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クリエータ紹介(3) 相浦 航さん、中山 陽さん

このnoteでは、福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称・福岡未踏)のプロジェクト採択者について、プロジェクトの詳細や福岡未踏にかける思いをご紹介します。

今回は、西田健PMのインタビューを基に、Solveコースの相浦航さん、中山 陽さんのプロジェクトをお伝えします。

プロフィール

  • プロジェクト名:緊張体験VRアプリ heart VeateR (ハートビーター)

  • 支援プランと期間:Jump(24年9月〜25年1月)

  • クリエータ:相浦 航(九州大学 大学院 システム情報科学府 修士1年)中山 陽(九州大学 大学院 システム情報科学府 修士1年)

Q:プロジェクトの概要を教えてください。

相浦:スポーツ競技や大勢の前での発表の場面では「緊張」で本来の力を発揮できなくなってしまうことがあります。緊張を疑似体験して,その時に自分の体がどのように反応するのかを自覚することができれば,本当に緊張した時にパニックにならないで済むと思っています。また「緊張」を発生させる要素やメカニズムについて研究することができればと考えています。

中山:そこで「緊張感」を疑似体験できるVRアプリを作成しました。ヘッドマウントディスプレイを被ると,バスケットボールのパスや積み木を題材にした「緊張する場面」を体験できます。呼吸を徐々に早くするような指示が出たり,視覚や聴覚に訴えかける様々なエフェクトにより,徐々に緊張状態に誘導されていきます。

ブースト合宿の発表の様子

Q:プロジェクトに取り組もうと考えた理由を教えてください。

相浦:小学生の頃に,大きなサッカーの試合で,緊張のあまり思うようなプレーができず泣き出してしまったことがありました。高校でやっていた水球でも同じような思いをしたことがあります。また, Unityを活用したコンテンツ制作が得意で,ゲームを制作してApp Storeでリリースした経験や高校で使用するVR教育アプリを制作した経験があります。

中山:私は人前で発表する時にとても緊張します。「緊張」は,本来ならできることができなくなってしまうつらい体験です。緊張で自分の体がどのように変化するのかを事前に体験できれば,対応することができるようになるのではないかと考えました。また, 心拍などの生体情報を活用したアプリ制作の経験があり,現在はスポーツに関する研究をしています。研究とスキルを利用して,緊張の克服に取り組みたいと考えました。

中間発表でのデモ体験

Q:プロジェクトの中で特に難しいと感じたことは何ですか?

相浦:先行研究の調査が大変でした。論文をたくさん調べたのですが,緊張を緩和するための「リラックス」に関するものばかり見つかり,「緊張させる」という研究や論文はほとんど見つからなかったので, 自分たちで試行錯誤を繰り返しました。

中山:「緊張」は「不安」や「恐怖」と同じような心理状況で生体反応も似ています。このような恐怖を緊張に活かせるのではと考えたのですが, 汎用性の面やユーザーに不快感を与えてしまうということを考慮し, 断念することになりました。

相浦:参考になる研究がなかなか見つからなかったため「緊張」を発生させる仮説や,そこに誘導するための様々なエフェクトを独自に開発しました。呼吸を早く誘導するための仕掛け,緊張状態での視覚が狭くなるトンネルビジョンの再現,心音と連動したエフェクトなど,様々な工夫を組み込みました。
また,できるだけ多くの人からフィードバックを頂くための取り組みも実施しました。学会でも発表して,よい評判を得ることができました。

学会「WISS2024」での発表の様子

Q:福岡未踏終了後の夢や目標を教えてください。

相浦:VRを使ったオリジナルの新しいアイデアで,IPA未踏での採択を目標に頑張っています。

中山:福岡未踏のテーマは現在の研究テーマと重なる部分があるので,ここで得た知識を自身の研究に最大限活用し,研究成果の質をさらに高めたいと考えています。

福岡未踏とは

福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称、福岡未踏)とは、福岡県在住の若手クリエータを発掘・育成し、クリエータの「何かを作るための第一歩」を支援し、また、IPA未踏と同等の支援に加え、複数のIPA未踏経験者からなるPM・メンター陣にて、プレ人材向けの支援を行います。

(文:西田 健 PM)