友人がアニメ『フランダースの犬』の最後について語っていたことが最近頭から離れない。 ネロが念願の絵を大好きなパトラッシュと一緒に見ながら天国へ旅立つ、あの涙を誘うシーン、友人は『死に間際に大好きなパートナーと一緒に夢を叶えられるって最高のことなのでは?』という見方を話してくれた。何も悲しいシーンではないと。 ネロはルーベンスの絵をいつか見たいとずっと思っていた。しかし、金銭的な理由で見ることが出来ず、その絵を想像することしか出来なかった。ルーベンスの絵を観るということを生
村上RADIOを聞きながら日課の『風の歌を聴け』の書き写しをする。 わたしは昨年からA4ノートに一日1ページ、風の歌を聴けの物語を書き写すという作業を自分に課している。 文章を写し取りながら『風の歌を聴け』を書き上げた当時の村上さんを想い、ラジオからは今の村上さんの声を聴いている。 私を通して村上さんの過去と現在を繋げてしまったような、なんだかひどく、時空がねじれてしまったような不思議な気持ちになる。 風の歌を聴けを書き上げた頃の村上さんに『未来はラジオでおしゃべりし
『ノルウェイの森』を初めて手に取ったのは十代の頃。当時は冒頭からあっさりと挫折した。 理由は、恋愛から派生していく様々な感情がまだ理解できず、随分複雑な物語だなと感じてしまったからだ、と記憶している。 あれから長い歳月を経て、今日、下巻の最終ページを読み終えた。 主人公の『僕はどこにいるのだ』という混乱した状態での唐突な終わり。 読み終えても尚、簡単に切り替えの出来ない世界がそこにはあった。 はっきりとした終わりが描かれていないからこそ、私のなかでこの物語は未だに
白い写真だけを撮りに、たっぷり片道二時間半、くるりを聴きながら電車にゆられる午後。 『ばらの花』が、この旅を盛り上げてくれる。 『安心な僕らは旅に出ようぜ』 最近雪が降った。 初めて降り立った、この遠く離れた場所にも白く積もっている。 錆びて朽ちていく白いフェンス 名前のよくわからない白い花 真っ二つにひび割れた白い壁 連続していく白いボルト さまようように凍えていく足指 ふと、コーヒーの香り。 暖を取りに喫茶
村上春樹の『眠り』のような状態になったことがある。 この主人公は17日間、一睡も眠れていない。 その変化に夫と子供も気づいておらず、主人公も何事も起こっていないかのように過ごしている。しだいに彼女は自分を見つめ直していく時間が与えられたように感じ、むしろ若返ったようにも感じていく。眠れないことで忘れていた感覚が覚醒していくお話。 私の場合はそんなに長い不眠ではないけれど、ある時から眠れず、微睡んでいると朝が来るというサイクルを3日ほど繰り返した。 『眠り』の主人公のト
この映画は一度観たことがあり、cinecaのアートブックを読んでまた観たくなったため鑑賞。 再び観るまでは、『主人公が走りまくる映画』そんな記憶しかなかった。 久々に鑑賞してみると、主人公が走っているのは前半だけだし、モノクロ映画だったということもすっかり忘れていて、自分の記憶力の無さに絶望した。 『フランシス・ハ』は27歳の老け顔だけれども内面は子供っぽい主人公フランシスの転機が描かれている。内面と外面のちぐはぐさにうんざりしているところが面白い。 ダンサーになる夢
参加中の読書会のため、再読。このお話やっぱり好きだな。 終始、すんとした漂白剤のにおいが漂うように感じる。それはプールのにおいであり、性液のにおいでもある。 それは灯油の匂いが癖になってついかんでしまう感覚と似ていて、このお話もそのようにわたしの嗅覚に訴える。繰り返し読んでしまうのは軽く中毒になっているからだろうか。 内容が気に入っているかというとそうではなく、文章のリズムが好きだから読んでいる。 詩的な表現も良い。 『後退していく赤色を背景に描く鋭く尖ったラインは
『大好きも執着じゃない?』って言うセリフから、後に執着と大好きはイコールではないと繋がっていく場面が良かった。 執着も大好きもあふれすぎてしまうと傍からみたらかなり痛い。エゴがむき出しになっていることに、本人は渦中にいるのでそれに気付けない。紙一重ってやつなんだろうな。 『執着』も最初は純粋に『大好き』から始まったはずなのに、こじらせるとこんなにもキツくて、抜け出しづらい。 映画の登場人物もそうだったけど、ちゃんと立ち止まって考えないと、それがどっちなのか、すごく分かり
また、『この物語を読みたい』と思う、そんなときがやって来てしまったので、ここにこの感想というか、想いを残しておこうと思う。 私にとってこの作品は、恋愛で苦しい、恋が終わった、など絶望を更に濃くしたい時に、自分にオススメしてしまう定番物と化している感がある。 このお話は 『悲しい』 『苦しい』 『辛い』 『なんで私じゃ駄目なの』 『私は友達以上にはなれないんか』 『可愛くないからか』 と絶叫する自分を更にえぐりたい、というドMの私が、ついつい読んでしまう失恋の