ジェットコースター情緒に乗って、今日も逞しく生きる。孤独と戦っている。

自分は宇宙人なんだ、と思うようにしている。そうでないことはわかっているけど、そう思わないとこの星ではやっていけない。ここにいるのが辛い理由が必要なのだ。

毎日誰かに聞いてほしいと思うような、どこかにぶちまけたいような暗くて重たい気持ちを心の中で波打たせながら、大しけの海を体中に感じながら、いざ人に会うと話せない。テトラポッドが出現。せき止めろ!と言わんばかりの頑丈さ。
こんなに頑張ってる、こんなに辛い、ねえ私頑張ってるよね、どうして誰も気づいてくれないの、まだまだ頑張りが足りない?どうしてかまってくれないの、どうしてそんな風に。どうして私が。どうして私は。
「そんなこと」なんていう風に本当は片づけられたくないけど、やっぱり「そんなこと」で毎日頭がいっぱいだけど、人には言えない。
楽しく過ごせるなら、楽しく過ごしたい。こんな暗闇を差し出して、困った顔をされたら終わりだ。あーあやめとけば良かった、ってなるのが落ち。
私のは愚痴なんてかわいいもんじゃないから、笑い話にする才能もないし、笑い話にしたくないという怒りがずっと消えないから、どうしたって、自分の中にしまっておくしかない。

今でこそやっと日々なんでもないような顔で過ごせるようになった。電車や道端、所かまわず涙と怒りと絶望が止まらなくなるような毎日は息をひそめた。時々こうやって、今みたいにたまらなくなることはあるけど、ずいぶんマシになったなあと思えるだけ、回復した証だろう。
あれは鬱だったと思っていいだろうか。病院行かなかったし、診断はないけど、毎日、明日なんて来るなと、今までも全部消えろと呪って涙と怒りに支配されながら眠った夜が、脳が夜明けに気づいた瞬間に絶望と恐怖が押し寄せてきては目を開きたくなかった朝が、少しでも思考に空白ができれば憎しみと後悔と孤独が全身を駆け巡った毎秒毎分が、フラッシュバックと反芻が止まずに頭がおかしくなりそうだったあの毎日が、鬱ではないとしても、異常だったと、とてもとても辛かったと言うことが許されないなら、長い人生、誰しもそんな時があるよなんていう風に「人生あるある」にされてしまうなら、あまりに世界は厳しすぎる。
こうしてはいられないと、なんとか勇気を出せば声をかけられる友だちに連絡をして、会ってみていた時期があった。人に会えば、気が晴れるかもしれない。楽しいことを増やそう。意気込んで。結局気遣いやどこか上滑りするような会話が辛くて、楽しくしようとしても、慢性化したイライラと空虚感が消えないし、相手の充実した日々の話を聞いて情けなくなって凹んで。お世辞の「今日はありがとう楽しかったよ」のメッセージを最後に、みんな連絡は途絶えた。
孤独を振り払いたかったのに、余計に孤独が深まった。

鬱のきっかけに遡る。

自分で言うのもなんだかという気持ちだけど、私は素直すぎるし、純粋、いや、潔癖というべきか。なぜ不倫やら浮気とかそんな話のドラマが流行るのか理解できなかったし、そんなものに興味はなかった。興味も関心もないから、嫌悪もなかった。自分には関係ない、別世界のこと「だった」。
知ってしまったから、もう無関係で平和でいられた時には戻れないのが、非常に苦しい。私をそうやって傷つける人間がいたという事実が生まれてしまってからというもの、当てつけかのように、世の中にはそういうことをする人が思っている以上にいるという現実を知ってしまうような話をたくさん見聞きして、ああだからああいう作品がみんな好きなのねと思った。みんなっていうのは、語弊があるかもしれないけど。現実にあるから、作品になってしまうのねと。最悪な気分だった。
行きたいとこ聞いたら「ない」とか言って、友だちとはあっちこっち遊びに行って、私との時は平気で遅刻するくせに友だちとの約束には絶対に時間通りに行って、つまんない映画付き合わせるくせに私が見たかった映画は他の人と見に行って、私が行きたいって言ったとこは「いつでも行けるじゃん」とか言って、いざ行けるかもって思ったら「忙しい」とか言って、結局行けなかったし、忙しいとか言いながら、他の人のためには有給とって、旅行行って、私のためには1日すら、数時間すらくれなかったくせに

自分の荷物は自分で持てる人でいたい。
嫌な現実を知ってしまうより、ずっと前から、なぜかそう思っていた。男性に荷物を持ってもらっている女性を見ては、あれくらい自分で持てばいいのに、と思っていた。あの気持ちはなんだったんだろう。あの頃は羨ましいという気持ちはなかったけど、とにかく「人と居る」ことが自分はどうも、できないらしいということを感づいていたのか、一人で生きていける強さを鍛えなければという気持ちだったのかもしれない。あれっぽっちの荷物を持ってもらうなんて、か弱くて嫌。そんな気持ちもあった。
でも今は、違う。あんな風に甘えられるのも、甘えさせてくれる相手がいるのも、甘えていいよと思える相手がいるのも、心底羨ましい。そして心底、自分にはそんな相手は現れない、なんなら、傷つけてもどうでもいいやと思われてしまうような存在でしかないんだ、と、真っ暗な絶望が地面から立ち上ってくる。

大丈夫、自分の足で歩ける。自分で持てる。できてる、できてる。大丈夫。やっていける。そう、私って結局やっていけちゃう。だから大丈夫。

なのに、重たい荷物が腕や肩に食い込んで真っ赤になっているのを見て、内出血を起こしているのを見て、ホッとするのはなんで?

傷ついた記憶と、きっと私も上手に愛してあげられなかったって後悔と、許せないっていう怒りと。それでも好きだったのは嘘じゃないことと、愛しいってこういう気持ちなんだなあと知ることができたのはあの人と出会ったからで、憎めば憎むほど、私そんなにあの人のこと大好きだったんだなあと気づかざるを得ないのだ。あの人の中では、もう二度と会いたくないうんざりなメンヘラ女でしかないとしても、なんならそんなことすら思わず、今頃誰かに運命感じて私のことなんてこれっぽっちも思い出すことなく薄っぺらく「愛」をわかった気になってるとしても。

リア充憎しと言い合っては笑っていた友だちたちはいつの間にか彼氏ができて、結婚なんていう未来すら臨んで、そうでなくても、着々と彼女たちの人生を歩んでいる。みんなの幸せを素直に喜べなくて、ごめんなさい。
薄れてゆくつながりに、必死に縋りつくのをやめてしまったら、なんともあっけなく消えていく。わかるよ。私は楽しい人間では決してない。あなたたちが困ったときに、頼りになるような頼もしさもない。いつも自分のことで頭がいっぱいで、私だってみんなのこと、きっとちっとも見てなかったんだよね。

助けて、という思いとは逆行して、病んでるときほど人が離れていく。
暗い話をしないように本心をひた隠しにしていたら、いつの間にか、明るい話もできなくなった。あるはずなのに。最近あった楽しかったこと、嬉しかったこと。話は元々得意じゃなかったけど、自分のことを話すのが、なんだかめっきりできなくなったように感じる。
友だちの話、家族の話、恋人の話、そういうのを当たり前の日常として「雑談」してくれる子たちの手前、私の日常といえば、画面の向こうのアイドルやら俳優やら、熱中するほどには好きにならずになんとなく消費して、休日は家にこもってるだけ。情けなくて、気の置けない友だちも、仲のいい家族も恋人もいない、そんな自分を知られるのが恥ずかしくて、自分がほとほとつまらない人間だと痛感してしまうから、人と話すのが辛い。

イルカに触ってみたい。釣りをしてみたい。観光地に行きたい。旅行に行ってみたい、ディズニーに行きたい、有名店って言われるようなとこのご飯を食べてみたい、広いお花畑を見てみたい、ドライブに行ってみたい、プールや海ではしゃいでみたい、浴衣を着て花火を見てみたい、クリスマスパーティーをしてみたい、バレンタインにわくわくしてみたい、お花見をしてみたい、誕生日をこれでもかっていうくらい盛大に祝われてみたい、誰かのために人生で最高に幸せって思ってもらえるような誕生日をお祝いしてあげてみたい、笑顔で写真に写れるようになりたい、人目を気にせずはしゃいでみたい、自分なんてって思わないで安心して毎日を過ごしてみたい、なんでもない時間を誰かと過ごしたい、崩壊に怯えることなく疑いのない幸せを全身で感じてみたい、生まれてきてよかったって思ってみたい

なんにもできずに歳だけとっていく

自分の荷物は自分で持つ、なんて言って、本当はずっとずっと寂しかったんだって、気づいてしまってからはどうしようもなく弱くなった。
コップの水は常になみなみ。少し揺れれば、一滴でも降ってくれば、一瞬にしてあふれ出す。
暴走した感情にコントロールはきかない。それでまた家族に八当たって、喧嘩になって、居場所がなくなる。やってしまった、と部屋にこもってメソメソ。

人に弱音を吐いてみようといざすると、後悔する。大丈夫じゃない、とは言えるようになったけど、どう大丈夫じゃないのかは、言えない。めんどくさいと言われたのを思い出して吐きそうになるし、かわいそうな目で見られるのが居たたまれないし。
だから、大丈夫じゃないけど、自分でなんとかします。なんとかなってないけど、とにかく構わないでください。期待して弱さを見せて傷つくのはもう御免なんだから。
毎日死にそうなくらい寂しいけど、寂しいって言ったところで、この寂しさは誰も埋めてくれないんだから。
生半可な気持ちで「大丈夫?」なんて聞かないで。本当のこと言ったって、途中でいなくなるくせに。ていうか大丈夫なわけないでしょ。それでも耐えて、這いつくばって、生きてるんだわ。

誕生日プレゼント?誰もくれませんけど。欲しいものがあったら自分で買う。虚しさは見えないふりして。
デートメイク?モテメイク?彼ウケコーデ?うるさい黙れ!かわいいコスメはかわいいコスメとして楽しみたいのに、かわいい服はかわいい服として楽しみたいのに、デートだ好きぴだモテだなんだって、そういうのを売り文句にされると一気に冷める。
好きだった美容系YouTuberが「デート前のGRWM」とかあげてると、彼氏や友だちとの旅行Vlogとか、質問コーナーで下世話な恋愛系トークしてたりすると、もうこの人の動画見るのやめようとか思っちゃうの、自分が嫌になる。ただの嫉妬じゃん。人の幸せを妬むような人間にはなりたくなかったよ。

こんなこと毎日考えてるのに夜は眠れるし身体は元気だし、私の身体どうなってんの?むしろメンタル鬼強いってこと?いやいや、こちとらしんどいんだわ。空元気だっつーの。

さて、私は宇宙人。ここはあまりに息苦しい。星に帰りたい。
(帰れる場所なんてないけどね)

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