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【終】オメガ3神話の真実の真実④プーファと甲状腺

批判シリーズ4弾目

本来③の後ろに書く予定だったのだが、断念して先延ばしにした。

というかあんまり細かく突っ込みすぎてこちらも飽きてきたので、引用に拘らずに普通に論述することにしようと思う。それにシリーズとしてダラダラ長引かせて、本以上に価格をつけるのも忍びない。ということで批判シリーズはこの辺で仕舞いにしようと思う。後は講習会なりで、どこか直に話す機会で喋ろうと思う。

前回の記事で
とにかく甲状腺を守りたい著者」VS「甲状腺を破壊するらしいプーファ
の構図の前段階をお話したが、今回はそのメインの話に移る。

  1. 糖代謝に甲状腺ホルモンは必須であるのか?

  2. プーファが甲状腺をブロックするというのは真実か?

①甲状腺ホルモンは糖代謝に必須か?

私たちの体の構造と機能を維持するためには、糖のエネルギー代謝を高めることが必須になってきます。この糖のエネルギー代謝に必須の物質が甲状腺ホルモンです[327]。

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とのことである。甲状腺が糖代謝に関与するのは生理学のテキストに普通に書いてある話なので、わざわざ引用を付ける必要性は皆無なのだが、著者が挙げている文献「327」がどんな根拠になっているのか改めて確認しよう。

Ross I, Omengan DB, Huang GN, Payumo AY. Thyroid hormone-dependent regulation of metabolism and heart regeneration. J Endocrinol. 2022 Jan 20;252(3):R71-R82. doi: 10.1530/JOE-21-0335. PMID: 34935637; PMCID: PMC8776588.
"甲状腺ホルモン依存性代謝と心臓再生の制御"

前回の記事で心臓の話をした理由がこれだ。何故か心臓の論文が登場するのだ。確かにこの論文は「動物の代謝における甲状腺ホルモンの役割」を論じたものではある。

図1.甲状腺ホルモンは、代謝と心臓再生能力を二重に制御している
甲状腺ホルモン(青)は甲状腺から分泌され、哺乳類の代謝を駆動しつつ心臓再生能を抑制する。
代謝と心臓再生の関係性が研究対象となっている。

論文の主旨としては、

  • 成体ゼブラフィッシュや幼体マウスには高度な心 臓 再 生 能 力があることが知られる

  • しかし、この能力は成長とともに喪失することが一般的である

  • 成長で喪失する心臓再生能力の変化には、甲状腺ホルモンの分泌量の増加が大きな役目を果たしている

  • 心臓再生能力の衰退とホルモン分泌量増加の時期に並行して、幼体から成体にかけての心臓の糖代謝依存から脂質代謝依存への代謝の切り替えが観測される

というもので、この論文はむしろ甲状腺ホルモンが心臓の脂質代謝(β酸化)を促進することを報告するものであり、端的に、著者が嫌うはずの「メタボリック・スイッチが動物の成長に必須だというものだ。


図2.甲状腺ホルモンは心筋細胞の細胞周期停止、多倍体化、心臓再生能の喪失を促す
周産期には、心筋細胞の大部分は単核で2倍体(2n)であり、心筋再生を支える増殖能を保持している。出生後、循環甲状腺ホルモン濃度が上昇すると、心筋細胞の成熟、細胞周期の停止、倍数体化、心臓再生能の喪失が進行する。


甲状腺ホルモンと相互作用して心筋細胞の増殖を制御する新経路の研究過程で、糖質コルチコイドとビタミンD受容体シグナルの役割を検討した。
これらの経路を活性させるとin vitroで哺乳類の心筋細胞の増殖を抑制するが、遺伝的な抑制ではin vivoの増殖を有意に変化させるほどではないことを観測した。
更に、甲状腺ホルモン変異体バックグラウンドにおけるこれらの経路を複合的に阻害しようと、心筋細胞増殖に対して甲状腺ホルモンシグナルの阻害シグナル単独で観測される以上の効果を発揮しなかった(Cutie et al., 2020)。
これらのデータは、甲状腺ホルモン、糖質コルチコイド、ビタミンDが個別のメカニズムを介して心筋細胞増殖を制御することを示唆している。

②プーファが甲状腺をブロックするというのは真実か?

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