世界初の慢性血清病の報告~反復タンパク中毒による実験的腎炎の産生~
最近5回目?接種が始まったらしいが、同じタンパク質を何度も皮下注射すると何が起こるか?なんて極基礎的な話を誰も突っ込まない時点で狂っているのだが、淡々と論文を紹介しようと思う。
免疫複合体疾患については、私の発信を細かく見てくれているS氏が自分でも発信し始めてくれているので、是非ご確認ください(‾◡◝)
さて、その慢性血清病の歴史を辿ると、なんと1913年にまで遡った。
Longcope WT. THE PRODUCTION OF EXPERIMENTAL NEPHRITIS BY REPEATED PROTEID INTOXICATION. J Exp Med. 1913 Dec 1;18(6):678-702. doi: 10.1084/jem.18.6.678. PMID: 19867740; PMCID: PMC2125134.
反復タンパク中毒による実験的腎炎の産生
前書き
この2年間、プレスビテリアン(長老派教会)病院では、
・全身浮腫
・発熱
・タンパク尿
の増悪
および少数例では
・蕁麻疹
・好酸球増多症
に特徴づけられる腎炎が観察されてきたが、これらの発作は血清病と酷似したものであった。このような症例研究から、腎炎がアナフィラキシー状態に依存している場合があることが示唆され、本調査が実施されるに至ったのである。アナフィラキシーショック中に生じうる解剖学的変化は、これまでほとんど注目されておらず、非致死的アナフィラキシーショックを繰り返した場合の動物組織への影響については、ほとんど観察がなされていない。人間は、卵白、果物、貝類などの食物に対して、フォン・ピルケが言うように過敏症またはアレルギーを起こすことが知られており、こうした状況下では、これらの基質のタンパク質によって、時折、致命的ではない中毒発作を何度も起こす可能性がある。従って、人 為 的 に 外 来 タ ン パ ク に 感 作された動物が、これらの外来タンパクに繰 り 返 し 感 作されて、生 体 に 有 害 な 影 響を及ぼすかどうかを調べることは重要なことである。
最近、多くの研究者の関心を集めているのは、アナフィラキシーショック時に、仮説上の中毒物質であるアナフィラトキシンがどのように生成されるか、という問題である。Vaughan、BiedlとKraus、Friedberger、SchittenhelmとWeichard、Friedemannが要約した見解では、感作期間中に外来タンパクに対する発酵素または抗体が形成され、感作から2、3週間後に行われるタンパク質の再注入時に、このタンパク質が、化学的には単純だがペプトンと同様に強い毒性を持つ基質に分解されると説明する傾向が見られる。Vaughanは、この過程が細胞内の発酵素の作用によって体細胞内で起こると考えているが、より一般的な構想では、凝集素(アグルチニン)や沈殿素を生成する際に起こるような抗体の生成であるとするものである。
この抗体が種々の臓器の細胞に存在するかどうか、また毒性物質の遊離が臓器の細胞で起こるのか、それとも循環の中で起こるのかについての議論がなされてきた。これまでのところ、1つか2つの疑問のある例外を除いて、研究者たちは、感作された動物のどの細胞にも外来タンパク質に対する抗体を証明することができないでいる。しかし最近、FellainderとKlingは、感作動物の骨髄と白血球に抗体が見出される可能性があることを示した。一方、感作動物の血清中には、感作動物が感作している特定のタンパク質に作用して強い毒性物質を形成する抗体が含まれている(※Mit注:補体ですな)ことが、種々の方法で繰り返し示されている(Friedberger)。しかし、アナフィラキシーの際に、外来タンパク質と体細胞との間で反応が起こる可能性を示すような観察結果もある。Schultzの実験と、特にDaleによるその追試研究では、
馬血清に感作されたモルモットの
子宮、小腸、気管支の平滑筋を
血液を使わず洗浄し、正常モルモットの臓器の筋組織には影響を及ぼさない
馬血清の希釈液とinVitroで接触させると、
アナフィラキシー時にinVivoで起こるように収縮することを明確に示している(※Mitコメ:なんだと…?)。
アナフィラキシーで急性に死亡したモルモットの実際の解剖学的変化は、GayとSouthardによって広範囲に研究されている。彼らは心筋、胸膜、胃壁、盲腸の出血を記述し、特に毛細血管内皮の脂肪性変性に注目し、これが出血の直接の原因であると信じている。また、神経、胃の上皮、心臓、随意筋にも脂肪性変性がみられた。AndersonとRosenauは、この研究を繰り返しているが、出血についてはほとんど強調せず、彼らが発見した稀な脂肪性変化は、他の条件でも起こりうるもので、アナフィラキシー中毒の特徴ではないと信じている。GayとSouthardが述べたこれらの変化が、モルモットのアナフィラキシーに特徴的であるかは不明だが、私の経験上極めて頻繁に起こるものであり、当然だがAuerとLewisが最初に注意を喚起した急性肺気腫も不変である。モルモットへの腹腔内注射でショックを 2、3 回繰り返したGayとSouthardは、慢性的な変化を生じさせることができなかった。
しかし、特定の状況下では、外来タンパク質の反復投与に対して体細胞が反応し、結果として解剖学的変化をもたらすことがある。Arthusが研究した、ウサギの皮下にウマ血清を 6 〜 7 日の間隔で繰り返し接種した後の皮膚の局所浮腫、炎症、壊死はよく知られている。LucasとGayは、ジフテリアの抗毒素を繰り返し注射された児童にも同じことが起こることを指摘している。Friedbergerは馬血清を気管に噴霧して感作したモルモットの肺に細胞性肺炎を発生させたが、これも局所反応の証拠である。Ishiokaはこの実験を繰り返して確認し、SchlechtとSchwenkerはこの状態の肺を注意深く組織学的に研究している。彼らは肺胞壁を覆う細胞の増殖、好酸性白血球の肺胞への滲出、フィブリンの形成を記述し、これが一種の気管支肺炎を生じさせることを説明している。さらに、モルモットに馬血清を繰り返し腹腔内に接種した場合の影響や、アルザス現象についても研究しており、これらの状況下では、一方では大網と腹膜腔に、他方では皮下組織に好酸球と小単核球(単球)が浸潤していることを発見している。犬に血清を静脈注射すると腸カタルが起こり、腸の粘膜と粘膜下層に多くの細胞が浸潤し、その中には好酸球も含まれていた。
従って、アナフィラキシーの際に体細胞の一部が傷害されることを示す一定の証拠があり、この傷害の後に固定および移動体細胞の側で反応が生じうるという考えを支持する傾向のある観察がいくつかある。そこで、動物が繰り返しアナフィラキシーショックを受けると、体細胞、特に腎 臓 に 永 久 的 な 損 傷 を受けるかどうか、またこのような反復中毒に対して組織側に顕微鏡上で可視的な反応があるかの調査の為に、一連の実験が計画された。
結論
これらの蛋白質に感作されたイヌ、ネコ、ウサギおよびモルモットに少量の馬血清および卵白を繰り返し注射すると、種々の臓器および組織の細胞が傷害され、その結果炎症反応が起こる。その変化は、特に腹腔内注射ではウサギとネコの肝臓に、静脈内注射ではすべての動物群の心筋と腎臓に顕著である。特にイヌとウサギでは、ヘンレループの上皮、集合管、およびあまり頻繁ではないが凸尿細管の変性と壊死を特徴とする顕著な腎炎が発生する。これには、間質組織への小円形細胞の浸潤と結合組織の形成が伴う。これらの変化とともに、すべての動物群の糸球体には、急性および慢性の変化が見られる。卵白の大量投与は、それ自体で動物の腎臓を傷害するが、このわずかな一次毒性は、おそらく動物の事前感作によって大幅に増強される。
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