難民キャンプで(26)
もう、難民の人たちは長い行列を作って、配布を待っている。箱を開けて、ボトルを配り始める。一人につき1リットルのスポーツドリンクと、飲料水のボトルを配る。みんな「水ってこんなに重かったんだ」と言いながら、配った。配布は3時間で終了した。明日には、医療物資や、毛布が補充されてくるらしい。今日の仕事はこれでひと段落だけど、たった3時間の作業で腕がだるかった。明日は筋肉痛だろう。このキャンプには井戸があり、まだ、他の地域に比べると水事情は恵まれている。水を求めて何キロもさまようことはないからだ。しかし、安全な水が配られるとなると人々は先を争って並ぶのだった。
いったん私たちが今日寝る仮設テントに行って、1時間休憩することになった。腰を下ろすと根が生えそうだ。「いやー、男の俺でもきついから、女性陣はよく頑張ったね」と下司さんという年長の28歳の人が言った。皆、口々に農場の方がましだったと言い合った。だけど、疲れても、来たくてここに来たので私は頑張ると思い、皆もそれは同じようだった。この後は、医療に当たっている人たちのお手伝いをすることが決まっていた。
1時間後、医療テントに行った。外まで行列をなして、乳飲み子を抱えた母親や子供たちが並んでいる。医療スタッフの腕章をつけ背中を向けていた黒い髪の日本人が振り返った。私は、息をのんだ。「秀?」そこにはずっとこの1年会いたくてたまらなかった面ざしがあった。優しい少したれた目をした男性がいて、泣いている赤ちゃんに注射を打っていた。彼に吸い寄せられるように視線を外すことができず、身動きできないでいた。