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執着(52)

 お父さんも、お母さんも反対している。つらい気持ちでリビングを出て、シャワーを浴び湯船につかってから2階の自室にこもった。シャワーを浴びるとき、まだ血の付いている部分があって、泣きながら流した。部屋でじっと秀からの連絡を待っていた。10時ごろやっと電話があった。心配させてごめんということと、いろいろあの後あって、連絡ができなかったと言った。マヤは秀のけがが心配だった。右手のひらをざっくり切っていて12針ほど縫ったという。右だったので、これから不便だけど、消毒に病院に行ったりすると思うと言っていた。お兄さんの知り合いに診てもらってどうしてこういう傷ができたかは曖昧に別の理由を作って、カルテに書いてもらうことになったそうだ。秀が兄の優がマヤをひとりで帰らせる、置いていくというひどいことをして、自分が止められなかったことを謝った。優さんとカナコのいきさつと、カナコが連絡に応じてくれないまま、はっきり別れられない日々が続いたからと、それも秀が謝った。佐山家と久保香奈子の家は小さい頃からずっと近所に住んでいて、家族ぐるみの付き合いだということも初めて聞いた。その絡みで秀と香奈子は成り行きで付き合うことになったと秀は言った。久保家は秀がここまで香奈子を追い詰めたことを非難しているという。香奈子のお父さんから、もう香奈子とは付き合わないでくれとも言われたそうだ。しかし、香奈子自体が秀と離れることはできないとどうしても秀と別れないと言い張っているのだった。

執着(52)

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