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時の流るるはあなたと共に≪③≫
何か話そうとするが、驚きと嬉しさで口からは言葉が出ずに目から涙が溢れ出ていた。
『泣くなよ。泣いてちゃ答え分かんないだろう?』と顔を覗き込む畝宗の顔を見てさらに涙は止まらなく
『はい。畝宗の奥さんにしてください。』と言おうとするのに上手く話せないでいると
『爾杏?返事はさ、帰ってきてから聞いてもいいかな?俺必ず生きて帰ってくるからそれまで返事は取っておきたい。』
と話し終えると私を力強く抱き寄せ畝宗の心臓の音が私の耳になり響いた。こんなにも緊張していたのかと思うと急に愛おしさが溢れ出したまらなく私も力強く抱きしめた。戦争と言うものさえなければこの幸せを命一杯噛み締める事が出来るのに明日の朝には自分の元からこの愛おしさが離れてしまう現実に胸が苦しくなった。今まで時間を意識する事はなかったのにほんの一瞬畝宗への愛おしさに気付いてしまってからこれ程時間が止まって欲しいと強く願うことはなかった。
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