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テレワーク時代のセミナー/イベント
テレワークになったおかげでセミナー/ウェビナーが花盛りです。ほとんど毎日のように、それなりの品質のセミナーが開かれ、しかも申込も直前までOKだったりします。交通費はかかりませんし、メイン機じゃないサブタブレットでの「ながら視聴」も、誰の目をはばかることなく可能です。その分、従来からあった「セミナー」の定義も少しずつ変化しているように思えます。
王道的な流れ
リアルであろうとオンラインであろうと、基本的な流れは変わりません。上図のような8ステップを踏むのが王道だと思います。最終的な「営業」の部分は、どういった「刈取り」をしたくて「種蒔き」をするかに依存しますが。
変わったのは、最初の「集客」と「設営」だと思います。会場が物理的な縛りから解放されたので、〆切がギリギリまで伸ばせます。ただ毎日開催されているような「レッドオーシャン」状態になったので、「会場」の選定は頭を使う必要があります。無駄に大人数用の設備を用意してしまうのも、その逆もよろしくありません。しかも、一人で2台使って視聴している聴衆もありますし、URLだけなら参加者から拡散して別の人も聞いてるかもしれません。重複視聴ができないようなID管理をするものも増えてきました。
大きなセミナーは、実施可能な会場がほぼほぼ決まっていたので、余り重なることは有りませんでしたが、最近は平気で重ねてきますし(これは大問題)、こちらもスマホとタブレットとPCの三つは同時に聞いてたりします(もちろん深いものは一つに集中するので、他の二つは耳に入りません)。
設営は、オンラインであろうと、それなりにチェックを重ねないとトラブルが起こるというのは変わらない事です。ミュートになって音が出ない、資料共有ができない、画像が切れる、画像が粗すぎて資料が読めない、などなど。セッション始まってから、映ってますかね?…とチェックされるのも、正直言えば興醒めです。自宅にいる講演者のPCチェックを行うのが大変なのは分かりますが、やはり頑張るべきです。良い時間を共有したいから、いつでも見られる形式ではなく形態を選んだはずですから。
この数ヶ月で様々なウェビナーに参加しましたが、リエルのものよりバリエーションが多いです。まったりを通り越してグダグダなのから、単なる近所の親父トークから学会レベルまで。本当に様々ですが、当然残念レベルから感動レベルまでと、結果も分かれます。今までは開催できるというスピード感だけでインパクトが有りましたが、今後は品質も問われていきますね。
セミナー系の各種領域
開催スキル品質の違いも有りましたが、形態の違いも少しずつ整理されてきている気もします。共通の言葉は未だ定義できていないと思いますが、幾つかに分けて見ました。
A)Web飲み会系
飲み会のノリで交流することが主目的なものです。「司会」としてはタイムキーパー程度の役割から、少人数に分かれる時の号令がけあたりまでかと思います。集まること自体が目的ですから、基本カジュアルですが、最近は「上座」は何処だなどと場をしらけさす者も出没中。
B)勉強会系
講師が司会を兼ねて、自分の知識を共有したいというモティベーションで開催されるもの。基本的には、伝えたい熱意が強いのでダレることが少なく、どちらかと言うと時間超過しがちなパターンです。本人が何でもやるので、マシントラブル的なものも比較的少ない気がします。
C)セミナー系
司会と講師と聴衆という三層構造のもの。フォーマルを狙っているものもあれば、カジュアルでワーワーやりましょうというノリのモノも多い現状です。フォーマル方向のものはそうでもありませんが、カジュアルさを履き違えて、運営側だけが盛り上がるものもあります。時間拘束されること自体はリアルと差がないわけですから、趣旨説明など事前の告知が大事になります。折角頑張って評判を落としたり、参加者が嫌な思いをするのは避けるべきですので、これから学習が積み上がっていく領域だと感じています。
D)カンファレンス系
複数セッションを司会が束ねて、比較的大規模に実施するものです。マシン環境も講演者夫々ですしネット回線もそれぞれです。かなりリスキーな状況で実施するのが常です。たまに講演者はスタジオに集合する形式を取っているものもあります。講演者は社会的な有名人などが多い場合もありますので、司会の力量が響きます。単純にタイムキーパー役に徹する場合もあれば、最後の「振り返り」までこなす方もいます。
豪勢なホテルで、フリーアナウンサーを前に実施されていたモノをベースにして、それを再現しようとしているフシがあります。でも正直言うと、大きな会場でそれなりにマイクの響きがある所で聴くプロ司会が良いのであって、オンラインカンファレンスでそれが必須かと問われたらNOと答えると思います。それよりは内容を理解した上での議事進行を望みたいです。
またこの形式あたりから、自分の「語り」よりも動画の方が解りやすいとYoutube動画を一緒に見ましょうという方もまじり始めます。リアルのイベントでもなくはなかったですが、私は解説もなくただ一緒にYoutubeを流されると、ため息が出ます。この時間は何なんだろうと。折角の共有時間をつまらない(後で一人で見られる)体験で埋めるのは失礼な気がします。
そしてカンファレンス系で一番つらいのが、朝から晩までノンストップとか、二日間三日間連続で開催しますという体育会系のノリです。本来の仕事もありますし、そうそうセミナーばかり見てられません。この辺りのバランス調整というか全体最適化が今後の課題です。
E)イベント系
リアルのイベントが複数日に及ぶように、ある程度の期間をもって開催されるものです。いつでも見れるものは、Youtubeに任せ、今だけしか見れないという希少価値があるものの、基本録画形式ですので、倍速で見れたりする場合があります。倍速は早すぎても、1.2〜1.5倍あたりで視聴する方が良いものも多いですし、聞き漏らしたら巻き戻して再度聴けたりするメリットがあります。この期間限定録画大公開が、現状一番うれしいですね。
3Dで歩き回れたり、色々と今後のイベントの形を考えさせられたのは下記です(Microsoft de:code:既に終了しています)。セッション数が多くなると、地図的なタイムテーブルが欲しくなり、それがあると自分のメモが置きたいとか、それを誰かと共有したいとかUX的な視点での運営も必須です。
次の大きな山は、少し先ですがAdobe MAXです。どんな仕掛けで、聞きやすく内容の濃いものを見せてくれるのか、お手並み拝見ですね。
ウェビナーに望むこと
こうして見てくると、実は規模に依らず、理想とするイベントの形があるように思えます。
● 音声/明るさが適切であること
● アジェンダ/全体の流れが明確であること
● 資料は後ででも良いのでDLできること
● 質問ができること/司会が戸惑わないで活用可能/質問者も後で参照可能
● アーカイブされていること(後でいつでも倍速で見れること)
● 動画ですので、参照系URLはQRコードで記されていること
● 営業で、しつこく電話をかけてこないこと
営業電話に関しては、学ばせて頂いているのである程度はご協力もしますが、購入するかどうかはどんなに電話かけてきても余り変わらないと思います。購入まで至らない、外野的な「にぎやかし」的な聴衆も許容してほしいものです。
つい昨年まで普通にやっていたリアルセミナーですが、時代は変わりました。リアルの良さも分かりますが、オンラインの良さを十分に発揮したものもこれから出てくると思います。
一番上の画像のような、会場が満杯のようなイベントは暫く望めず、更に何年かすると記憶も薄れ「あんな事ができた時代があったんだね」とつぶやくこともあるのかもしれません。でも参加したあとに残る「感動」は今よりも高いものを狙いたいですね、折角実施するのですから。
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