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第56回 カウンセラーのTシャツと言葉のサラダ 推しを喪失した経営者の悩み

カウンセラーとスタッフの日常会話の記録です。
 
Mi代表:深層心理学が専門のカウンセラー。Mitoce代表。
すたっふ:カウンセラー見習いのスタッフ。少々オタクらしい。


 

Mi代:大ニュースが入りました。 

すた:どうされましたか?

Mi代:大阪出身のお笑い特化型アイドル、にっぽんワチャチャが、結成時からの目標であった武道館ライブが決定しました。

すた:え? すごいじゃないですか。おめでとうですね。

Mi代:しかしながら、私は大変悩んでいるのです。

すた:喜んでいないのですか?

Mi代:うーん、そこが悩みどころなんです。正直に告白をすると、メンバーだった前田Matonさんが9月に辞めてから、私はにっぽんワチャチャの楽曲もYoutubeも一切視聴しなくなってしまって。一応は鈴木MobさんのX(旧Twitter)のメンションは確認しているのですが。

 すた:ああ…。推しの引退ですね。 

Mi代:前田Matonさんが辞めるまで気付かなかったのですが、私はMatonさんがいるにっぽんワチャチャが好きだったんだですね。それでグループを箱推ししていたんだなと気付きました。でも応援していた人がたった一人でも減るというのは、アイドルグループを応援する立場にとっては、悲しい出来事です。
あまり言いたくないのですが、Youtubeで一応新しい動画が出ているなとわかっても、どうしても内容が見れなくて。そんな状況の中で入ってきたのが武道館が決まったというニュースです。それも動画に上がっているのですが、内容は見ていない。でもせっかく武道館が決まったのに、ここで言及しないのもどうだろうなと思って、今、話しています。とくに私の場合は、前田Matonさんにオフィスまで来ていただいたのですから。
 

すた:そこは悩みますね。

Mi代:はい、大変悩んでいます。もともと私は地下アイドルに興味を持っているわけでもありません。にっぽんワチャチャに目を止めたのは、大阪出身でしかも女装したオジサンがグループ内にいるアイドルという独自性に惹かれたのがきっかけです。そういった特殊な人を入れる許容力というか、そこに魅力を感じていました。
前田Matonさんが辞めたときに、ファンからの「これで普通のアイドルになった」というコメントもあって。私もそれが頭にずっと残っていたんですね。今思うと確かにそうだなと。メンバーは良い人なのは伝わってきます。そしてグループのエースである鈴木Mobさんの頑張りも伝わってきます。でも…。これが推しを喪失したときの気持ちなんだなと思いました。

すた:ああ、それはよくわかります。推しが出ている作品で、その推しが途中で退場したとき、続きをみれなくなりますから。

Mi代:本当にそんな気分ですね。前田Matonさんが辞められたとき、「アイドルグループとしてはまとまって先鋭化するので、もしかしたら武道館に行けるかもしれないな」と思いましたが。

すた:それだとMatonさんが抜けたおかげで行けたというニュアンスにもつながりかねない。

Mi代:そうなんです。でも実際はそうではないと思います。でももう一つの懸念材料としては、何年も目標として頑張ってきた武道館ライブを達成したあとは、グループとしてどうなるのでしょうか。自分たちをどう売り出していくのか。それとも解散するのか。

すた:鈴木Mobさんは水着グラビアを撮ったりしていましたが、そのままメディアに消費されていく商品になっていく可能性もある。

Mi代:そういうのも心配ですね。推し活ってなかなか大変ですね。悩みが深いです。

すた:そうでもないですけど。私は楽しいですよ。そんなに深く考えていないかも。

Mi代:私も一応、カウンセリングオフィスを開業している立場として、エンタメの仕事としてどのように展開させようと考えているのだろうか、と経営者の視点から考えます。
にっぽんワチャチャであると、社長は元お笑い芸人の一平さんですが、前田Matonさんが辞められたときに、自分の力不足だったと謝っておられました。たしかに事業として考えると、アイドルとして誰からもぱっと分かりやすい特徴が、女装した男性がいるという点だったので。ある意味では、ほかと差別化できる大きなセールスポイントを失ったといえます。社長としては悩んだだろうなと思います。 

すた:そんな観点から見る人は少ないと思います。

Mi代:私も事業所を経営されている方の話を聴くことがあります。そういった方々と話していてよく出てくる話は、経営者と従業員とは考え方のベースがかなり違うということです。
以前は従業員として働いていた人も、会社を立ち上げて経営者の立場になったら、仕事について見える世界が大きく変わると言います。経営となると、自分たちの仕事がこの先どこに向かっているのか、会社としての方向性を考えていく必要がありますから。もちろん、現場で起こっていることも大切なので、把握しておく必要もあります。ただし現場をただ見ているだけでは経営としては成り立たない。
先ほどのアイドル活動で言えば、ライブでどのようなパフォーマンスをしているか、お客さんの反応はどうか、またはメンバーはそれぞれどのような思いで仕事をしているだろうか、という現場で起こっていることの把握も大切です。しかしそれだけではなくて、自分たちは武道館という目標にどう向かっているか、そして武道館の先には何があるのか、またはアイドルというエンタメの仕事をどう発展させていくのかを考えなければなりません。業界全体の動きを眺めつつ、自分たちの立ち位置を考えながら、計画を立てて動く。これが経営者の仕事です。
これはどの職種でもそうです。現場と同時に世の中全体の流れを見ながらでないと、仕事ができません。そしてこういった話は従業員とは話し難い。経営者が悩んでいる内容と、従業員の日々の仕事での悩みは観点が違うことがあります。
なので経営者は会社の中にも相談できる人が少なくて、ひとりで悩んでいる場合があります。メンタルヘルスの観点から見ても、かなりストレスフル。結局は、経営者は経営者の立場同士としか話が出来なくなる。そういった状況はよくあります。

すた:そうなるとカウンセラーって不思議な仕事ですね。現場の人の話も聞くし、経営者の悩みも聞く。

Mi代:そうですね。にっぽんワチャチャでいえば、現場で働くマネージャーやメンバーや前田Matonさんの話も聞く。ファンの話も聞く。それと同時に社長の悩みも聞く。そういうのがカウンセラーの仕事です。

すた:よく対応できますね。

Mi代:それぞれの世界観や考えを理解して、話を聴くというのは立場に関係なく、どれでも同じですので、ある程度のカウンセラーなら当然できるかなと。
先頭に立って活躍している人の悩みは、他の人にはわかりにくいという傾向はあると思います。映画でもアベンジャーズの人たちの悩みは、同じく活躍しているアベンジャーズ同士にしか理解できない。しかしアベンジャーズを支えるチームのS.H.I.E.L.D.の人たちの負担や悩みを、アベンジャーズは理解できないかもしれません。
周りから見ると、「アベンジャーズはスーパーヒーローだ、スゴイ!」と思われても、当人たちは深く悩みます。かといってS.H.I.E.L.D.の人たちも生活していますので、悩みを抱えています。どちらが良いか悪いかではなくて、それぞれ何に悩むのかという観点が違うのということです。
S. H.I.E.L.D.の人たちはアベンジャーズのような人たちを支えるので、それは精神的な負担としても大変だと思いますよ。常に自分たちの理解を超えるようなことを、アベンジャーズはもたらしますから。

すた:それは本当にそうですよ。大変だと思います。

 Mi代:このあたりは職業病ですが、映画を見ていても、アイドル活動を見ていても、そういった当人たちがどのような思いを抱えているのかと気になります。なので純粋にエンタメとして楽しむというよりも、どこか分析的に心理を考えています。「たしかにこれは心理的に見ても納得する作品」のとき、「ああ、心理として学べたな」という喜びを感じるのが、私の鑑賞方法です。
なので今回の推し活についても、自分なりの体験と新しい見解を得られたので、それは学びとしてよかったなとは思います。 

すた:そうなると、にっぽんワチャチャに関しては、以前から仰っていた地元の応援団という範囲を超えて、かなりアイドルオタクの推し活が入っていたということですよね。推しを持つ人の気持ちがよく分かったのは良いと思いますが。

Mi代:はっ! お客さんから連絡はいりましたか?

(その直後、ビジネスLINEが入った音が鳴る)

 すた:なんですか、予言? 今、丁度お客さんからLINE入りました。画面見ていないのになんでわかったんですか、怖いです。

Mi代:別に超能力でもなんでもなく、深層心理学をやっているとこういう直観が働くようになるのですよ。ワンピースでいう見聞色ですね。しかし私は怪力乱神を語りませんので。ではお客さんが来られるので準備をしてきます。 

すた:そんなアベンジャーズみたいな特殊能力を発揮しないでください…。

Mi代:しかし、これで私がいわゆるオタクではなく、深層心理学の実践者であることを理解して頂けたかと思います。

すた:べつに深層心理学を実践しているオタクで良いと思いますが…。

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