置いています。これを模した大きな苔玉の作品を作ります。

三豊鶴が酒蔵としての長い歴史を終えて、地域の方達が新たな命を吹き込んだ、というところで、「再出発」のイメージで作品を作りたいと思っています。 

苔玉自体は、やっている人もいるのですが、盆栽界では珍しいものです。ここでしか見れない作品になると思います。

他にも盆栽を展示します。高松市がクロマツが有名なので、クロマツを中心に、三豊鶴に雰囲気にあったようなものを展示します。

ご来場いただく皆様へメッセージ

三豊鶴という建物が素敵な場所で、そこで展示できるということで、自分の作品と、三豊鶴の良さをお互いに引き出せたらいいなと思っています。
盆栽自体も「アート」という視点で見ていただけると、新たな発見や、感じることがあると思うので、楽しんでもらえたら嬉しいです。

三豊鶴「酒蔵Art Restaurant」とは

皆様のお越しをお待ちしております!