見出し画像

第37回 カウンセラーのTシャツと言葉のサラダ お笑い芸人とアイドルの光と影 そしてゲスト登場

カウンセラーとスタッフの日常会話の記録です。 

Mi代表:深層心理学が専門のカウンセラー。Mitoce代表。
すたっふ:カウンセラー見習いのスタッフ。少々オタクらしい。 



すた:攻殻機動隊のレビュー原稿をやっと書き始めたようですね。

Mi代:本当にようやくです。以前に第1弾のnoteにあげてから5か月経ちました。私も書こうかどうか迷っていたのですが、私が130記事書いているなかで、一番閲覧数が多いのが実は攻殻機動隊のレビューなんです。「スキ」がほとんどついていないのにも関わらず、なぜか読まれています。それは攻殻機動隊に関心を持つ人がいるということですね。閲覧数としては5か月かけて徐々に増えてきたという印象です。noteは閲覧数の増え方が短期型と長期型があって面白いです。 

すた:今回、書き始めたのはきっかけがあったのですか。 

Mi代:そうですね、ようやく物語りのテーマというか構造がハッキリと見えてきたことが大きいと思います。これまでに何十回と繰り返し読んだのですが、なかなかつかめなかった。でもこれは映画化をした押井守もいっていますが、攻殻機動隊は主人公とAIが結婚するエピソードだと。そして物語りはどのエピソードも対立軸をもとにして展開している。それが理解できはじめたことが大きいです。それまで手書きでメモをしながら読んでいたのですが、かなり時間がかかりました。途中でやる気も落ちたのですが、それ以上に内容が分かってからが大変でした。

すた:どういうことですか?

Mi代:ストーリーが見えてきたのはいいのですが、そのあと「深層心理学的にはどのような意味があるのだろうか」と考えていたからです。レビューを書くとしたら、ただストーリーを追うだけでは面白くない。私の立場から見てどのように物語りを理解するのか、それが必要だと思ったからです。 

すた:それで、なにか分かったのですか?

Mi代:そうですね、少しネタバレにもなるのですが、主人公はものすごく能力が高い人物です。そういった人物ほど、いわゆる一般社会への適応に悩むことがある。これは現実社会でもそうです。たとえば高知能の人は、自分の思考レベルと周囲のレベルとが合わないため「なんで自分の考えが伝わらないのだ」と悩みます。周りからしたら「あいつは何か難しいことを一人で悩んでいる」となるのですが、高知能の人が孤立することがあります。それが主人公の様子から伝わってくる。
でもこの高い能力や大きな成果を出した人が、孤独感で悩むというのは、ありふれた状況だと思います。

すた:たしか前にもそのような話があったような。

Mi代:そうですね。私が『成功者~』を書いていたのは、いわゆる社会的に成功した人が孤独を感じやすいということが理由のひとつとしてあります。
たとえば以前に見た映像でいうと、関西のお笑い界を代表する上沼恵美子さんが、番組でダウンタウンの松本人志さんと対談したときのことを思い出します。そのとき上沼さんが訪ねました。孤独を感じないかと。松本さんは、別にそれほど感じていないような返事でした。これをみて私は「上沼さんは孤独だろうな」と思いました。
上沼さんは関西を代表するお笑いの方ですし、いわゆるトップに君臨すると言えるでしょう。しかしながら、トップでいるというのは、一般に思われるほど気持ちの良いものではありません。こころを許せる相手が少なくなりますし、素の自分でいられなくなります。しかも自分が「ミスったな、間違ったな」と思っても、指摘したり批判する人が周りに居なくなる。それはある意味、寂しい状況です。実際の上沼さんはもっと大変経験をされていると思いますが。
一方で松本さんは恵まれているかもしれません。幼馴染の浜田さんとコンビを組み、同じく幼馴染の高須さんを放送作家に迎えている。昔から知っている人が傍にいるので、上沼さんとはかなり状況が違います。松本さんは自分が素面でいられる相手が周りにいるので。上沼さんはサービス精神が豊かな方ので、素面でいるよりもサービスをしてしまうかもしれません。 

すた:それは悩みますね。 

Mi代:そうですね。私がこんな話をするのも恐れ多いのですが。
最近はニュースになったのを思い出していて。ダウンタウンの松本さんが各お笑いショーの審査員をしているという批判がありました。たしかにトップの人がそのような役目を続けていると、権威的だと批判する人が出てくるのは当然だと思います。しかしながら、私のような観客の立場から見ると、ある意味ではそうだとしても、では代わりに誰がその役割をするのでしょうかと疑問が出てきます。代わりがいないのでは…。だから仕方なく松本さんに役が回ってくるのだろうなと。それは業界の課題だと思います。
ダウンタウンは、デビュー当時は四次元漫才と言われて、これまでの漫才のセオリーを崩すようなスタイルでした。奇抜すぎて、ついて来れない人もいるほどです。それが松本さん独自の笑いのセンスといわれました。
しかしながら最近は楽屋話というか、お笑い芸人の裏話が聞ける時代になりました。それによると松本さんは高須さんと話し合いながら、それまでのお笑いのセオリーを全部壊していくようなネタを作っていたようです。だから常識破りで面白かった。常識破りをするためには、常識を知らないといけないと言われますが、ダウンタウンもセオリー通りの常識破りをしていた。
たしかにダウンタウンの昔の漫才ネタを見ると、意外と中田ダイマルラケットのネタに影響を受けていたりするんですね。中田ダイマルラケットとは、中田カウスボタンの師匠です。カウスボタンは浜田さんが舞台袖でずっとみて学んだ、という漫才師です。ある意味ではダウンタウンのベースには中田ダイマルラケットの血脈も混じっているいえるかもしれません。もちろん、それ以外の要素もありますが。
松本さん一強を乗り越えて変えようと思ったら、松本さんをさらに破っていくネタを作らないといけない。笑いのセオリーを理解し、ダウンタウンがどのように破ってきたかを知りつつ、さらにそれを超えていく。これが本当の意味での批判だと思います。でも、それはかなりハードルが高いですね。だから結局、超える人がいなくて松本さんに審査員の仕事が回ってくる。

すた:こういう先人を超えて継承するという話をMi代表はときどきされますね。 

Mi代:はい。私たちの業界でも、河合隼雄という偉大な人が出た。そしてその教え子たちが今、私たちの業界をけん引しているのですが、今の話で言うと、松本さんがいなくなったあとのお笑い界みないなもので、次に続く人がいません。そうなるとどうしても全体的に質が下がってしまう。その危機感があります。 

すた:それはMi代表の話を聞いて教えてもらっている部分です。

Mi代:お笑いの業界にあるような、裏での必死の努力によってプロの質が保たれている。これはどの業界でも当てはまることだと思います。ダウンタウンを初期から高評価していた島田紳助さんもそうです。彼も知る限り猛烈な努力家でした。しゃべりが上手いとか、そういった表面的な部分を評価されやすいですが。かなり勉強家であることが知られています。報道番組も担当していましたし、社会についてかなり勉強している。そのうえ、お笑いにもずっと取り組んでいる。
東京ではクリーンなイメージがあったので、島田紳助さんはそれを守ろうとしているのが画面越しに伝わってきていて。最後の方はかなりしんどそうだな、やめどきを探していそうだな、という雰囲気が伝わってきました。私は関西に住んでいるので、関西の番組では活き活きしている紳助さんを見ていたので余計に感じました。
あのような形で辞めることになったのは残念ですが、どこか紳助さんも辞めるきっかけができてホッとした部分もあったのではと思います。とくに紳助さんにも影響を与えていた、関西お笑い界の重鎮である上岡龍太郎さんは、自分で限界を感じた時点であっさりと仕事を引退しました。そのあと先日に亡くなるまで、一切表舞台に出てこなかった。
紳助さんとしては、上岡さんの辞め方にあこがれがあったかもしれません。でも上岡さんほどの潔さは紳助さんとスタイルが違う。紳助さんは情がありそうなので冷徹な強さに徹しきれない。だからこそ自分の限界が来るまで辞められなかったかと想像します。お薬を飲みながらでも働いていたそうなので。辞め方がああいう事情だったし、そのあとマイナスのエピソードも出てきたので、今でも批判的な人はいるかと思いますが、あれだけの成功を収めた人なので、なにか学ぶことがあるのではと私は思います。

すた:いわゆる光と影の部分。

Mi代:そうですね。私は仕事柄、人間の影の部分を見ることが多いのですが。かならず光と影どちらも見るように心がけるので。
紳助さんの仕事で面白かったのはトークもそうですが、いわゆる売れない若手芸人や素人さんをキャストに仕立てて番組を作ることです。言い方は悪いかもしれませんが、10点ぐらいの才能の人を100点以上に引き出して面白くさせることができる人です。
『クイズ!紳助くん』という番組では「なにわ突撃隊」といって、若手芸人に体を張ったロケに行かせていました。そこでいろいろな過酷なことをさせるのですが、その番組で人気の出る芸人は「自分勝手」「わがまま」「感情が不安定」という、いわゆるマイナス面が目立つ人なんですね。これもお笑いのセオリーなのですが、マイナス面がある人ほど魅力がある。紳助さんが担当する番組はその扱いが上手かった。
そして「なにわ突撃隊」に参加していた若手芸人の一人が、松村一平さんです。以前にここで取り上げたことのある、大阪発の地下アイドルグループ、にっぽんワチャチャの所属する会社の社長です。

すた:ああ、そうなんですね。

Mi代:はい。M-1の決勝戦に出たこともある「すゑひろがりず」の南條庄助さんと、松村一平さんは「うずまき」というコンビを組んでいました。その当時に「なにわ突撃隊」に参加されていて。ヌンチャクの技を体得する回に出たりしていて、私もよく憶えています。
そういった過去を振り返りながら、松村一平さんの「にっぽんワチャチャ」への関わりを考察すると面白いです。先ほどいった、紳助さんのような、その人の個性をどれだけ引き出して活躍させるかを、アイドルというジャンルで取り組んでいるように見えます。
にっぽんワチャチャは天才的な能力を持っているメンバーがいるわけではない。どこか不器用さを持っているメンバーたちです。そのメンバーを輝かせるアイドル活動。これは紳助さんの取り組みや、またはお笑い芸人が担ってきた仕事だと思うんですね。
お笑い芸人は、世間一般から見ると性格が偏っていたり、生きるのに不器用だったり、いわゆるマイナスの部分をたくさん抱えておられます。それがかえって芸のプラスになる。にっぽんワチャチャも各メンバーが不器用ながらも、自分の個性をどれだけ発揮できるかに一所懸命です。
以前にすたさんがおっしゃっていましたが、いわゆる可愛らしくてパッケージ化されたアイドルであれば、私も苦手ですし、応援ができない。しかし自分のマイナスの部分をかえって個性として発揮する。それは元芸人の一平さんが苦労して身に着けてきた表現活動の本質だと思うので、それがワチャチャにも引き継がれていると思うから応援ができるんです。 
もちろん松村一平さんにも光と影があると思います。影の部分に本人も苦しみ、メンバーも苦しめられていると思いますが、それも光をか輝かせるためには避けられない。

すた:今日はやけに語りますね。芸能界やにっぽんワチャチャについて。
たしかにMi代表がいつもおっしゃる、社会的な影を担わさせられたクライエントの個性をいかに活かすかというカウンセリングの本質と重なる話だとは分かるのですが。いつもの倍以上話している…。
(部屋の中で呼び出し音が鳴る)
話の途中ですみません、お客様が来られたようです。ちょっと出ますね。

:こんにちは、にっぽんワチャチャの前田Matonです。よろしくお願いします。

すた:え、え、え!!!? Mi代表!!にっぽんワチャチャの前田Matonさんですよ!

Mi代:こんにちは。Mi代表です。よろしくお願いします。

すた:なんでいつものように素でいられるんですか?本物ですよね、どういうことですか?
 

(次回に続く…)


いいなと思ったら応援しよう!