見出し画像

第22回 カウンセラーのTシャツと言葉のサラダ 発達障害と山姥のエヴァ

カウンセラーとスタッフの日常会話の記録です。

Mi代表:深層心理学が専門のカウンセラー。Mitoce代表。
すたっふ:カウンセラー見習いのスタッフ。少々オタクらしい。



すた:今回、noteで新しく「カウンセリングがある生活」という記事を書いていましたが、あれは何か意味があるんですか?

Mi代:さっそく宣伝いただきありがとうございます。

すた:いえいえ。

Mi代:あれはカウンセリングでよくある質問に答えようと思って書いた内容です。開業して分かったのですが、カウンセリングは、世間にはまだほとんど知られていないんです。「こころのケアが大切」「カウンセリングを受けてみたい」という人はたくさんいるのですが。カウンセリングは実際にはどのようなことをするのか、どんな人が利用しているのか、という情報がほとんどないんですね。「カウンセリング」という言葉を知っていても、本当のカウンセリングは知らない。イメージで想像している人がほとんどかと思います。
せっかく「カウンセリングを受けたい」という思いがあっても、内容がわからないと申込みができないかなと思って。必要な人はたくさんいると思いますが。

すた:たしかにそうですね。カウンセリングっていう言葉は知っていても、具体的に内容は知らない人がほとんどです。でもそれはなぜですか。

Mi代:いろいろな理由はあると思います。そのひとつは倫理的な制約ですね。カウンセリングでは個人的な内容を話すので、どんな人が来ていて、どんな内容を話しているかを、公けに曝すことはできません。カウンセリングを受けている本人も、カウンセリングを受けていることを隠す人も多いので。内容が知られることは少ないんですね。しかしながら、カウンセリングができる場所は増えているし、カウンセリングのニーズが多くあるのは知っています。
そこで今回は実際のケースをもとにした、仮のカウンセリング場面を書きました。出てくる人は設定としては30代の女性ですが、カウンセリングに来られる方の典型例として考えています。話す内容は特定の誰かが話した内容というわけではありません。「私のこと話しているの?」と思う人も出てくるかもしれませんが、そんなことは全くなくて、完全なる想像上のケースです。

すた:まったくの創作?

Mi代:そこが私としても面白いのですが、私もこのモデルケースに出てくるクライエントがどのような話をしていくのか、現時点で全く予想がつかないんですね。私のイメージに出てきた、想像上の人なのですが。
よく小説やマンガで、「キャラクターが勝手に動き出す」という話をよく聞きますが、そういったことに近い感覚です。こういったイメージワークをアクティヴ・イマジネーションといって、心理療法として行うこともあります。今回は創作活動として似たような方法を使いました。

すた:イメージを使ってカウンセリングをするという方法を聞いたことはあるのですが、ほかにはどのような方法があるのですか。

Mi代:ほかには夢分析や絵を描いてもらったりすることがあります。

すた:絵から何がわかるのですか?

Mi代:心理検査でも描画法というのがあります。その人が描いた絵から、性格やこころの状態をみます。カウンセラーには絵を読み解くスキルが求められます。

すた:ある程度絵が好きでないとできないですよね。

Mi代:そうですね、絵が好きでないと、そもそも絵から何か読み取ろうと思わないでしょうし。

すた:なるほど。そうなるとMi代表にぴったりの方法なんですね。

Mi代:というと?

すた:Mi代表が以前勤められていた職場で、会議室にあるホワイトボードにマンガのイラストを大きく描いていたのを知ってますよ。エヴァンゲリオン初号機とか。

Mi代:あれは会議室に来た人を楽しませようと思っただけです。ロボットは造形的に描いてみると勉強になります。直線の組み合わせでどのように立体的に見せるかという絵なので。別に私がエヴァンゲリオンのオタクとかそういう意味ではありません。

すた:別にエヴァオタクといっているわけではありませんよ。Mi代表はオタク気質なのは間違いないですが。
この前も、Mi代表のお知り合いに挨拶に行ったとき、エヴァの話になりましたよね。シンジ君の心理について一般の人に説明したら面白そうっていわれて。その場ではMi代表は「そうですね」程度の返事でしたが、帰り道で「シンジ君だけで余裕で1時間話せます」とつぶやいていましたよね。でも、シンジ君の心理はみんなが関心を持ちすぎているので、Mi代表は逆に話したくなさそうでした。

Mi代:皆さんがすでに関心を持っていて、いろいろな説明をされているのに、私があえて説明する必要はないかなと思います。

すた:だったら、どのような部分を話すのですか。

Mi代:たとえば、汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンとは何か?というのを象徴的に考えます。
エヴァは「オニ」をモチーフにしているといわれます。たしかに模写して描いてみると角や鋭い目、牙の生えた口など、オニを髣髴とさせるデザインが組み込まれているのがわかります。そういうのは画像として観察するよりも、実際に分析しながら描き写すと実感できますね。私は初期のエヴァが好きなのですが、ストーリーから判断すると、エヴァは男性のオニではなく、女性のオニだということがわかります。つまりシンジ君とエヴァは、オニの母とオニの子という組み合わせだと象徴的にみることができます。
オニの母と子という組み合わせは、山姥の伝説や鬼子母神で扱われるテーマです。山姥は牛を丸のみにしたり、人を食ったりする恐ろしい存在なのですが、子どもには優しいという伝説もあります。子煩悩なんですね。そのように考えると、恐ろしいオニの母親が、子どもを背負って怪物と戦うのがエヴァと考えられます。シンジ君はずっとお母さんの胎内にいることで守られている。なので親離れができない、自立ができない男の子だといえるかもしれません。
もし、そういった強い親から自立ができたら、子どもは強い力を持った、特別な存在になります。たとえば「まさかり担いだ金太郎~」は、山姥から産まれたとされます。なのでシンジ君は、はげしい破壊力を内包した存在です。物語りはそのような方向に進んでいきますが。
飲み込むような恐ろしい母親に育てられた子どもというのは、カウンセリングでもよく出会います。そして、その母親も山姥に育てられた子どもだったりなど、問題は深かったりします。山姥になるにも理由があるので。こういったいろいろな理由を考えるのは大切ですね。どうしても母親のせいだと、母親を責める人もいるのですが、それではこころの悩みは解決しない。責められる母親もつらいので。

すた:絵を描きながら、そのようなことを考えていたのですか。

Mi代:描いている途中は、写すことに集中していますね。アニメ私塾の室井康雄さんもおっしゃっています。絵の上達には模写が大切だと。

すた:私も上手い人の絵を見ながら、どこが上手いかを分析します。

Mi代:他人の模倣をするというのは、とても大事な学習方法です。以前にすたさんがおっしゃっていましたが。自分が何かを表現したいのであれば、自分が理想とする人や作品を手本にして、自分の表現と照らし合わせながら、自分のレベルを考えるのが大切だと。たしかにその通りです。
最近、よく言われる発達障害のなかでも自閉症圏の方たちですが、こういった方たちは他人の模倣をすることが苦手だといわれます。人づきあいで躓いたり、常識が身についていないといわれるのは、こういった「他人の言動をみて学ぶ」という模倣が苦手だからだともいわれます。

すた:もしかしてMi代表も模倣が苦手?

Mi代:ややその傾向はあるかと思います。

すた:だからMi代表は、ちょっと変わったところがあるんですね。他人の真似をせず、自分の世界に突っ走ったから、今のような感じになった。

Mi代:あまり誉められていない感じがしますが。

すた:それこそ個性ですよ。いつもMi代表は個性が大事っていうじゃないですか。

Mi代:たしかに。ただし常識をしっかりと身に着けている人にあこがれがあります。

すた:気にしなくていいですよ、そうなることはできないのですから。

Mi代:あきらめて、エヴァシリーズの模写を始めます…。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?