見出し画像

クリエータ紹介(7)本田 祐大さん、町野 竜矢さん

このnoteでは、福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称・福岡未踏)のプロジェクト採択者について、プロジェクトの詳細や福岡未踏にかける思いをご紹介します。

今回は、2023年度Solveクリエータ小紫 仁嗣さんのインタビューを基に、Solveコースの本田 祐大さん、町野 竜矢さんのプロジェクトをお伝えします。

プロフィール

  • プロジェクト名:AI上司の山田さん:コーチングで自己成長を促すパートナー

  • 支援プランと期間:Solve(24年9月〜25年1月)

  • クリエータ:本田 祐大(九州大学 工学部 4年)、町野 竜矢(九州大学 工学部 4年)

Q:まずは自己紹介をお願いします。

本田:私は現在、荒川先生の研究グループに所属している九州大学の学生です。もともと工学部6群に所属しており、2年次以降の配属先は未定でしたが、大学1年次のプログラミング授業で情報が直感的に自分に向いていると感じ、情報系に進もうと決意しました。今年度から研究室に所属し、6月に行われた研究室内の合宿で初めてアプリ開発を体験しました。開発経験は乏しかったのですが、React、Node.jsなどを用いた開発に興味を持ち、Udemyの講座を参考に学習を始めました。最初はコードをコピーすることから始め、徐々に理解を深めていきました。最近では、e-ZUKAスマートアプリコンテスト2024に出品するアプリを開発しました。このアプリは、SNSをベースに、生成AIを使ってレスバトルの勝敗判定を行う機能を実装し、個人の勝敗レートを算出して、発言の信頼度を測る指標にしています。SNS利用で不便に感じていた、フォロワー数の多寡で発言の信憑性が左右される状況を改善したいという思いから開発に至りました。このアプリで来年2月福岡県ITスタートアップビジネス大賞2025に進出する予定です。

町野:私も本田君と経歴が似ており、6群から電気情報工学科のCMコースに進み、本田君と同じ研究室に所属しています。本田君とは1年生から3年生の間は顔見知り程度でしたが、4年生で同じ研究室になり親しくなりました。プログラミングは大学入学後に始め、授業でPythonを学びました。最初はあまり興味がありませんでしたが、徐々に面白さに目覚め、今ではプログラミングに熱中しています。3年生までPythonやC++を学び、4年生からはDartやArduinoなど、ハードウェアやセンサー周りの技術を習得し、実際に動くものを作ることに力を入れてきました。最近では、研究室のメンバーと協力して、電子マネーの使いすぎを防ぐシステムを開発し、チャレキャラ2024で優秀賞を受賞しました。このシステムは、アプリで電子マネーの利用履歴を取得し、小型のハードウェアの色や光で使いすぎを知らせることで、支出を抑制します。ハードウェアとアプリの連携による視覚的な効果で、ユーザーに使いすぎを意識させることができます。「チャレキャラ」の開発では、アプリ開発にDartを、ハードウェア制御にArduinoを使用しました。

中間発表会(左:本田さん、右:町野さん)

Q:今回は、Solve課題に取り組まれているようですが、その課題の背景を教えてください。

私たちが開発しているのは「AI上司」というアプリです。これは、課題提供元の株式会社オプトの「1人1人が社長」というユニークな社風から生まれたアイデアです。株式会社オプトでは、社員一人ひとりが自立して活躍することを目指しているのですが、そのためには、自分で目標を設定し、PDCAサイクルを回していく能力が重要になります。しかし、PDCAサイクルを一人で回すのは、なかなか難しいものです。そこで、LLMを活用することで、社員の方々をサポートしていこうというのが、課題の背景となっています。

Q:このアプリは誰のためのどんな機能を持つプロダクトなのでしょうか?

このアプリでは、目標設定、実行、進捗確認、改善というPDCAサイクルを一人で回すことが難しい社員のためのプロダクトです。AIコーチングを通して社員の自己成長を促し、PDCAを自力で回せるような人材を育成します。アプリの主な機能としては、AIによるコーチング機能と、ユーザーが設定したPDCAのダッシュボード表示の二つが挙げられます。AIコーチング機能では、ユーザーが設定した大目標に対して、それを達成するための小目標を設定していく際に、AI上司が「仕事量が多すぎるのではないか?」などと的確なアドバイスを提供します。ただし、AI上司は情報を過剰に与えてしまう可能性があります。このアプリの目的は、ユーザーが自立してPDCAサイクルを回せるようになることなので、LLMが情報を過剰に与えないように、必要最低限の情報のみを与えるように制御することが重要になります。これは、開発における大きな課題の一つとなっています。このアプリは、主に社員向けのプロダクトとして開発されていますが、根本的な部分は様々な分野に応用可能だと考えています。例えば、研究の進捗管理や卒論作成のスケジュール管理、ダイエットのコーチングなど、幅広い分野への応用が期待されます。

中間発表ポスターセッションの様子

Q:プロジェクトの体制はどのようになっているのでしょうか?

プロジェクト体制は、PM兼メンターとして株式会社オプトの岩本さん、メンターとして株式会社オプトの社員3名に支援いただいています。毎週ミーティングを行い、次のミーティングまでのマイルストーンを設定して進めています。作業分担は、本田が実装を担当し、町野がコーチング方法の理論的な部分を担当する場合と、2人で同じ作業に取り組む場合があります。コーチング方法の理論的な部分については、本、ネットで調べたことをメンターさんに「コーチングとはこういうものですか?」と確認し、「こういうものではないのではないか」,「アドバイスを直接渡すのではなく、自発的に誘導した方が良いのではないか」などのフィードバックを受けたりしながら勉強しています。

Q:今回福岡未踏に応募した理由をお二人それぞれ教えてください。

本田:私は、福岡未踏以前の開発経験は研究室内の開発合宿や個人的な開発などばかりでした。福岡未踏Solveのように企業の方から技術的なアドバイスをいただける機会は貴重だと考え、自分たちの技術が社会でどの程度通用するのか挑戦したく、町野君を誘って応募しました。

町野:昨年、研究室の別の友人である島村君が福岡未踏に参加しており、忙しそうながらも楽しそうだったのが印象的でした。本田君に誘われ、LLMの技術に興味があったため、今回参加することにしました。

中間発表 ポスターセッションの様子

Q:最後に、福岡未踏終了後の夢や目標について教えてください。

私達は、IPA未踏に採択されることを目標としています。今回はSolveの課題に取り組んでいますが、IPA未踏では自分でアイデアを出し、実装することで、面白いものを作成したいと考えています。現在は、応募に向けてプロトタイプを作成しているところです。
もう1つの目標は、社会実装です。これまでアプリ開発コンテスト向けのアプリなどローカルで動かすものを作成することが多かったため、今後は社会実装(Deploy)に挑戦していきたいと考えています。

福岡未踏とは

福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称、福岡未踏)とは、福岡県在住の若手クリエータを発掘・育成し、クリエータの「何かを作るための第一歩」を支援し、また、IPA未踏と同等の支援に加え、複数のIPA未踏経験者からなるPM・メンター陣にて、プレ人材向けの支援を行います。

(文:小紫仁嗣)