【2期生紹介①】岩手発の屋外用ロボットで目指すイノベーション
この投稿からは、2024年度のMiTOHOKU Programに採択された2期生6組の紹介をしていきます。
1人目は、岩手県立大学ソフトウェア情報学研究科の田尻隼人さん。大学3年生の時に合同会社を立ち上げ、屋外用ロボットの制作に取り組み、新たな開発アイデアを得るためにMiTOHOKU Programに応募しました。
〇プロフィール
田尻隼人さん
岩手県立大学ソフトウェア情報学研究科 修士2年
滝沢ロボティクス合同会社 代表社員
学部時代から次々とプロジェクトを実現
兵庫県出身の田尻さんがロボット開発を始めたのは高校時代。部活動でサッカーロボットを作って対戦させる「ロボカップ」という大会に向けてロボットを作り始めたのがきっかけです。当時は主に電気回路系を担当していて、次はプログラミングなどのソフトウェアをやりたいということで選んだのが岩手県立大学のソフトウェア情報学部でした。東北とは縁がなかったのですが、「ソフトウェア情報」という学部名と、全く違った環境で「開拓者」のように新しい挑戦ができるのではないか、と感じて岩手にやってきました。
入学後は授業に出席してアルバイトをして、という「普通の」学生生活を送っていた田尻さんですが、何か新しいチャレンジをしたいと考えていた時に、学生主体の活動に大学が補助金を出してくれることを知ります。そこで自分の得意なことを活かし、興味があったロボット関連でできそうなこととして「子供たち向けのロボット教室」をはじめようと考えます。
子どもたちにロボット作りを教えてロボットが作れる仲間を増やそうと、大学2年生の時にNPO法人「IRCプロジェクト」を設立。プログラミングや3D-CADを小・中・高校生に教え、受講した子供たちは田尻さんが高校時代に出場した「ロボカップ」への出場を果たしました。さらに、盛岡駅西口にある岩手県の施設「アイーナ」にあるデジタルものづくりスペース「ファブテラスいわて」の運営も県からの委託で行っています。
NPO活動の実績をもとに、朝日新聞社主催の「大学SDGs ACTION! AWARDS 2020」に出場。SDGsに関する学生の行動を表彰するアワードでグランプリを受賞し、そこで得た賞金を元手に大学3年生の時に「滝沢ロボティクス合同会社」を設立し、本格的にロボットの開発に着手しました。また、会社は岩手県立大学に隣接する場所に地元の滝沢市が設置した「滝沢市IPUイノベーションセンター」に入居しており、地元の支援も受けて活動しています。
滝沢ロボティクス合同会社 ホームページ
https://takizawa-robotics.com/
大学のある岩手県は農業が盛んな県。農業用ロボットを作れば農家の高齢化・農家数の減少という課題を解決できるのではないかと考え、屋外で動くロボットの開発を始めました。
岩手県滝沢市にある大学の周辺は自然豊かで、広大な土地は屋外ロボットの実証がしやすい環境です。一方で冬には雪が降り、最低気温が-10度になることも。その厳しい環境下でも動く屋外用ロボットを開発しています。そして現在はよりマーケットが大きく売上が見込める建設業向けのロボットの開発を手掛け、実際に企業に納品をしています。
新しい視点を求めてMiTOHOKU Programに応募
田尻さんは大学に掲示されているポスターでMiTOHOKU Programのことを知り、応募を決めました。応募した理由の1つが、全く新しい視点からのアドバイスが欲しかったから。ロボット開発を進める中で、既存の技術の積み重ね・組み合わせで開発をすることが多く、新しいものを作っている感覚を得られなかった時期もありました。ビジネス面に強いメンターからのアドバイスを受けることで、新しいアイデアを着想し、事業をアップデートしたいという思いで応募をしました。
MiTOHOKU Programでは、最終発表会までに新機能を備えたロボットを制作し、実際に走行させる予定です。そのためにも現在はまずソフトウェアを中心にアイデアを練っています。田尻さんは「最終的には完成したロボットを販売し、企業さんに使ってもらえるところまでいきたい」と話しました。
テクノロジーで地域の課題を解決する
学部生時代から様々なプロジェクトを立ち上げ実行してきた田尻さんが大切にしている価値観が「わくわくすること、心にぐっとくることをやる」ということ。「新しいことをやるのが好き。開発も設計も、自分が面白いと思えることは苦にならないし、楽しく働けるし暮らせる」と話します。
そんな田尻さんは2020年、合同会社を立ち上げたころに2030年の滝沢市をテーマに、イメージ図を作りました。そこに描いたのは岩手県立大学や滝沢市IPUイノベーションセンターが拠点となり「ひとづくり」、「モノづくり」、そして「街づくり」が進められている未来。
ロボットやテクノロジーが当たり前に利用されていて、地域にイノベーションが起こる世界を夢見ながら、MiTOHOKU Programでさらなる高みを目指します。
岩手の広大な自然、そして食(特に冷麺)が大好きという田尻さん。岩手への熱い思いを感じました。MiTOHOKU Programでどんなロボットが完成し実証されるのか。最終発表会が楽しみですね!
写真提供=田尻さん