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「長崎歳時記手帖」 第6回 年越しに向けて ~餅つき、鏡餅、幸木~

季節感を深呼吸!
いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」

第6回 年越しに向けて ~餅つき、鏡餅、幸木~

 いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で生まれた「絵」と「文」ふたつの歳時記を中心に、一年かけてご紹介していきます。今回は、年越し準備の様子と、鏡餅や幸木(さいわいぎ)などの飾りものを見ていきます。

 「絵」は、町絵師で出島出入り絵師の川原慶賀が描いた「長崎歳時記」のシリーズで、原則として長崎歴史文化博物館のウェブサイト内にある「川原慶賀が見た江戸時代の日本(I)」からの引用でご紹介します。


「文」は、長崎の地役人であり、国学者でもあったという野口文龍による「長崎歳時記」。元旦から大晦日までの年中行事やならわしが、細かく記されています。
 ふたつの「長崎歳時記」をまとめた拙著「川原慶賀の『日本』画帳」をお手元に置いていただくのも、おすすめです!


餅つき

お正月といえば、いまもお餅は欠かせません。スーパーには、11月の上旬ごろから現れるようになりました。消費促進のためではあるのでしょうが、それでも、江戸時代顔負けの現代の季節感覚の先取りっぷりには、びっくりしてしまいます。
江戸時代のお餅は、もちろんスーパーで買ってくる、ということはなく、十二月の二十二、二十三日ごろからついていたようです。野口文龍さんの「長崎歳時記」より。

 二十二日、二十三日ごろより、二十七、八日まで、家々では「年の餅」といって餅をつきます。神棚、恵方棚、仏壇などの鏡餅のほか、門松の餅、幸木の餅、臼の餅、家財道具の鏡餅すべてを作ります。また、出入りの大工さんがいれば、新たに恵方棚を作り、春を迎える用意をします。

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