英国散歩 第6週|ケンブリッジはザックリこんなまち③大学のまち(後編)
ケンブリッジに学生が多く住む理由(軽い結論)
結論から言うと、ケンブリッジ大学は「授業期間中に、大学が定めた”学区”の中に住んでいること」を学位授与の条件としているからです。
これにより、必然的に、ケンブリッジ大学に通う2万人超の学生たちの多く(例外もあるため全員ではない)が「学区」内に居を構えることになり、結果として、市人口の約2割を占めるまでの学生がケンブリッジ市に住まう状況がつくり出されているのです。
そして、大学がこの方針を変えない限りは、毎年毎年、新たな学生が市に移住し、市の若者人口が維持され続けるという特殊な状況が生まれています。
居住条件(Terms of Residence)
学区(university’s precincts)
ケンブリッジ大学が示している居住条件について具体的に見てみます。
下記が大学ホームページに記載されている文面です。
多くの学生はおそらくこのFull-time studentsに当たるため、ここに記載されたとおり、学位を得るためには、学期(term time)中は大学の学区(University's precincts)内に住む必要がある、とされています。
そして、この学区については、学部生か大学院生か、等によって異なりますが、例えば大学院生(postgraduate)の場合の居住条件として下記の内容が示されています。
つまり、フルタイムの大学院生の場合、「学区(precincts)」は通常、グレートセントメアリー教会から半径10マイル(約16km)の範囲、とされています。
なお、学部生の学区はさらに狭く、同教会から半径3マイル(約4.8km)とされています。
800年変わらない基準点
ここで学区の中心とされているグレートセントメアリー教会(Great St Mary’s)は、正式にケンブリッジ大学に属する教会(the university church)で、設置年はケンブリッジ大学の創設と同じ1209年。
建物自体は15~16世紀に建て替えられていますが、要するに800年もの間、同じ場所にケンブリッジのまちのランドマークとして存在し続けているものです。
この教会は、大学の歴史あるカレッジや賑やかなマーケットのすぐそばにあり、市の中心でもあります。
そして、教会は100段あまりの急な階段を上ると屋上に出られ、そこからケンブリッジのcity centreを一望できます。
【まとめ】大学のまち・ケンブリッジ
改めて、上述のとおり、ケンブリッジに学生が多く住んでいるのは、
①学位取得条件としての学区内居住
②31ものカレッジ(=受け皿としての住宅)の存在
によるものが大きいと考えられますが、そもそも①②を可能としている背景として、ケンブリッジ大学が
③800年前からの最大・最強の大地主 であり、
④オックスフォード大学と並び、イングランドで(世界でも)圧倒的
なブランド力を持った大学 である
という点も考慮する必要があります。
800年前から既にケンブリッジの地主として存在し、現在の市中心部を含む敷地を所有していたケンブリッジ大学だからこそ、それだけのカレッジ(住宅等)を整備できた面は当然あると思います。
仮に、既に発展した都市部で新しく大学を設立するような場合には、万に及ぶような学生全員に廉価な住宅を提供するなどは到底できません。
またイングランドでは19世紀初めまで、オックスフォード大学・ケンブリッジ大学の2校以外の大学が設立されず、独占(寡占)状態が数世紀続いたという歴史もあり、ケンブリッジ大学はさまざまな面で非常に大きな力を持ち、現在でも世界中の英知を惹きつけるブランド力を持った大学です。
そんな世界中から集まる優秀な学生や教授陣と、カレッジで寝食を共にしながら過ごす大学生活は確かに魅力的です。
こういった特殊要因もありつつ今の強固たる大学まち・ケンブリッジが出来上がり、そこに多くの学生が住み続ける仕組みが成り立っていると考えられます。
以上、日本の大学まちや学園都市などとはまた違った、ケンブリッジ大学を核としたケンブリッジのまちの紹介でした。