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英国散歩 第16週|イングランド各地のクリスマスシーズン風景③コッツウォルズ、バース

クリスマスシーズンがようやく終わったイギリス。
引き続きイングランド各地のクリスマスシーズン風景の紹介です。
まだ渡英後3か月ちょっとですが、ケンブリッジを拠点に足を伸ばせた範囲で、各地の写真を挙げていきます。


①ケンブリッジ編②マンチェスター・リバプール編に続き、今回は、例年イギリス最大級のクリスマスマーケットが開催されることでも有名なスパのまち「バース」※ と、古き良きイギリスの生活風景を今に残す観光エリア「コッツウォルズ」です。


コッツウォルズは国の特別自然美観地域AONB、Area of Outstanding Natural Beauty)」、バースはユネスコの世界文化遺産」に指定され、ともに美しい景観と歴史・文化的価値が世界中の多くの観光客を惹きつけています。

今回の訪問はイギリス人にとって旅行シーズンである12月末。
オミクロン株拡大の影響から、人気渡航先であるフランスがイギリスからの観光目的の入国を禁止。今年のコッツウォルズ、バースはともに国内旅行先として人気が高いエリアだったのではと思います。

※今年のバースのクリスマスマーケットはコロナの影響で中止でした。



コッツウォルズ(Cotswolds)

・イングランドのほぼ中央に位置する丘陵地帯で、ロンドンからは電車で2時間程度。
・バイブリー、ボートン・オン・ザ・ウォーターなど複数のまちから成る一帯の地域を指し、その地域全体が国の特別自然美観地域(AONB)に指定されています。
・ライムストーン(コッツウォルズストーン)と呼ばれる石灰岩を用いたはちみつ色の建物が並ぶ風景が特徴的で、世界中から多くの観光客が訪れます。
・コッツウォルズは「羊の丘」という意味を持ち、中世に羊毛加工業で栄え、ヨーロッパで最高の羊毛の産地とされていましたが、その後の産業革命で取り残されることに。しかし、19世紀にその田園風景の美しさが注目され、イギリス人にとっての桃源郷として今も当時の建物、風景が残されています。


特別自然美観地域(AONB)とは

特別自然美観地域(AONB)とは、Countryside and Rights of Way Act 2000 (CROW Act)という法律にもとづき、自然の美しさ(Natural Beauty)を保全し高めることを目的として指定された地域をいいます。

イングランドには34、イギリス全体では46の地域が指定されており、コッツウォルズはその中でも最大の面積を持つ地域です。
なお、地域指定の権限を持つのはイギリスの各政府ではなく、例えばイングランドではイングランド政府に代わり、Natural Englandという組織です。

バイブリー(Bibury) 

最もバイブリーらしい風景とされる「Arlington Row(アーリントン・ロウ)」。

バイブリーは、詩人、デザイナー、そして19世紀後半からのアーツ・アンド・クラフツ運動の先導者でもあるウィリアム・モリスが「イングランドで最も美しい村」と称したことで知られる村です。人口は約600人。

村の中でも、もともと1380年に修道院の羊毛店として建てられた「アーリントン・ロウ」が主要観光スポット。そのはちみつ色のコテージ群が並んだ風景は、イギリスで発行される全てのパスポートに描かれています。
ここはGrade Ⅰ(3段階のうちの最高位)の指定建造物で所有はナショナル・トラストですが、現在も居住者がいます。

なお、バイブリーは、昭和天皇が皇太子時代にここに滞在し村の大ファンだったことから、日本人からの人気が高いそうです。


アーリントン・ロウのコテージ。クリスマスのデコレーションがされたところもありました
観光ガイドブックの写真では車が映らない画角が多いですが、コテージ群の目の前には住民のものと思われる自動車が止まっています。歩ける範囲にスーパーなどはなく、バスも一日数便程度の村なので、生活には自家用車が不可欠なのでしょう


ちなみに、アーリントン・ロウのコテージは1つだけ一般の人も宿泊可能なようです。
出所:National Trust



こちらも観光スポット、Trout Farm(マスの養殖場)兼カフェ・ショップ。現役のマス養殖場としては英国最古のうちの1つ。今回訪問時は年末のため村で唯一のパブも他のカフェ数件も全て休業中。ここが無ければランチ抜きになるところでした
村にある「St Mary's Church」。11世紀に建設されたもので、アーリントン・ロウと同様に、国の指定建造物(Listed Building)の中でも最高位のGradeⅠ指定を受けています
決して大きな教会ではないですが、すぐ近くにあった集会施設「Village Hall」よりも多くの人数が収容できそうなサイズで、村のコミュニティ運営における教会の重要性が感じ取れます
教会内にあった、キリスト生誕場面(Nativity)の飾り。クリスマスを過ぎた時期だったので、ちゃんと中央には赤ん坊のキリストが置かれています
アーリントン・ロウから徒歩1,2分ほどにある、村で唯一のホテル「The Swan Hotel」。20部屋ほどあり、宿泊者は朝食・夕食をこのホテルで取れましたが、逆に宿泊者以外は先ほどのTrout Farm(営業時間9時~16時)以外に村で飲食できない状況でした
クリスマスシーズン中なので、ホテル内はツリーやクリスマスデコレーションで彩られていました


ボートン・オン・ザ・ウォーター(Bourton-on-the-water)

ボートン・オン・ザ・ウォーター

・「コッツウォルズのヴェニス」とも称され、川沿いに伸びる遊歩道と、そこに立ち並ぶはちみつ色の外観の商業施設が印象的な村。人口は約4,000人。
・モデル・ヴィレッジ(1/9サイズで再現されたボートン・オン・ザ・ウォーターのミニチュアモデル)、自動車ミュージアム、バードランドなど観光施設が充実しています。
・コッツウォルズの中では飲食店や宿泊施設などが比較的多い観光の拠点で、年末の旅行シーズンということもあり、非常に賑わっていました。


石橋が架かるウィンドラッシュ川に沿って商業施設が並びます
川の上にクリスマスツリー
犬を連れた旅行客も大勢いました
川沿いを中心としながらも、商業施設は面的に広がっていて街散策が楽しいです【本物のまち】
こちらは9分の1スケールの「モデル・ビレッジ」のまちかど。1歳児も巨人に。先ほどの本物と比較してもその再現度の高さが分かります【模型のまち】



夕方にはクリスマスツリーなどのライトアップが見られました
年末の夕暮れ時のパブ。暖色系の照明がはちみつ色の建物とマッチしています
カフェの窓際席から


バース(Bath)

Roman Baths

・ロンドンから西へ電車で1.5時間ほど、イングランド西部に位置。イギリスで唯一の天然温泉が湧く地。
・紀元前に温泉が発見され、1世紀にはローマ帝国支配下で温泉、サウナ、マッサージ室などからなる複合温泉施設(ローマン・バス、The Roman Baths)や神殿が建設され、温泉リゾートとして繁栄する。
・その後、5世紀にローマ軍が撤退し一時は廃れるもの、18世紀、国王ジョージ1~4世時代に再び注目され、貴族の温泉保養地として栄えた。
・ローマン・バスを含め保存状態の良いローマ時代の遺構と、それと調和するジョージアン様式で統一された街並みから、「バース市街」として世界文化遺産に登録された。
・バースのクリスマスマーケットはイギリス国内でも人気が高いですが、今年はコロナの影響でリアルマーケットは開催中止(バーチャル開催)。

ジョージアン様式で統一されたバースの街並み
住宅やミュージアムが入るロイヤル・クレッセント


クリスマスマーケットは中止でしたが、デコレーション、イルミネーションはありました
1世紀に作られた複合温泉施設「The Roman Baths」
後ろに見えるのが「Bath Abbey」


ローマン・バスはミュージアムとして国際的な賞を獲得しており、ローマ時代の人(?)がいたり、遺構に映像を投影して当時の利用シーンを紹介したり、面白い展示をしていました
ローマン・バスのすぐ横のバース・アビー
おそらく教会には珍しく内部にインスタレーション展示として、月がつられていました。
月とクリスマスツリー
バース駅前にもクリスマスツリー


駅前から市中心部へ続く商業施設のイルミネーション
商業施設の中庭部分には人工芝の広場が。コーヒースタンドも出ており、居心地が良さそうでした
ローマン・バスのすぐ横にはメリーゴーランド。この時期、イギリスのどこに行っても見かけます。夏もニーズがありそうですが、それ以外の春秋はどこに行ってるのでしょう


最後に、バース・アビーのライティング。ちょっとテーマパーク感が出ています




以上で、今回の③コッツウォルズ・バース編は終わりです。
次回は④オクスフォード編の予定です。



References

Cotswolds.Info
Areas of outstanding natural beauty (AONBs): The ・Government of UK, designation and management
・Loving THE COTSWOLDS, 101 reasons to love 
cotswolds

William Morrisの世界
・ユネスコ, City of Bath
Bath Christmas Market


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